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信号機の色が見えづらい! 「LED式 = 最新」だったはずなのに、なぜ?

新しいのに見えにくい?

 信号は、言うまでもなく、日本の道路交通網を根幹から支える重要な存在である。しかしあまりにも当たり前にそこにあるので、普段運転している限りでは「進むか止まるか」を判断するために信号を見るのみで、信号機そのものに興味を引かれることはほぼない。

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 そんな中、やけにきれいで見慣れない形の信号機を見かけると、「おっ、最新型かな?」と新鮮な発見をした気分になれる。

 だがその最新型らしき信号機を道路で何度か見るうちに、筆者(武藤弘樹、フリーライター)もそうなのだが、何割かのドライバーはこうも思ったはずである。「あの信号機、新しいくせにやけに見にくくないか」と。

 今回は、信号機に関するトリビアを交えつつ、色が分かりにくい最新型信号機が存在する理由について解説していきたい。

LEDへの更新進む

 信号機の更新(新しい信号機への交換)基準は19年と定められている(※警察庁資料より )。老朽化が進むと転倒や倒壊のリスクが増し、大事故を招く恐れがあるからだ。

 警察庁は2021年5月、「インフラ長寿命化計画(行動計画)」という5年間分の指針を作成して、信号機を含む全国のインフラの整備を漸次進めている最中である。

 電球式の信号機に代わって新しく出てきた発光ダイオード(LED)式が、維持コストや環境などさまざまな面から優れているということで、LED式信号機の設置もかなり進んできているようだ。各都道府県によって進捗(しんちょく)状況に差はあるが、東京都では車両用信号、歩行者用信号ともにLED化率100%が達成されている(全国平均は66.6%)。

 LED式が電球式より優れている点を簡単にまとめてみると、(1)ライト部分の寿命が6~8年と長い(電球式は半年~1年)(2)省エネルギー(消費電力が電球式の6分の1)(3)視認性が良い――となる(※参考:警察庁 LED式信号灯器に関するQ&A)。

 つまり、電球式は電球を半年から1年ごとに交換する必要があり、電球本体のコストと作業に要する人的コストを、LED式なら大幅に削減することができる。

 視認性の点だが、電球式とLED式では、信号灯の光る仕組みが異なっている。電球式は、青、黄色、赤3色のレンズカバーがあって、その中に入っている電球が光る。一方LED式は、LEDライト自体がその色に発光するから、色付きのレンズカバーが不要で、くっきり、はっきりとした色で示される。西日が信号に当たっている時、特に電球式はどの色が光っているのか見分けづらくなるが、LED式にはその心配がない。つまりは「LED式の方が視認性に優れている」のである。

 しかし、より新しいテクノロジーが搭載されているはずのLED式……とおぼしき信号で、冒頭に述べたように、青か赤か分からないような見えにくい光り方をすることがある。それはなぜか。

 いかにメリットだらけのLED式であろうと、例えば「見えにくい角度がある」といった明確な弱点があり、しかし他のメリットのために、その弱点には目をつぶっているのではあるまいか。正直な話、筆者はこう考え、LED式の唯一の弱点をひとり看破した気がして興奮していたのだが、事実はそうではないらしい。結論からいうと、見えにくいLED式信号は、あえて「見えにくくしている」というのである。

「あえて見にくく」している?

「視覚制限灯器」あるいは「視覚制限型信号灯器」と呼ばれる信号がある。なじみのない熟語で、頭に入ってきにくい文字の羅列となっているが、分かりやすくいうと、「ある角度からは見えない信号」のことである。特定の角度からはその信号が何色なのか見えなくなっていて、別の角度・位置に移動することで初めてその信号が何色か分かる……というつくりになっている。

 なぜわざわざ「見えない角度・位置」を設けているのか。これは交通事故防止が主な目的である。

 例えば2つ以上の交差点が近い位置にある場合、Aという交差点の信号に従わなければならない車が、近くにあるBという交差点の信号に従ってしまい事故が起こることが、実は結構あるそうだ。信号の立地や道路のつくりによって、信号の誤認が起こりやすい場所が存在するのである。

 そこで「視覚制限灯器」の出番である。Aの交差点からBの信号を見えないようにすれば、Aの交差点にいるドライバーはAの信号にしか従わず、誤認を起こさない。そのために、このケースだとBの信号に「視覚制限灯器」が用いられる。

 こうした視覚制限は、信号機のライト部分をひさしで覆うことで行われる。このひさしは「フード」や「ルーバー」と呼ばれる(※以降「フード」で統一)。

 フードの大きさや、フードを付ける位置(上下左右のいずれか)を調整することで、見せるべきドライバーに信号を見せ、見せぬべきドライバーには信号を見せない、という芸当が可能となる。

減速促す効果も

信号機の色が見えづらい! 「led式 = 最新」だったはずなのに、なぜ?

フラット型の信号が増えている(画像:写真AC)

 さて、LED式信号の中でも特に新しいものに「フラット型」(正式名称:フラット型車両用交通信号灯器・コイト電工)と呼ばれる、薄いパネルのような形状のものがある。従来の信号機とはだいぶ印象が違い、スッキリとした見た目がその特徴だが、「グレアレスレンズ」というもの採用によって、従来型の信号に比べてさらに視認性に優れているらしい。

 このフラット型が「視覚制限灯器」として運用される時、「信号のライト周りにフードをかぶせる」という従来の視覚制限方法は用いられない。どうするかというと、「狭角レンズ」なるものをはめ込むのである。狭角レンズはフードと同様の効果があって、特定の角度からは信号の色が分からないようにすることができる。こうして、外見はフードも何もついていない普通の「フラット型」信号機に見えつつ、実は狭角レンズを搭載した「視覚制限灯器」が完成する。

 そして視覚制限灯器の中には「近づかないと信号の色が分からない」といった視覚制限を施されたものがあり、遠くから見ると「電源が入っていないのかな」と思われるほど真っ暗なのだが、近づくと正常に動作しているのが分かる仕組みとなっている(この視覚制限は、ドライバーに減速を促す効果もある)。

 おそらく、筆者を含む多くのドライバーに「やけに見えにくい」と訝(いぶか)しまれているのは、この「フラット型」の視覚制限灯器である。さらに「近づかないと分からない」タイプのものであった可能性が高い。ドライバーたちは「新しいわりに見えにくいなあ」と、不満まじりに首をかしげていたが、実は見えにくくすることで事故を未然に防ぐのが、その信号機の本来の狙い……というわけである。

 次にフラット型信号機を見かけたら、「信号機の最先端」を堪能するつもりで眺めてみると楽しいかもしれない。さらにその信号機の色が分かりにくかったら、「見えにくいな…」という不満ではなく、「これが狭角レンズか!」と得心するはずである。

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