レクサスは欧州車に対抗できるラグジュアリーブランド
日本車がどれだけ高性能、高品質になっても、欧米のクルマになかなか追いつけないのが高級車のカテゴリー、つまり、ラグジュアリーな世界観を売りとするクルマです。
日本と欧米(特にヨーロッパ)の歴史や文化の違いを考えると仕方がないとも思えますが、その中で唯一、欧州車に対抗できるラグジュアリーさを持ち合わせているブランドがレクサスではないでしょうか。
【画像】“ゴルフ・エクスプレス”としての実力は? レクサス「LCコンバーチブル」を写真で見る(51枚)
そんなレクサスの中で最も贅沢なモデルといえば、スポーツクーペの「LC500」。さらにいうなら、そのオープンモデルである「LC500コンバーチブル」です。2020年にデビューした「LC500コンバーチブル」が先ごろ商品改良を受けたということで、今回試乗する機会を得ることができました。
ムダと思える過剰さにこそ“ラグジュアリーさ”を感じられることを教えてくれたレクサス「LC500コンバーチブル」
レクサスのLC500は、5リッターのV型8気筒という大排気量エンジンを積んでいます。クーペには3.5リッターのV6エンジンにモーターを組み合わせたハイブリッドモデル「LC500h」もありますが、コンバーチブルはソフトトップを収納する必要があるためモーターやバッテリーを積むスペースがなく、ガソリンエンジン車のみの設定となります。
EV(電気自動車)へのシフトが急速に進む昨今、これだけ大きなエンジンを積んでいるスポーツカーは世界的に見ても希少です。先述した“ラグジュアリー”という言葉には、いい意味で「ムダを楽しむ」という価値観が含まれていると考えるなら、LCのラグジュアリーさの源泉はこの5リッターV8エンジンにあるといえます。
なぜならこの先、これだけ贅沢なエンジンを積んだクルマはまず出てこないだろうと考えられるからです。
●見ても乗っても“ハレ”の気分を味わえる
試乗車した新型LC500コンバーチブルの鮮やかなブルーのボディカラー(「ヒートブルーコントラストレイヤリング」という名称)は、今回の改良で追加された新色。鮮やかでありながら深みのある、とても美しい色だと思います。レクサス車の塗装やメッキパーツなどの仕上げは、他の国産車と比べても群を抜く美しさで、まさにユーザーの所有欲を満たしてくれます。
そのエクステリアにも増して気持ちを“上げて”くれるのが、LC500コンバーチブルのインテリアです。今回の試乗車は、外装色と合わせたネイビーとオフホワイトのレザーが組み合わされた、とてもエレガントなコーディネート。あまりの美しさに一瞬、シートに座るのをためらってしまうほどでした。
実用車であれば絶対にあり得ない色づかいですが、それだけに、この室内に居るだけで特別な“ハレ”の気分にさせてくれる、まさにラグジュアリーというにふさわしいインテリアです。
ソフトトップはボディと同じブルー。トップを閉めたスタイリングが美しいのもLC500コンバーチブルの魅力です。4層構造を持つソフトトップは、閉めていればクーペと遜色ないほどの耐候性や静粛性を備え、開けるときには電動にて約15秒でフルオープンに。幌は完全にボディに格納され、リアのデッキはフラットになります。オープンにしたフォルムはとてもエレガントです。
LC500コンバーチブルでゴルフに行けるのか?
今回、目的地に選んだのは、千葉県市原市にある米原ゴルフ倶楽部。オープンカーでゴルフとは、ちょっと酔狂な組み合わせに思えるかもしれませんが、実は「ゴルフ場でレクサスLCをよく見かける」といった耳にしたことがあり、スポーツクーペとゴルフの間には親和性があるのかな? と思ったからです。もしかしたら「新型LCコンバーチブルでゴルフに行けるのか?」と、気になっている人もいるかもしれませんね。
結論からいうと、LC500コンバーチブルのラゲッジスペースにフルセットのキャディバッグはギリギリ入らず……。ではリアシートに……と試したけれど、ちょっとだけハミ出してしまい完全には収まりませんでした。
なので、キャディバッグを積むとすれば助手席です。でも、トップを開け、キャディバッグをちらっと見せながら走るのも、僕はカッコいいと思います。まあ、LCでゴルフに行くのなら、バッグは宅配便で送ってしまうのがいいかもしれませんが(笑)。
とはいえ、クラブハウスの車寄せや駐車場におけるレクサスLC500コンバーチブルの存在感は圧倒的でした。
●ドライバーを“その気にさせる「スポーツ」モードの演出
高速道路でトップを開けて走っていると、さーっと髪をなでる風、V8エンジンの乾いたエキゾーストノートがキャビン内でブレンドされ、得もいわれぬ気持ちよさ。
グイっとアクセルペダルを踏み込めば、さらに豪快な咆哮を響かせることもできますが、10速ATが組み合わせられる477ps/540Nmのエンジンを2000回転以上回すシチュエーションはほとんどなく、自然とジェントルなクルージングに落ち着きます。
一方、一般道に降り、カーブが連続する道が現れたときには、走行モードセレクターで「スポーツ」を選び、パドルシフトでギアチェンジしながら走らせるのが楽しい。レーシングカーを思わせるような、回転計を中央に据えたメーターパネルの表示や色が変わり、ドライバーを“その気にさせる”演出がなされます。
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“優雅なクーペ”と“痛快なスポーツカー”という二面性、さらに、トップをオープン/クローズすることでマルチに楽しめるというのが、レクサスLC500コンバーチブルの魅力であり、贅沢さなのだと感じました。
先述したように、これからクルマの“電化”が進むにつれ、大排気量エンジンは“ムダなモノ”として淘汰されていくのかもしれません。しかし、ムダと思えるような過剰さにこそ“ラグジュアリーさ”を感じるのだということを、LC500コンバーチブルは教えてくれたのでした。
●LEXUS LC500 Convertible
レクサス LC500コンバーチブル
・車両価格(消費税込):1550万円
・全長:4770mm
・全高:1350mm
・ホイールベース:2870mm
・車両重量:2050kg
・エンジン形式:V型8気筒DOHC
・排気量:4968cc
・変速機:10速AT
・最高出力:477ps/7100rpm
・最大トルク:540Nm/4800rpm
・サスペンション:(前)マルチリンク式、(後)マルチリンク式
・ブレーキ:(前)ベンチレーテッドディスク、(後)ベンチレーテッドディスク
・タイヤ:(前)245/40R21、(後)275/35R21