ヒョンデ/KONA(399万3000円~)
EVの「IONIQ 5」で世界に衝撃を与えたヒョンデから、第2弾EV「KONA(コナ)」が上陸! ベーシックモデルが400万円を切るプライスがつけられたコンパクトSUVに、我々は再度「ヒョンデショック」を受けることになるのか? 試乗レポートをお届けします。
◆コンパクトSUVらしく取り回しはラク
本国では2023年4月に発売開始したばかりのKONA。かの地ではガソリンエンジン車とハイブリッド車も用意されていますが、日本ではEVモデルのみの販売となります。
全幅1825mm×全高1590mm
全長4335mm、ホイールベース2660mm
リアビュー
同社が「コンパクトSUV」と定義するとおり、全長4335×全幅1825×全高1590mmと、全長・全高はHonda「VEZEL」とほぼ同寸。ただ、全幅は35mmほどワイドです。ホイールベースは2660mm、最小回転半径は5.4mと取り回しの面で不満を覚えることはないでしょう。ちなみに、IONOQ 5のホイールベースは3000mm、最小回転半径は5.99mなので、狭い駐車場での取り回しには難儀することもありました。
シームレスホライゾンランプ。バンパー側には四角い装飾が並ぶ
個性的な外観のIONIQ 5と比べれば、KONAはおとなしい印象を受けます。デザインを担当したのは、サイモン・ロースビー氏。ロールス・ロイス「シルバーセラフ」の車両デザインプロジェクトに参画したあと、ベントレー「コンチネンタルGT」のデザインを主導し、その後フォルクスワーゲングループチャイナのデザインディレクターを務めて、中国市場におけるフォルクスワーゲンのトヨタ越え達成に多大な貢献をした方です。車両の前後に「シームレスホライゾンランプ」などは近未来的でカッコいい!
駆動方式はFFのみで、バッテリー容量と最高出力の違い、インテリアや機能面の違いによる4グレード展開。ベーシックモデルであるCasualは、交流モーターの最高出力99kW(135PS)、最大トルク255Nmで、搭載するバッテリー容量は48.6kWh。1回の充電で最大456km(WLTCモード)走行可能とのこと。
最上位のLoungeは最高出力150kW(204PS)、最大トルク255Nmの交流モーターと64.8kWhのバッテリーの組合せ。航続距離も伸びて541~625km(WLTCモード)と謳っています。
KONAのグレードとプライスリスト
驚くのは、Casualが399万3000円、Longでも489万5000円というプライスタグ。これに国からの補助金が65万円、さらに地方自治体によってはさらに補助金が交付されます。ちなみに東京都の場合は45万円の補助が受けられるため、Casualの価格は実質289万3000円に! 実質と書いたのは、購入後に申請してから補助金を受け取るためで、注文時の分割払い契約は399万3000円になるから。
さらに最初の3年間、点検や車検、バッテリークーラントの交換が無償になるほか、年10万円まで修理費用をサポートする「Hyundai Assurance Program(ヒョンデ・アシュアランス・プログラム)」を付与するというからすごい。
アフターフォローの手厚さに、ヒョンデの日本市場に対する本気ぶりを感じずにはいられません。
充電ポートはプッシュでリッドを開ける
リッドは横にスライドする
充電ポートの様子
個人的にKONAでイイナと思ったのが、充電ポートが前にあるという点。というのも、急速充電ケーブルって意外と短かったり、急速充電器そのものが駐車場の奥だったりする場合、入庫に難儀することがあるから。これなら左右云々とか関係なく、頭から突っ込めばOK! 充電時間の目安は、90kWの急速充電器を使った場合10~80%までの充電は45分程度。ちなみに、車両は80kWタイプまでしか受け付けないとのこと(90kWの充電器を使っても80kWの速度しか出ない)。ちなみにIONIQ 5は350kWまで大丈夫だそうです。
V2Hアダプターを取り付けた様子
V2Hアダプター
ACアウトレットには防水キャップが取り付けられている
V2Hモードの様子
充電ついでに、KONAにはV2Hアダプターも標準装備されます。差し込むだけで家電が使えるこのアダプターは実に便利! ちなみに購入しようとすると「結構なお値段しますよ」とのことでした。
◆車内にチープ感はなくシンプルでクリーン
Lounge Two-toneの室内
Lounge Two-toneの助手席側のトレー
Two-toneのドリンクホルダー
Lounge Two-toneのアームレスト
ミラーレス一眼レフを置くこともできる
