アルピーヌA110の魅力を人気グレード「GT」で再考 ライトウェイト・スポーツカーの1つの到達点に立っている
2017年のデビュー以来、地元フランスをはじめ、欧州各地域、さらにはここ日本でもライトウェイト・スポーツカーの雄として、高い評価と支持を得るとともに、多くの愛好者を生み出しているアルピーヌA110。すでに6年が経過した今も販売台数に衰えが見えないことが、高い評価と支持の証だ。
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今回はそんなアルピーヌA110のなかでも、2022年の改良で通常販売モデルになり、シリーズ・トップの人気を誇るA110GTにモータージャーナリストの藤原よしお氏が試乗。A110の魅力を再考してもらった。
次のコーナーが待ち遠しい
「次に来るのはどんなカーブだろう?」
西伊豆の山奥のワインディングを走っていると、飛ばしているわけでもないのに、早く次のコーナーが来ないかと待ち遠しくなる。そしていざ、コーナーに向けステアリングを切り、エイペックスからアクセル・ペダルをジワリと踏み込んで思っていた通りの走りができると、えも言われぬ達成感と充実感に満たされる。
「ああ、スポーツするクルマってこういうことなんだな」と、改めて実感する瞬間だ。
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「SPORT」では新たな一面が現れる
もちろん、ステアリングの脇に付く赤い「SPORT」モードのボタンを押せば、300psを誇る背後の1.8リッター直4ターボ・エンジンは、パンパンと小気味のいいエグゾースト・ノートを炸裂させ、レスポンスの良くなった7段DCT(デュアルクラッチ式自動MT)やステアリングとともに、よりキビキビとした反応をみせる。それはそれで楽しいのだが、サーキットなどのクローズド・コースを走る時の「隠し球」として取っておくのも悪くない。そう思わせるだけの素性の良さをこのクルマ、アルピーヌA110GTは持っている。
フランスのプライド
あわせてアルピーヌはルノーの支援のもと、ル・マン24時間を頂点とするスポーツカー・レースやF3、F2といったフォーミュラ・レースにも参戦。1975年には後のルノーF1のベースとなるF1マシンを試作、そして1978年にはル・マン24時間を制するなど、アルピーヌは文字通りフランスのプライドになった。
その後1990年代に一旦活動が途絶えたものの、2013年のLMP2マシンでアルピーヌの名がレースに復活。伝統のスポーツカー・ブランドの完全復活に期待が高まるなかで2017年に登場した待望のロードゴーイング・スポーツカーが、このA110というわけだ。
21世紀のライトウェイト・スポーツカーのお手本
その名の通り、モチーフとなったのは50年前に生まれた伝説のスポーツカー、A110だ。中央に2灯のフォグランプを挟んだ4灯式の「モンテカルロ・ライト」、インテークの名残りであるサイドのキャラクター・ライン、そして回り込んだリア・ウインドウをもつベルリネッタ・スタイルなど、そのエクステリアはオリジナルA110のキャラクターを上手くモダナイズしたものになっている。
しかし、その中身はガラリと変わり、RRからミドシップに変わったレイアウト、96%以上をアルミで構成する強固で軽量なボディ、フラットボトムとリア・ディフューザーを組み合わせ最適なダウンフォースを得たエアロダイナミクスなど、21世紀のライトウェイト・スポーツカーのお手本というべきものになっている。
走りと快適性を高次元でバランス
想像以上に乗り心地もいい
また、マイナーチェンジでの変更で特徴的なのが、脚まわりの仕立てだ。デビュー当初のオリジナルのA110は時としてテールスライドをも許容する、ミドシップというよりもRRっぽい味付けがなされていた。ところが、マイナーチェンジを受けたA110GTはオリジナルと同じ「アルピーヌシャシー」と呼ばれるシャシーを有しているが、全体的にキュッと締め上げられ、明らかにフロントとリアの接地感が増した。リリース上では特にシャシーの変更には触れられていないものの、おかげでどんな速度域でも気負うことなく自信をもってコーナーリングを楽しむことができるようになった。
さらに付け加えるならば、ピュアでダイレクトでファンなスポーツカーとしての純度を保ちながら、路面からの振動や突き上げが上手く抑えられており、想像以上に乗り心地がいいことだ。しかもジワっと湿気を感じる初夏の炎天下であっても、車内は涼しく快適。ドア下やシートバックに配置されたスピーカーからのサウンドも上手く狭い空間に合わせて調律されており、助手席から不満の声が上がることもないだろう。
あなたも伝説の一端を担ってみては?
2017年の発売以来、すでに1万台以上が生産され、未だコンスタントに売れ続けているというA110は、ある意味で内燃機関時代のライトウェイト・スポーツカーの1つの到達点にあるといっていい。そしてまたアルピーヌというブランド自体も、2021年からのF1参戦に加え、LMDhマシン、A424_βによる2024年からのWECハイパーカー・クラス参戦で再びル・マンの頂点を狙うなど、第2の黄金期を迎えつつある。
スポーツカー好きであるならば、A110GTとともにオーナーとしてその伝説の一端を担うという選択は悪くないはずだ。
文=藤原よしお 写真=宮門秀行
(ENGINE WEBオリジナル)