先日、スーパーGTの2023年版スポーティングレギュレーションが公開された。その中ではいくつかの箇所が前年から加筆・修正されていた。
特筆すべきは、ドライビングマナーに関する記述が増やされた点だ。これは昨年5月に開催された第2戦富士でのアクシデントを受けてのものと思われる。
第2戦富士のレース中盤では、GT500クラスのトップ争いが接近戦となっており、複数台がスリップストリームを使いながらメインストレートを走行していた。そんな中、その先頭を走る39号車DENSO KOBELCO SARD GR Supraは前方のGT300車両のスリップに入ろうとしたところ、その車両がトラブルによりスロー走行であることに気付いて咄嗟に進路を変えた。しかしその直後につけていた3号車CRAFTSPORTS MOTUL Zは避けきれず、スピンしてウォールに激突するという事故が発生したのだ。
Photo by: Masahide Kamio
これについてスーパーGTのレースディレクションは、この一件を「レーシングアクシデント」であるとして、再発に向けてはスロー走行となった車両と追い越す側の車両双方に、お互いの安全を守るための行動をとるべきであるという見解を示した。
これらの再発防止策については昨年の段階で示されていたが、今回2023年版のレギュレーションが公開されたことで、改めてそれらが明文化されたことになる。
まず、トラブルなどによりスロー走行を余儀無くされる車両について。第18条「ドライバーの遵守事項」の3項には「すべてのプラクティスセッションおよび決勝レース中において、車両トラブル等によりやむを得ずスローとなった場合はハザードもしくはウィンカーの点滅により後続車へ知らせると共に走路を外し妨げとならないように安全措置を講ずることを義務付ける」という文言が加えられている。
そしてスロー走行車両を追い越す側についても、その行動原則がレギュレーションに追加された。
レースにおける危険防止のために定められる「GTAドライビング・モラルハザード防止制度」のページには、「危険な行為、行動の定義」という欄に次のような文言が加えられた。
・車両トラブルによりスロー走行となった場合の安全措置を怠り他車を危険な状態に陥らせる行為
前者はスロー走行車両に対する記述だが、後者は追い越す側の車両に対する言及となっている。追い越す側は危険察知のアンテナを張ることはもちろんのこと、前走者がピットイン、もしくはトラブルの車両であることを認識した場合は、そもそもその車両の後ろにつかないようにすれば、事故を未然に防ぐことに繋がるということだろう。これは昨年の段階から、再発防止策として示されていたものでもある。
なお、安全に関する記述以外でも、細かいレギュレーションがいくつか変更されている。
各レースウィークにおけるタイヤの持ち込み制限に関しては、シリーズをプロモートするGTアソシエイションの坂東正明代表が環境負荷にも考慮して持ち込みセット数を減少させると明言していた。この言葉通り、2023年シーズンからは週末に持ち込めるタイヤ本数が1台あたり1セット削減。ドライタイヤは6セットから5セットに、ウエットタイヤは7セットから6セットに減らされた。
またFCY(フルコースイエロー)の手順も微調整されている。これまではFCY宣言が出された時点でFCYボードがポストに掲示され、この時点で追い越しが禁止に。そこから約10秒後に全ポストで黄旗が振動提示され、このタイミングで全車80km/h制限がスタートする、という流れであった。
しかし今回公開された運用規定では、FCY宣言後にまず黄旗が振動提示されると記されている。そして10秒後にFCYボードが出されて、80km/h制限になる。つまり黄旗振動とFCYボード掲示の手順がそのまま入れ替わったような格好だ。
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