「値段が安いということは、インテリアはそれなりなのでは?」と疑いがちになるので、室内をチェックしてみましょう。デザインはスッキリとしたもので、クリーンなイメージ。なにやら再生PET素材を多用しているそうで、資料には「環境に配慮している」とか「サスティナブル」といったイマドキの言葉が並びます。ですがユーザーにとって、そういった言葉はどうでもよく、シンプルに「居心地がよいのか悪いのか」の方が重要。その点においてKONAは居心地がよく、チープな印象を受けることは少ないでしょう。
Casualの室内
ドライバーシートの様子
メーター表示
ナビ表示
ARナビ表示
デュアルディスプレイのようなメーターパネルとインフォテインメントは、文字が小さい点が気になるものの、わかりやすい表示で好印象。インターフェースはスマホライクで、慣れている人ならとてもわかりやすいでしょう。さらに、KONAではARナビを実装。リアルタイムで映像の上からナビ表示をする、これまたスマホライクな機能です。
使い勝手は人それぞれといったところで、「ナビがメーターパネル側に表示されるなら使いやすいだろうけれど、インフォテインメント側だとわかりづらい」と思いました。
ウインカーを出したとき、後ろの四角をカメラが計器盤に映し出してくれる機能は実に有用! これはIONIQ 5でも搭載されているのですが、左折時の巻き込み事故防止に大変有用です。ちなみに輸入車ですが、ウインカーは右手側という日本向けのローカライズされているのも嬉しいところ。
ドライブモードセレクターは右手側にあるスイッチを用います。最初は慣れないのですが、センターコンソールがスッキリするのでいいのかなと。さらに慣れないのが、パーキングブレーキのボタンも右側にあること。KONAの場合、Pレンジに入れれば自動でパーキングブレーキがかかり、DレンジまたはRレンジにしてアクセルを踏めば解除されるとはいえ、最初どこにあるのか探してしまいました。
◆EVならではの充実した充電ポート
センターコンソール
エアコンまわり
SOSボタンも用意されている
USB充電ポート
ドライブレコーダーを記録するmicroSDスロット
ドアノブまわり
後席の様子
後席ドア内張
シートヒーターも可能
後席の床面はフラット
AC100Vアウトレットもある
後席は広さこそ、コンパクトSUVなりなのですが、快適装備は充実。AC100Vアウトレットも用意されています。
荷室の容積は466L。リアシートを倒せば1300Lへと拡大します。「荷室にアクセサリーソケットがない! ポータブルバッテリーが充電できない!」と文句の1つを言おうと思ったのですが、考えてみたらAC100Vがあるので別にいいかと。
フロントボンネットを開けても、モーターの姿を見ることはできません。代わりに見えるのは収納。大きさ的にAC充電ケーブルなどを入れる程度といったところでしょうか。
◆EVのトルクと素直なハンドリングで走りは気持ちイイ
EVらしく、走りはかなりトルクフル。走行モードはスポーツやらノーマルやらといくつか用意されているのですが、ノーマルですら持て余してしまうほど。これだけトルクがあるとFFならステアリングが取られてしまうのでは? と思ったのですが、そんなことはなく実によく調律されています。
ハンドリングは実に素直であり、そして手応え十分。ちょっと後ろがじゃじゃ馬っぽく、おそらく後席の人は辛いかも、と思わせるところはありますが、かといってクセのある硬さや変な柔らかさはなく。
驚いたのは回生ブレーキの制御。まずパドルシフトを使って回生レベルの調整ができるほか、ワンペダルにも対応。なにより回生ブレーキ時の、最初ブレーキで速度を落としてからモーターによる回生へと切り替わるのですが、その時の加速度変化が感じられないのです。この作りこみには拍手を送りたいと思います
当初はモーター音が「お前は昔の京浜急行か!」と思うくらいに大きかったのですが、これはスピーカーからの疑似音。設定で無音にできたりもします。ここら辺はお好みでどうぞ。
今回の試乗では高速道路を走っていないので、運転支援については不明。ですが、IONIQ 5の経験でいえば、おそらく不満はないかなと。ちなみにステアリングリモコンは輸入車っぽく左手側に用意されています。
乗れば乗るほど「こんな機能があるのか!」がいっぱい。数時間程度の試乗では「隠し部屋」を見つけることはできず、KONAの奥深さを知るが精いっぱい。IONIQ 5が登場した時、多くのメディアは「EVの黒船が来た」と騒ぎたてましたが、充実の内容で400万円を切ってくるKONAこそ「黒船」といえるかもしれません。
魅力あるクルマの登場は、ほかのクルマメーカーによい刺激を与えます。KONAの存在に、きっとほかのメーカーも黙ってはいないハズ。未来的なクルマから、明るいクルマの未来を創造してしまいそうです。
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