日英のEV比率と自動車学校
日本における2024年1月の新車販売では、電気自動車(EV)とプラグインハイブリッド車(PHV)の割合が、合わせて約2.8%だった。
【画像】えっ…! これが60年前の「海老名SA」です(計14枚)
運転免許を取得しようとする人たちが最初に自動車を運転するのは教習所だが、EV教習車は導入途上で、多くの教習所には設置されていない。
一方、“EV先進国”の英国では、運転免許取得を目指す人々の
「48%」
が、「EVでの技能教習」を希望している段階に来ている。
これはEVのエネルギーや充電器等を扱う英『グリッドサーブ(GRIDSERVE)』が2000人に行った調査によるもので、回答者の24%が、免許取得後に運転することになる車がEVだともいっている(2024年2月29日付け、同社プレスリリース)。
英国の2024年1月の新車販売は、EVが14.7%であり、PHVを合わせると23.1%を占めていた。ガソリン車とディーゼル車の新車販売禁止が2030年から2035年に延期の発表(2023年9月)があったことが思い出されるが、日本とは既にステージが違う。
“EV先進国”がいいといいたいのではなく、先のステージに進む国の状況を後学のために知っておきたい。
英国の自動車学校
ロンドンの電気自動車の給電スポット(画像:写真AC)
英国の自動車学校は、日本とだいぶ違っている。日本のような教習所は存在せず、インストラクターが教習車を運転してきて出張指導を行うスタイルだ。技能教習は、最初から路上で行われる。生徒はそれまでに各自仮免許を申請しておく。
インストラクターでなく、家族や友人に指導してもらうのでも構わない。21歳以上で運転歴3年以上の人なら誰でも仮免許のステッカーを貼った車の助手席に座れる。インストラクターではないと高速道路の教習は行えないが、必須事項ではない。
それでもプロであるインストラクターを希望する人、インストラクターに教わり家族や友人に復習につきあってもらうハイブリッド型を希望する人が多い。
運転免許取得を目指す約半数がEV教習を希望しているとあったが、EV対応のインストラクターを地元で見つけることができるのは、英国全土で
「7人にひとり」
というのが現状である(同プレスリリース)。
これには地域差があり、ロンドンでは41%、ヨークシャーやイングランド東部では10%の生徒がEV対応のインストラクターを地元で見つけられる計算だ。
EV対応のインストラクター不足には、インストラクターが自営業など小規模経営で、助手席にブレーキやクラッチの付いた教習車の用意に時間がかかっていることが考えられる。
需要が供給を大きく上回っているのは、試験会場でも起きている。会場免許を取るためには、英運転者・車両基準局(DVSA)による試験に通る必要があるが、2024年は試験者の枠が177%上回ると予想されている(2024年2月12日付け、英自動車保険『marmalade』プレスリリース)。いい換えると、
「約36%」
しか受験できないということになる。
マニュアル・オートマ問題
オートマ車(画像:写真AC)
EVはギアボックスがないオートマ車である。
英国では、これまで車はマニュアル車が主流であった。そのせいで、オートマ限定の運転試験は、2020年は12.7%だった(2021年6月9日付け、米ウェブサイト『U.S.News』)。
現在は約20%(2024年2月29日付け、米ウェブサイト『bnn』)であるので、まだ多数派とはいえないが、急激に増えているのは確かである。
前述の英グリッドサーブ社の調査では、29%の回答者が、
と回答している。
それもその通りなのだが、英国国内のような“EV先進国”だけでなく、海外で運転する可能性なども考慮に入れて、免許を取得する必要があるだろう。
インストラクターが、EVのみならず、オートマ対応の人がまだ少なく、マニュアル対応の人の方がずっと多くて予約しやすい現状も、生徒に影響を与えている。しかし、需要が変われば、供給サイドも変わっていく。
ちなみに、日本のオートマ限定免許比率は英国よりもずっと高い。2022年中の都道府県別指定自動車教習所の卒業者数は、普通自動車の約72.7%がオートマ限定だった。10年前には既に、オートマ限定の卒業者数が54.4%だった。
「マニュアルの方がかっこいい」
「基礎を知っておくべきだ」
「念のためマニュアルで」
といった考えは、本当に薄くなった。
・日本はオートマ限定の免許取得が既に主流である
・日本の自動車学校は規模が大きい
ことが英国と違う。国内のEV化が進んで、EVによる教習の需要が増えたときは、英国より一気に対応できるのかもしれない。