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東武100系スペーシア、「超豪華特急」の意外な一面 「ソフトで優雅」な印象のボンネットの裏側は?

東武100系スペーシア、「超豪華特急」の意外な一面 「ソフトで優雅」な印象のボンネットの裏側は?

東武100系「スペーシア」。外観はスピード感だけでなく「ソフトで優雅」なイメージを表現したという(記者撮影)

東武鉄道の100系「スペーシア」は1990年の登場以来、同社の顔である浅草と日光・鬼怒川方面を結ぶ特急列車「けごん」「きぬ」として走り続けてきた。2023年7月には後継車両がデビュー、フラッグシップ車両の30年以上にわたる活躍が1つの区切りを迎える。

【写真】100系スペーシアの丸みを帯びたボンネットの内側には何がある?機器がびっしり並ぶ“秘密の部屋”を独占取材。後半は直通運転10周年や、JR線だけを運行した「スペーシア那須野号」の様子。東武とJRの駅長ががっちり握手!

「ソフトで優雅」をイメージ

100系スペーシアは1990年6月1日に営業運転を開始した。前面は流線形で運転席の前に丸く突き出た大きなボンネットが特徴。登場時のデザインは、高級感ある白色の「ジャスミンホワイト」を基調に「サニーコーラルオレンジ」「パープルルビーレッド」と呼ぶカラーのラインを入れ、窓部分をブラックで統一した。

デビュー年に同社が作成した車両カタログの冒頭で、根津嘉一郎社長(2代目、当時)は「未来派指向の流線形とし、単にスピード感を強調したものでなくソフトで優雅なイメージを合わせ持たせ、『スペーシア』という名称にふさわしい居住空間の『ゆとり、快適さ』さらには、21世紀へ向けて走る流麗な印象を表現した」と明かしている。併せて「乗り心地はもちろん、内装を重視して、ホテルの心地良い雰囲気を、そのまま車内に実現し、格調高き最高級の車両であるものと確信しております」と強調した。

東武100系スペーシア、「超豪華特急」の意外な一面 「ソフトで優雅」な印象のボンネットの裏側は?

6号車に6つある個室の「コンパートメント」(記者撮影)

6両編成で、浅草方の先頭6号車は「コンパートメント」の専用車両。4人用個室が6部屋並ぶ。カーペットが敷かれ、対面になったソファの中央に大理石製の大型テーブルがある。のちに撤去されることになったが、登場当初にはビュッフェに注文ができるインターフォンやオーディオサービス、電動ブラインドまで備える豪華なしつらえだった。個室料金を追加するだけで1人からでも利用できる。

普通席はシートピッチ1100mmの回転式リクライニングシートで、当時のJRグリーン車並みのスペースを確保した。足元には靴を脱いでリラックスしてもらうためのフットレストを取り付けた。登場当初はスピーカーを内蔵したヘッドレストで音楽を聴くことができるパーソナルオーディオシステムが付いていた。

1991年には鉄道友の会が前年に営業運転を開始した車両から最優秀を選ぶ「ブルーリボン賞」を獲得した。同社の車両が受賞するのは初めて。受賞理由について同会は「“流麗さ”と“華麗さ”を備えた近代的なデザインと塗装で、従来の東武鉄道カラーを打ち破った」と指摘した。

豪華なのは客室の設備ばかりでない。車体は東武初のアルミニウム合金製。床部分の厚さを130mmにして客室の静粛性向上を図った。有料座席特急の営業列車で初というVVVFインバータ制御を採用。交流モーターを編成の6両すべてに搭載した全電動車で、編成出力3600kWのハイパワーを誇る。

東武日光線の新鹿沼駅以北には急勾配が連続する区間がある。デビュー当時を知る車両管理所主任の泉川友彦さんは「明らかに急勾配の区間に入っていても、ラクラクと加速をするのは、いまでもすごいと感じます」と話す。

外開き式のプラグドアは、開くときは45度の角度で外側にせり出し、スライドする仕組み。車両カタログによると「戸袋部を無くすことによる気密性向上および車体外面と扉と平滑化する」目的で採用した。が、特殊な構造だけにメンテナンスの苦労も多かったようだ。

東武100系スペーシア、「超豪華特急」の意外な一面 「ソフトで優雅」な印象のボンネットの裏側は?

