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鉄道博物館で展示、お召機関車EF58形61号機とは? ここは押さえたい、希少車両の見どころを解説

鉄道博物館で展示、お召機関車ef58形61号機とは? ここは押さえたい、希少車両の見どころを解説

鉄道博物館で展示がはじまったEF58形61号機(筆者撮影)

鉄道博物館では、2022年10月末からEF58形61号機の常設展示を開始した。EF58形61号機は1953年にお召列車用の電気機関車として製造され、行幸・行幸啓など、皇族の移動の際に運転されたお召列車の先頭に立っていたものだ。

【写真】お召列車を牽引した電気機関車「EF58形61号機」とは?傷を発見しやすいように足回りには磨きだしが施され金属の地色が見える。運転席の側面に挿した「御召」の札 ・・・など。

2008年以降は本線走行がなくなり、長らく東京総合車両センターで保管されていたが、このほど鉄道博物館に展示されたことで、希少な車両を気軽に見ることができるようになった。

お召列車用の電気機関車

もともと、EF58は旅客列車用の電気機関車として造られたものだ。終戦後の1947年から製造がはじまり、1958年までに172両が造られたが、このうちの61号機を「お召機」と呼ばれるお召列車の電気機関車とし、お召列車を牽引するために特別な装備が施されている。

61号機でもっとも特徴的なのは足回りで、台車に付く連結器・車輪の側面・ブレーキ引き棒などの部品は磨きだしを行い、金属の地色を出すことで傷が容易に発見できるように配慮された。また、お召列車として走行する際は前面に国旗を掲揚しているが、これに必要な台座などを備えている。このほか、EF58の特色として運転台部分から先頭部にかけて銀色の飾り帯を施しているが、61号機では飾り帯を側面にも引き回し、見た目も特別なものとしている。

運転台側の側面には、区名札と呼ばれる機関車の所属を示す札を挿しているが、登場当時は東京機関区に配置されていたので「東」と書かれた札を挿していた。展示されている状態では、最後に配置されていた田端車両センター(当時)を示す「田」の札を挿している。

その隣には「御召」の札を挿しているが、これはお召列車を運転するときだけに挿すものだ。その右脇にも札差を備えているが、これはお召列車を運転する際、担当する運転士(機関士)など、運転業務を担当する職員名前と職名(「機関士」など)を記した名札を挿すもので、3人の名札を挿すようになっている。

このほかの機器関連では、皇族が乗車する御料車と連絡を取るための電話装置(インターホン)を備えたほか、故障を極力回避するような設計や予備品の搭載なども行っている。

61号機を含め、EF58は流線形のスタイルに人気がある電気機関車だった。61号機は、お召列車の「仕事」のない時期は一般の列車で使用され、過去には寝台特急「はくつる」(上野―青森間)を牽引した実績もある。

1980年代に多くのEF58が引退するなか、61号機は引き続き使用され、特急「踊り子」の臨時列車を牽引するなど、一般の列車の牽引で活躍したこともファンとしては懐かしい。国鉄末期に登場した「サロンエクスプレス東京」という団体臨時列車向けの欧風客車が登場したが、この客車も茶色の車体色で、61号機との組み合わせがよく似合っていた。

なぜ流線形の車体なのか

さて、お召機の61号機も当初から流線形の車体で造られたが、EF58自体は当初から流線形の車体だったわけではない。1947年に登場したEF58形の1号機が箱形の車体で、先頭部にはデッキを備えていた。1952年に登場した27号機からデッキのない流線形の車体となり、デッキを備えたEF58も流線形の車体に載せ換えを行っている。

流線形としたのは、設計変更によって車体が大きくなり、デッキだった部分まで車体を延ばしたためだ。この設計変更の契機となったのは高崎線の電化で、この際にEF58の追加製造が行われたのだが、ここで問題となったのは列車の暖房だった。当時の旅客列車は、おもに蒸気機関車によって運転されていたが、列車の暖房は蒸気機関車から供給される蒸気によって成り立っていた。これを単純に電気機関車へ置き換えてしまうと、列車の暖房で使用する蒸気がなくなってしまう。

この問題を解決するには、暖房用の蒸気を供給する暖房車を連結するか、電気機関車に暖房用の蒸気発生装置を搭載すればいい。EF58では後者の方法を採った。EF58に蒸気発生装置を搭載した分、車体が大きくなってしまったわけだが、大きくなってしまった車体に合わせて足回りの設計変更を行う時間的余裕はなく、足回りはそのままとしている。

車体を大きくすると、今度はカーブで車体がはみ出すことになり、その分だけ先頭部を削ったことで流線形のEF58のデザインが出来上がった。EF58の流線形デザインは、機能の制約から生まれたのだが、大きな窓が2つ並ぶデザインは当時の流行も取り入れている。

EF58では、製造の過程や製造後の細かな改造により、同じEF58なのに車両によって個性があった。お召機の61号機も製造後の変化があり、前面の窓の上に水切りが取り付けられた点が目立つところだ。これは、雨水が前面の窓に流れ込まないように配慮されたものだが、この水切りも時代によって違いがある。

かつては、水切りとワイパーが干渉するため、ワイパーと干渉する部分の水切りを円形としていた。のちにワイパーを交換して水切りを直線状に直しているのだが、鉄道博物館で解説のために使用されている写真では、ワイパーの周りの水切りが円形だった頃の姿になっている。

鉄道博物館では、EF58形89号機も保存・展示されているが、車体色や装備などが異なり、EF58の違いを比べることができる。61号機では「ため色」という特別な車体色に塗られているが、これは御料車に合わせて塗り替えたもので、登場当時は茶色の色合いが異なっていた。現在の「ため色」も厳密には違う色とされ、過去の「ため色」よりも赤みが強いと言われている。鉄道博物館には過去の御料車も保管・展示されているが、木製の御料車は漆色に近い色合いで、多少の変化があるものの、車体が金属製となった現在も同等の色彩が引き継がれている。

希少となる「お召列車」

EF58形61号機がお召列車用の電気機関車として造られたのは、行幸等で鉄道の長距離移動があったからだ。現在では長距離の移動は新幹線や飛行機が主体となっているが、御料車にはトイレがあり、これが鉄道利用の有利な点でもあった。

だが、今上天皇の時代では近距離の移動で鉄道を利用する機会がなくなっている。2022年10月にはとちぎ国体の開会式の出席などに関連した行幸啓があったが、この際は100km程の距離を自動車で移動している。

今上天皇がかつての皇太子だった時代、天皇の職務を代行した時期があった。この際に運転が予定されていたお召列車の運転が中止された事例もあり、今後は新幹線利用や伊勢神宮での移動でお召列車の運行が期待される以外、お召列車が見られる機会はなくなりそうだ。そういった意味でも、今回EF58形61号機が収蔵され、展示されたことは意義のあることなのかもしれない。

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