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「クロストレック」走りだけじゃないデキの良さ 商品性の高さも絶妙でポテンシャルは高い

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XVからグローバルな名称に統一して発売されたクロストレック(写真:SUBARU)

スバルが、「クロストレック」を発売した。クロストレックとは、これまで日本では「XV」と呼ばれていたモデル。2022年9月に発表し、日本ではこの春より発売を開始した3代目になって、北米と名称が統一された。

乗ると、たいへんよくできていて、価格と内容とのバランスがすばらしい、と感心。このところ、スバルのプロダクトはどれもデキがよく、クロストレックも期待を裏切らなかった。

今回、クロストレックなる名称を、あえて日本でも使用することになった理由はなんだろう。

その背景には、日本で(も)SUV/クロスオーバーの人気が衰えず、よりダイレクトにイメージがわく「クロス(オーバー)+トレック(トレッキング)」の車名がふさわしいとする考えがあったはず。

インプレッサの派生車ではない!?

新型クロストレックは、去る2023年4月20日に価格発表されたばかりの新型「インプレッサ」と基本プラットフォームを共用する。そこにもおもしろいストーリーがある。

「従来なら、インプレッサのデザイン開発をしてから、派生車種としてクロストレックを手がけますが、市場でのSUV人気から今はクロストレックがメイン車種。クロストレックから開発をスタートしました」

デザインを担当したスバルデザイン部の井上恭嗣氏は、4月に一般道で試乗させてもらった際、私に背景をそう説明してくれた。ちょっとびっくり。

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手前がLimited、奥がTouring。ホイールのデザインなど細部が異なる(写真:SUBARU)

今までなら、こうした記事でもインプレッサを基準にしてクロストレックの特徴を説明していたが、今は逆か。たとえば、「クロストレックの最低地上高は、インプレッサより約70mm高い」ではなく、「新型インプレッサの最低地上高はクロストレックより約70mm低い」と書くべきなのだろう。

それはともかく、4ドアにハッチゲートをそなえたインプレッサの全高は1515mm(ガソリンエンジン車は1450mm)。対するクロストレックは1575mm。全長はクロストレックが5mmだけ長くて、4480mmだ。2670mmのホイールベースは、インプレッサもクロストレックも同一だ。全幅はインプレッサが1780mmで、クロストレックは1800mmちょうど。

実車を見比べてみる機会もあったのでしげしげと眺めてみると、クロストレックはフェンダーまわりを中心に、黒い合成樹脂製のクラディングがついているため、ホイールハウスが大きく見える。

ホイールハウスを大きく見せることで、クロカン4WD好きなアメリカ人が好む、いわゆるリフトアップしているイメージが強くなる。やっぱり、インプレッサとは狙いが違う印象だ。

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クラディングがつかず車高も低いインプレッサのエクステリア(写真:SUBARU)

北米向けにスバルは、日本仕様とほぼ同一の「Crosstrek(なぜか英語)」を2022年9月に公開したあと、2023年4月6日に「Crosstrek Wilderness(クロストレック ウィルダネス)」を追加している。

クロストレック ウィルダネスは、クロストレックより36mm高い、236mmの最低地上高を持ち、外観もクラディングが大型化していたりグリルがよりマッシブになっていたりと、迫力が増している。

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さらにワイルドなデザインを持つウィルダネスは日本導入に期待したい(写真:SUBARU)

変速機の制御に感心しきり

車名にたがわずクロスカントリー的なイメージが強くなった新しいクロストレックだけれど、オンロードで乗ってみるとこれがすごくいい。かなりの高得点だ。

パワートレインは、2.0リッター水平対向4気筒ガソリンに電気モーターが発進時や加速時にトルクを積み増すマイルドハイブリッド。スバルが「e-BOXER」と呼ぶシステムだ。

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純ガソリン車はなくなり、e-BOXERのみとなった(写真:SUBARU)

駆動方式は、前輪駆動と全輪駆動(スバルではAWDと呼ぶ)。スバルによると、全輪駆動モデルのオーダーのほうが圧倒的に多いらしい。

クロストレックのどこがいいかって、加速感を含めたエンジンフィール、変速機の制御、ステアリングシステムと足まわりの連携のよさによるハンドリング、それに乗り心地と静粛性……と、あらゆるところがいい。

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高速道路での直進安定性も高かった(写真:SUBARU)

エンジンはごく低回転域からもたつきを感じさせないし、回転の上昇もスムーズ。感心したのは変速機の制御で、オートモードでの加速感はマニュアルモードで変速するよりナチュラルだ。

今回は、ボディ構造を見直して、ハンドリングに貢献する部分にいろいろ手を入れたと説明された。たとえばボディは、構造用接着剤の使用面積の拡大によって、単に剛性アップを図っただけでなく、カーブを曲がるときなど路面への追従性などに影響する“しなやかさ”を生むことに成功したとされる。

実際に乗ってみると、タイヤが路面にしっかり追従して駆動力を伝えるとともに、ステアリングホイールの動きにすばやく応えてくれていることがわかる。

先に「感心した」と記した変速機は「リニアトロニック」なる“有段化”したCVT(無段変速機)だ。有段化とは、加速や減速の具合に応じてプーリーの上を滑るベルトを固定し、ステップATのように制御すること。