ボンネットの裏側には制御機器などがびっしりと並ぶ(記者撮影)

関係者以外はまず見ることができない車両の一面も。「ソフトで優雅」な印象のボンネットの内側には、制御機器のほか、運転室の空調や列車無線に関係する機械がびっしり取り付けられている。前照灯・尾灯の裏側も見える。メンテナンスのためになんとか大人1人が入れるスペースではあるが、ここでの作業はとくに夏場は大変そうだ。

JR線にも活躍の場を広げる

デビューから30年以上にわたる活躍の間、100系スペーシアはその姿と役割を変えてきた。

2006年には、かつて日光への旅客争奪戦を繰り広げたJR東日本と新宿―東武日光・鬼怒川温泉間で特急列車の相互直通運転を開始した。スペーシアの3本の編成にJR乗り入れ対応機器を搭載、JR式の座席番号表示やグリーン車マークを取り付けた。JR宇都宮線と東武日光線が立体交差する栗橋駅の連絡線を介して両社線を行き来する。

臨時列車としては、JR中央本線の八王子発着で武蔵野線を経由する特急「スペーシア八王子きぬ」「スペーシア八王子日光」を運行することがある。JR線内の途中停車駅は立川、新秋津、北朝霞。各駅でJR南武線、西武池袋線、東武東上線などと乗り換えができる。

また、東武沿線以外の盛り上げにも一役買ったことがある。2017年6月24日、JRグループのデスティネーションキャンペーンに関連し、JR東日本が特急「スペーシア那須野号」を大宮―那須塩原間で1往復運行した。こちらの途中停車駅は久喜、小山、宇都宮、宝積寺で、栗橋―那須塩原間への乗り入れは初めて。東武の車両がJR線だけを走行するめずらしい場面がみられた一日だった。

2011年には同年開業した東京スカイツリーのライティングデザインに合わせて水色、紫色、サニーコーラルオレンジの3種類にデザインをリニューアルした。2015年には「日光東照宮四百年式年大祭記念」として金色に輝く「日光詣」のカラーを追加した。2021年以降は日光詣、オリジナルの「デビューカラーリング」「デラックスロマンスカーカラー」のラインナップとなっている。

東武100系スペーシア、「超豪華特急」の意外な一面 「ソフトで優雅」な印象のボンネットの裏側は?

日光詣カラーでJR線を特別運行した「スペーシア那須野号」=2017年6月24日(記者撮影)

デラックスロマンスカーカラーは100系スペーシアの先代、1960年に登場した1720系をイメージした。デラックスロマンスカーは、その呼び名の通り、シートピッチは1100mmあり、自動で開閉する貫通扉の“マジックドア“や、サロンルームにジュークボックスを備えるといった豪華な仕様だった。1991年8月に100系スペーシアに置き換えられたが、1720系のデラックスな足回りは伊勢崎線の特急「りょうもう」に使用される200系に転用されている。

次世代に引き継ぐ「伝統」

そして2023年、日光・鬼怒川エリア方面に次世代のフラッグシップ特急が登場する。デビュー日は7月15日。車両の形式名は「N100系」、愛称は「SPACIA X(スペーシア エックス)」といずれも100系スペーシアの伝統やイメージを引き継ぐ。

N100系は6両固定編成(212席)が4本。車体色は日光東照宮に由来する「胡粉(ごふん)」の白をイメージし、窓枠や愛称のロゴは鹿沼組子をモチーフにした。「スタンダードシート」から、7人が定員の最高級「コックピットスイート」まで6種類の座席を用意。スペーシア伝統のコンパートメントはコの字型にソファを配置して居住性を高める。

車両管理所の泉川さんは100系スペーシアのデビュー当時を「1720系デラックスロマンスカーも豪華な車両だったが、それに負けないようにと開発された。登場して数年は“スペーシア効果”でものすごい盛り上がりだった」と振り返る。

同社は、100系スペーシアの今後について「7月にN100系スペーシアXが新たなフラッグシップ車両として登場したあとも当面の間は一緒に運用する」(広報部)方針だ。大型新人による「スペーシア効果」の再来に期待しつつ、30年前のバブル経済の余韻の中で登場した超豪華特急に改めて注目してみるのもよさそうだ。

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