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「2023年日本自動車初期品質調査」「日本自動車商品魅力度調査」から見えた軽EV販売好調の背景と課題。J.D. パワー調べ

「2023年日本自動車初期品質調査」「日本自動車商品魅力度調査」から見えた軽ev販売好調の背景と課題。j.d. パワー調べ

(写真=CAR and DRIVER)

この記事は2023年11月1日に「CAR and DRIVER」で公開された「「2023年日本自動車初期品質調査」「日本自動車商品魅力度調査」から見えた軽EV販売好調の背景と課題。J.D. パワー調べ」を一部編集し、転載したものです。

顧客満足度(CS)調査や消費者動向に関するリサーチ・コンサルティング会社であるJ.D. パワージャパンは、「日本自動車初期品質調査℠(IQS)」、「日本自動車商品魅力度(APEAL)調査℠」を実施し2万を超える新車ユーザーの声を分析した。

今回この2つの調査データから、好調に販売台数が推移する軽EV(電気自動車)について、 ユーザープロファイルや車両評価の一部を整理し、日本におけるEV普及の現状と課題を解説する。

調査は2022年4月から2023年3月まで新車購入後2~13か月経過ユーザーを対象にインターネットで行い、回答を得られた21,647サンプル(うち、軽自動車は6,742サンプル)をまとめたものだ。なお、本調査の軽EVとは日産サクラ、三菱ekクロスEVの合計を指している。

調査から分かった軽EV購入者の顧客層は、従来の軽自動車ユーザーに比べ、男性やシニア層が多いこと。軽EVユーザーに占める男性の割合は70%、また60歳以上(男女)の割合は43%を占め、従来のガソリン車やHEV軽自動車ユーザーに比べ、かなり多いことが分かった。

また、軽EVユーザーは、世帯で他にも車を所有している人の割合が55%で、登録車(普通車)や従来の軽自動車ユーザーに比べて高い割合となっている。充電等でEVの運用に支障をきたしたとしても、他の車両でカバーできる複数台保有ユーザーが多いものと考えられる。

ポイントとなるのは、軽EV登場1年目のユーザー層は、従来の軽自動車のユーザー層とは異なっている点だ。上記傾向の他、世帯収入が多いことや、登録車からの買い替えも多い傾向がみられる。従来の軽自動車ユーザーが軽EVの登場を機に乗り換えたというより、EVの運用を模索する消費者の一部、特に経済力のあるシニア層や男性層がトライアル的に軽EVを導入したケースが多かったと推察される。

調査によって、分かったユーザーの軽EVの評価はどうだろうか。軽EVの商品魅力度の高さを示すAPEALインデックスは697ポイント。これは従来の軽自動車の平均を上回るだけでなく、登録車の平均スコアをも上回っており、軽EVが高い商品力を有していることが分かる。一方、軽EVの総合不具合指摘数は165PP100。これは従来の軽自動車の平均よりも不具合指摘が多く、登録車同等の不具合指摘水準であることを示している。

軽EVの高い商品力は、1年で4万台のセールスをするヒットにふさわしい商品魅力を有していることが調査結果においても確認された。詳細評価の傾向では、やはりパワートレインや快適性評価の高さがみて取れる。

一方で軽EVの初期品質については、不具合指摘はEV関連の不具合に限らず多岐にわたる点が浮き彫りとなった。現状のユーザー特性(男性やシニア層の多さ、登録車からの乗り換え層等)も不具合指摘が多くなる背景要因となっている可能性もありえる。

軽EVのバッテリーに対するユーザー評価について調査したところ、軽EVのフル充電時の航続距離について「期待より悪い」とする割合は22%だった。これは、バッテリー容量が軽EVより大きい登録EVと同等、もしくは登録EVよりもよい評価だ。さらに、フル充電にかかる時間の評価については、軽EVが登録EVを上回る評価となっている。

軽EVのバッテリーに関する評価(航続距離や充電時間)は、総じて登録EVに遜色ない(もしくはそれを上回る)ものだった。もちろんこれは軽EVの航続距離が登録EVに勝るということではなく、軽EVの20kWhというバッテリー容量を理解した上で、車両用途や運用環境がそれに見合っているならば大きな不満にはならないということであり、軽EVの初期購入者のニーズは十分満たしていたということだろう。

今回の調査で「軽EV」として扱っている2022年6月に販売開始された軽EVの2モデル(日産 サクラ、三菱 eKクロスEV)は、日本のEV市場としては大きなヒット商品となった。2022年4月~2023年3月の国産乗用EVの販売台数、約6万台のうち、約4万台をこの2モデルが占めている。

「J.D. パワー2023年日本自動車商品魅力度(APEAL)調査SM」の結果では、軽EVがとても高い商品力を有していることが明らかとなった。最大の魅力となったのはパワートレインであり、従来の軽自動車では得られないパワー感、スムースさといった動力性能の良さが大きな強みとなっている。

また、軽EVの20kWhというバッテリー容量についても、商品魅力度においては40kWh以上のバッテリーを搭載する登録EVに遜色ない評価を得ている。すなわち車両使用目的や運用環境がそれに適したものであれば、20kWhのバッテリーを搭載したEVでも十分な評価を得られることが確認された。

一方、「J.D. パワー2023年日本自動車初期品質調査SM(IQS)」の結果では、軽EVの総合不具合指摘数は従来の軽自動車の平均よりも多く、品質面における不具合指摘の多さは懸念材料だ。また、今後の課題も見受けられる。特に軽EV初期ユーザーのプロファイルが一般的な軽自動車ユーザーのプロファイルと大きく異なっていることは要注意といえる。

現在の軽EV需要は軽自動車市場のEVシフトの始まりではなく、軽/登録にこだわらないEVトライアル需要であり、20kWhというバッテリー容量も、EVを試す上では必要十分という見方ができるかもしれない。もしそうであれば、軽EVと同価格帯で、より大きなバッテリー容量のEVモデルが登場した場合、EVトライアル層はそちらを好む可能性も考えられる。

メーカーはどの程度の価格帯やバッテリー容量がEV需要掘り起こしに最適なのかを見極め、それに基づいた商品開発を行うとともに、EVトライアル層がその次に買うべき商品ラインアップの拡充も求められる。一方、軽自動車市場そのもののEVシフトを本格的に進めるとすれば、今一度、従来の軽自動車ユーザーが求める価格、性能要件を精査し、それに見合った軽EVの商品開発が必要かもしれない。

いずれにせよ、軽EVの登場により日本のEV市場が前年比倍増したことは、日本市場にもEVに関心を寄せる消費者が少なくないことを示唆している。EVに関心を示す層と規模を見極め、日本市場に求められるEVを適切な価格、適性な性能で供給することがEVシフトという大変革期を勝ち抜くカギとなりそうだ。

Writer:横田康志朗

(提供:CAR and DRIVER)

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