マニュアルモードも試してみたが、“オート”のほうが制御が細かいのだろうか。速度を上げての運転でもトルクコントロールがよくて、アクセル操作に対する加速性は抜群だった。

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シフトセレクター自体はオーソドックスなレバー式(写真:SUBARU)

「e-アクティブシフトコントロール」なる機能は、スバル車オーナーにはおなじみの「SI-DRIVE」のスポーツ(S)モード選択時に、エンジンのトルク制御を行うもの。コーナー進入時、加速や減速の状況などからスポーティな走行だと車両が判断した場合に、コーナリング中も高いエンジン回転数を維持する。

はたしてカーブで速度を上げていくと、「加速性がよすぎる」と思う場面もあったほど。さっとスピードが上がるのだ。慣れていないと、操舵が遅れがちになるかもしれない。

もちろん、自分のクルマにしてクセを覚えてしまえば、なんの問題もない。この機能のいい点は、反応が鋭いため、運転している自分との一体感が強いところだ。

インテリアは素っ気ないけど…

内装のデザインは、機能主義的。悪くいうと、ちょっと素っ気ない。「フォレスター」の「X-BREAK」のようなアウトドアギア感覚のインテリアデザインなど似合いそうだけれど、ブラック基調のみ。

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レヴォーグとも共通性のあるインテリアは、少々素っ気ない印象(写真:SUBARU)

そこで目を惹くのは、「Touring」にオプション、「Limited」に標準装備される11.6インチの大型の縦型インフォテイメントシステム用モニタースクリーンだ。

Apple CarPlayとAndroid Autoに対応していて、スマートフォンのアプリを使用することも可能。視線の移動を減らすために、音声入力できる操作も多いし、空調や音量用には“つまみ”もある。

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フルデジタル式が流行の中、シンプルなアナログメーターに好感が持てる(写真:SUBARU)

個人的には、アナログデザインの速度計と回転計が2つ並んだ、シンプルな計器盤のデザインが好きだ。ドライビングを楽しませてくれるクルマづくり、というスバルのイメージに合うと思う。

シート素材は、スタンダード仕様の「Touring」がトリコット、装備が豊富な「Limited」にはファブリック(どっちもファブリックだけど)が設定される。

オプションで本革シートも選べるが、動物福祉の観点からレザーフリーが叫ばれる昨今の傾向とあいまって、作りもよく、滑りにくいファブリックシートに軍配を上げたい。

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上級グレード「Limited」のシート。素材感は良好(写真:SUBARU)

「より広範囲かつ高精度な認識性能と360度センシングを実現」したとスバルがうたう新型アイサイトは、当然クロストレックにも搭載。広角単眼カメラとステレオカメラを使うのが特長で、高速道路上ではスムーズな追従走行と車線中央維持を味わえた。

大きすぎず小さすぎない絶妙なサイズ感

試乗してみて、「とても自分がなじめるクルマ」だと感じられたクロストレック。価格は、17インチホイール装着でオーディオレスのベーシックなTouringだと、前輪駆動が266万2000円、AWDが288万2000円と、全輪駆動でも300万円を切る。

18インチホイールやカーナビ付きの11.6インチモニター、そして視界拡張テクノロジーや運転支援テクノロジーつきの「アイサイトセイフティプラス」を装備する上級グレードのLimitedは、前輪駆動が306万9000円で、AWDが328万9000円だ。

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価格からすると、スバル車オーナーが気にしそうなのはフォルクスワーゲン「ゴルフ」だろう。ゴルフは1.0リッター3気筒ターボを搭載する「eTSI Active」の338万9000円〜。ただし、こちらは前輪駆動だし、内容にはだいぶ差がある。

日本車で競合を探すと、全長4575mmで前輪駆動もAWDもある「マツダCX-5」が、価格的にもドンピシャのライバルとなる。ただし、装備を視野に入れると、提供されるものが異なってくる。

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極太のルーフレールなどタフさを強調したテイストはクロストレックならでは(写真:SUBARU)

クロスオーバー的なモデルとしてはトヨタ「ヤリスクロス」やマツダ「CX-30」があるけれど、サイズがもっとコンパクトになってしまうし、「RAV4」だと逆に大きめ、かつ高め。

そう考えると、クロストレックの商品設定はいいとこをついていると思う。若者がメインターゲットなんて説明も受けたけれど、幅広い層に受け入れられるポテンシャルのあるクルマだと感じた。

<スバル クロストレック AWD>

全長×全幅×全高:4480×1800×1575mm

ホイールベース:2670mm

車重:1550kg

パワートレイン:1995cc 水平対向4気筒ガソリンエンジン+電気モーター(マイルドハイブリッド)

最高出力:107kW/6000rpm

最大トルク:188Nm/4000rpm(+65Nmモーター)

変速機:無段変速(マニュアルモード付き)

WLTCモード燃費:16.4km/L

価格:288万2000円〜

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