SUVの性能を過信しすぎてトラブル発生
近年人気のボディタイプとなっているSUVは、高い最低地上高に加えて4WDシステムが設定されていることが多く、そのおかげで悪路も走れるのが特徴のひとつです。
しかしSUVの走行性能を過信するあまりに、どんな道でも走れると勘違いしてトラブルに陥ってしまうことがあるのです。
SUVはどこでも走れるわけじゃない!?
SUVはどこでも走れるわけじゃない!?
たとえば、オフロードや砂浜など、泥や砂により摩擦力が発生しにくい路面にもかかわらず、SUVの悪路走破性を過信し、舗装路と同じような感覚で乗り入れるとタイヤが空転して前進も後進もできなくなる状態、いわゆる「スタック」が発生してしまいます。
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クルマは車軸に伝わった駆動力をホイールとタイヤに繋ぎ、路面とのグリップ力(摩擦力)を推進力として進みます。そして4WDは駆動力を4つのタイヤに配分することでさらに駆動力を発揮するシステムで、2WDより悪路に強いのは事実なのですが、タイヤのグリップ能力を超える状況になると走行不能になってしまうのです。
悪路走破性を高めるために開発された4WDですから、ダートを駆け抜け、河原や林道でSUVの高い走破能力を試してみたくなるのも分かります。しかし、4WDだから安全ではなく、4WDでも危険な場合は多いと考えて運転する必要がありそうです。
実際、デコボコ道の林道のほか、オートキャンプ場の河原に乗り入れたSUVがスタックしてしまうケースが多発しているといいます。
このオフロードを走るポイントはあるのでしょうか。4WDに詳しい業界関係者のKさんに聞いてみました。
「林道と聞くと林のなかの歩きやすい道だと勘違いする人も多いのですが、ほぼ自然の状態そのままの未舗装路です。
砂や土なら良いほうで、場合によってはぬかるんだ泥や、岩のような大きな石が散乱しているところを走るのですが、頑丈なフレームと本格的な4WD機構を搭載したクロスカントリーでも走破しにくい場所ですから、乗用車ベースのSUVがうまく走り抜けるためには細心の注意とトラブルを回避するための走行術が必要です。
パートタイム式 4WD(2WDと4WDを任意で切り替えできるシステム)の場合、まずは未舗装路に入った時点で4WDに切り替えるのが良いでしょう。また事前にタイヤの空気圧を見ておくのも大切です。
空気圧を下げてタイヤの設地面積を増やす方法もありますが、それは最終手段で、まずは指定空気圧を守ること。
オフロード走行ではいくつものテクニックを駆使する必要があるそうです。
「たとえばデコボコした路面の場合は、凸の部分にタイヤを乗せるようにすることで、凹んでぬかるんだ溝にはまるリスクを減らしスタックする可能性を軽減できます。
またSUVの場合はほとんどがATでしょうから、アクセルは踏むというより添える程度で、不必要に踏み込まずにクリープ現象などを上手に活用したり、極低速での走行を心がけるのも大切です。
とにかくスタックや横転などの危険性を減らすためにも、オフロードでは『急』のつく操作は厳禁だと覚えておきましょう」(4WD業界関係者 Kさん)
冬の雪道を走るときのポイントは?
林道や岩場などの悪路でなくても、冬は雪道や凍結路(アイスバーン)を走行することもあるでしょう。
雪道はスタッドレスタイヤを履いた4WDであればなんとかなりそうな気がしてしまうのですが、悪路走破性に優れた4WDでも状況によっては走れないことも多々あるということを覚えておく必要がありそうです。
SUVであっても雪道やアイスバーンは要注意!
雪道よりもアイスバーンはさらに厄介で、少し溶け出した雪が水の膜になり、「ハイドロプレーニング現象」によってタイヤが浮いたような状況になれば、駆動力に優れた4WDでもタイヤのグリップを失ってコントロール不能に陥ります。
カーブを曲がりきれず、対向車と衝突したり壁にぶつかってしまうなど、雪の多い地域では起こりがちなトラブルといえます。
雪道に関して、長野県のスキー場でパトロール隊員として勤務するIさんに話を聞いてみました。冬の雪道での4WDトラブルと注意点はどんなものがあるのでしょうか。
「お客さまのほとんどがクルマでご来場されるのですが、スキー場は山岳地域に多いため、雪道を走行しなければなりません。
たいていのお客さまはスタッドレスタイヤを装着されて来場されますが、道中は曲がりくねったアップダウンが激しい道が多く、カーブが曲がり切れずに雪壁に激突したり、前走車や対向車に追突するケースが毎年報告されています」
通常なら2WDでも問題ない道でも、雪が降ると状況は一変。場所によってはスタッドレスタイヤを履いていても2WDでは登れないような坂道もあるのだそうです。
「4WDならではの駆動力が発揮される上り坂は良いのですが、問題は下り坂です。どうしても荷重が前に偏りがちになるため、後輪の接地が足りなくなります。
前のめり姿勢の状態でブレーキをかけたりハンドルを切り過ぎると、フロントタイヤのグリップ力を失いやすくなってしまい、結果として曲がり切れずにガードレールや雪壁に激突してしまうのです。
雪道は毎回コンディションが違うため、このスピードだと曲がれない、どこまでエンジンブレーキを活用するかなどの判断には経験値が必要になります。常に予測しながら運転する意識が大事だと思います」(スキー場のパトロール隊員 Iさん)
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4WDだからといってそのシステムを過信し、普段慣れないオフロードや雪道をいつもの舗装路のように走るのは危険だと認識しておいたほうが良さそうです。
悪路や悪天候にも強いのですが、4WDがあくまで安全への備えのひとつと考えて、慎重に運転することを心がけましょう。