地方ナンバーの車に乗った若者たちが渋谷を目指す理由は?
若者の流行発信地として知られる東京・渋谷。スクランブル交差点、センター街といった定番スポットだけでなく、ここ数年の再開発で渋谷ストリームや渋谷スクランブルスクエアなどの新名所が生まれ、注目されている。そんな先端を行く街には多くの若者が集まるが、特に最近、目立っているのは地方ナンバーの車で集まる若者たち。遠方にもかかわらず、なぜ渋谷にこだわるのか。若者たちが渋谷を目指す理由を探った。
普通の週末にも地方ナンバーの車が目立つように
今年、ハロウィンやサッカー・ワールドカップの時は、渋谷に集まる若者たちの姿が各メディアで多数報じられた。
「昔に比べて、何かといえば渋谷に集まる人は確実に増えている」と印象を語るのは、渋谷在住の会社員・Mさん(40代女性)だ。しかも、「地方ナンバーの車が目立つようになった」という。
Mさんによれば、テレビでハロウィン時に「渋谷が大賑わい」ということが報じられるようになってから、「関東近郊から来るナンバーは明らかに増えた」。例えば春日部、八王子、川崎、相模、柏、松戸など、都心以外のナンバーで、袖ヶ浦やとちぎといったものも目立ったという。
青森で生まれ育ち、現在渋谷のカフェで働くAさん(20代男性)は、「東京の人に言ってもなかなか信じてもらえないのですが、僕の地元では、本当に『東京リベンジャーズ』に出てくるようなバイクや車に乗っている人がまだまだいました」と話す。
「僕は、成人式に短ランボンタンで出ましたよ。なんか、そういう昔(?)のものがカッコいいみたいな風潮があって……。車も結構ヤンキーめにするのがいい、という文化でした。それで東京にまで来るかっていうと、なかなか根性がいるとは思いますが、コロナでどこにも行けないし、時間はあるし、ということで、東京までの遠出を計画する地元の友人はいましたね」(Aさん)
車を見てもらうなら「手っ取り早い」
実際、ある週末、栃木から渋谷に車でやってきたBさん(20代男性)に話を聞くことができた。
Bさんに、なぜお台場や銀座、浅草といった東京の“名所”ではなく、渋谷なのか聞いてみた。
「渋谷は駅を中心にしてスクランブル交差点があり、人が集まっている場所がわかりやすいんです。スクランブル交差点は信号なので、絶対に人が“たまる”じゃないですか。だから、そこらへんを走っていれば、一度で多くの人に注目してもらえる。他の場所だと、見てもらうために結構ウロウロしなくちゃいけない。注目してもらうためには、手っ取り早いんです。あと、渋谷には、自分と似たような人たちがたくさん集まってくるので、その仲間意識のようなものもあるかもしれません」(Bさん)
そんなBさんは、自身もキャラクターのフード付きパーカーをかぶったり、リアガラスにデコレーションをするなど、通行人たちに“見てもらう”意識も高い。
渋谷に買い物に来ているわけではない
「渋谷には、集まりに行ってるようなもの」というのは、静岡出身で、昨年から都内在住のフリーター・Cさん(20代)だ。静岡にいたころ、渋谷に車で走りに来たことがあったという。
「渋谷に何しに行くかと言われたら、“走りに行く目的地”というだけですね。別に車を停めて何か買い物をするわけでもありませんし、風景を楽しむわけでもない。ただ、今思えば、人がたくさんいて、夜中でも明かりがついている街を実感することで、孤独感が少し払拭されていた気はします。田舎にいたら、息が詰まる感じがするけど……。だからハロウィンみたいなイベントのときに、若者が渋谷に集まるのは、わかる気はします。田舎には、あり余るエネルギーをぶつける場所がないというか……」(Cさん)
地方からやってくる若者にとって、渋谷にしかない、そして渋谷でなければならない事情があるのかもしれない。(了)