1898年、フェルディナント・ポルシェが粗末だが操作可能な電気馬車を設計したとき、自分の名前が世界有数の自動車ブランドと結びつくことになるとは思いもよらなかった。1931年に創業したポルシェは、1948年にタイプ356を発表して自動車製造を開始。その後、モータースポーツでの成功は瞬く間に続いた。しかし、市販スポーツカーというジャンルを定義したのは1960年代の911の生産であり、今日では高性能ラグジュアリーの代名詞となっているポルシェのアイデンティティである。しかし、こうした輝かしい業績には代償がつきものであり、ポルシェの名は第二次世界大戦末期、紛争中の強制労働の使用で論争に巻き込まれた。では、この象徴的な車の起源は何であり、ブランドはどのように存続してきたのだろうか？
ポルシェの歴史に触れてみよう。
フェルディナント・ポルシェ（1875-1951）
1931 年、オーストリア系ボヘミア人の自動車技師フェルディナント・ポルシェがドイツのシュトゥットガルトに後のポルシェAGを設立した。
フォルクスワーゲン
新会社が最初に受けた依頼のひとつは、ドイツ政府からの「民衆のための自動車」、具体的にはフォルクスワーゲン、あるいはビートルのデザインだった。
VWと第三帝国
フェルディナンド・ポルシェは、チーフデザイナーのエルヴィン・コメンダと、ポルシェの息子フェリーを含む選りすぐりのチームと共に、自動車史上最も象徴的な車のひとつを作り上げた。アドルフ・ヒトラーが、シュタット・デス・KdF・ワーゲン（戦後はヴォルフスブルクと改称）のフォルクスワーゲン工場で、このクルマの1台を点検している。
タンクアップ！
1939年、ポルシェはビートルの多くのコンポーネントを使用してポルシェ64を開発した。第二次世界大戦中、ポルシェは駆逐戦車エレファント（写真）をはじめとする重戦車の設計をいくつか手がけた。
奴隷労働問題
同規模のドイツ企業では日常的に行われていたことだが、ポルシェは紛争中、工場で強制労働を行った。フェルディナント・ポルシェは1945年12月にフランスで逮捕され、戦争犯罪の容疑で起訴された。彼は22ヶ月間投獄されたが、息子のフェリーが彼の自由を買い取ることで釈放を勝ち取った。
フェリー・ポルシェ（1909-1998）
1951年にフェルディナント・ポルシェが死去した後、フェリーが経営に乗り出し、ポルシェを戦後の繁栄へと導いた。
ポルシェ 356
ポルシェ自動車ブランドの歴史は、1948年のタイプ356から始まった。最初の市販車はポルシェ・タイプ356 “No.1 “ロードスターだった。この新型車は、1950年に開催された戦後初のベルリン国際自動車ショーでセンセーションを巻き起こした。
ル・マンでのポルシェ
1951年、強化された356 SLは、モータースポーツで有名なル・マンでクラス優勝を果たし、国際的な注目を集めた。
ポルシェ550スパイダー
1953年、ポルシェ550スパイダーはル・マンに参戦。このミッドシップエンジン搭載のロードスターは、その後もモータースポーツ界で華々しい成功を収めるという長い伝統を築いた。実際、ポルシェはモータースポーツの世界に参入して以来、権威ある耐久スポーツカーレースを支配してきた。
悲劇的な連想
悲しいことに、550 スパイダーはハリウッドで最も悪名高い悲劇のひとつ、ジェームズ・ディーンの死と永遠に結びついている。1955年9月30日、この俳優がガソリンスタンドでシルバーのポルシェ550スパイダーとともにいるところを写真に撮られたのは、死亡事故の数時間前のことだった。
ポルシェ 804
ポルシェの成功を決定づけたのは、1962年のフランスGPでのF1勝利だった。ポルシェ804を駆ったアメリカ人のダン・ガーニーが、コンストラクターとしてポルシェにとって最初で唯一のF1優勝を飾ったのだ。写真はドイツGP（1962年8月）のスターティンググリッドです。
ポルシェ911
翌1963年、ポルシェは911を発表した。当初は901と呼ばれたこの高性能ファストバッククーペは、それ以来スポーツカーというジャンルを定義し、今でもポルシェを象徴するベストセラー車のひとつである。写真は1967年式ショートテールクーペである。
ポルシェ904
一方、ポルシェ904は正式名称をポルシェ・カレラGTSといい、ポルシェのレース史に新たな1ページを開き、ル・マンで再び他を置き去りにした。
ポルシェ911タルガ
初代911タルガは1965年9月にフランクフルト国際モーターショーで発表され、1966年に発売された。
地位象徴
60年代が本格化すると、911はジャニス・ジョプリンをはじめとする多くのセレブリティに選ばれるようになった。
ハリウッドレーサー
また、スティーブ・マックイーンのように、競技用としてレースに出場した者もいた。カリフォルニア州のリバーサイド・レースウェイのコース上で立ち止まる姿が目撃されている。
ポルシェ914
VWの伝統に立ち返ったポルシェは、1969年に914を発表した。フォルクスワーゲンとポルシェが共同で設計、製造、販売したこのミッドエンジン・スポーツカーは、タルガトップの2シーター・ロードスターとしてのみ販売された。
ル・マン総合優勝
1970年、ポルシェはル・マンで史上初の総合優勝を果たし、マニュファクチャラーズ世界選手権を制覇した。写真は、優勝したリチャード・アットウッドとハンス・ヘルマンがドライブしたポルシェ917Kだった。
1970年代と1980年代
1970年代から1980年代にかけて、ポルシェは1975年に911ターボ、1976年にフロントエンジンの924を発表。1989年には911カレラ4と911スピードスターが登場し、911はポルシェブランドのアイデンティティを形成し続けるクルマに生まれ変わった。写真は2019年モデルのスピードスターだ。
ボクスターのパンチ力
初代ポルシェ・ボクスターは1996年に登場した。2003年にスポーツ多目的車カイエンが登場するまで、ポルシェ最大の量販車だった。
ポルシェ 100万
また1996年、100万台目のポルシェが7月15日にツッフェンハウゼンの組立ラインからロールオフした。これはシュトゥットガルト警察への贈り物だった。
ポルシェ・カレラGT
その4年後、一般大衆はポルシェ・カレラGTを初めて目にした。2004年に生産が開始された。スポーツカー・インターナショナルは、2000年代のトップスポーツカーのリストでカレラGTを1位に選んだ。
ポルシェ・カイエン
2002年、待望のカイエンが生産ラインから登場した。ポルシェ初のオフロードSUVであり、初の4ドアモデルでもあった。即座に成功を収めた。
ポルシェ・ケイマンS
2005年に発売されたスポーティでエアロダイナミクスに優れたケイマンSは、ポルシェの第2世代および第3世代のボクスター・ロードスターから派生したモデルである。ちなみに、このクーペの名前はケイマン諸島にちなんだものではない。クルマも島々も、ワニの仲間であるカイマンにちなんで名付けられた。
ポルシェ・パナメーラ
新世紀の最初の10年が進み、ポルシェは2009年にパナメーラを発表した。フルサイズのラグジュアリーファミリーモデルとして販売された。
ポルシェ・ボクスター・スパイダー
翌年、ポルシェ・ボクスター・スパイダーは派手なフェイスリフトを施され、たちまちセレブリティや裕福なジェットセッターたちの人気を集めた。
ポルシェ・マカン
2014年、ポルシェファミリーにマカンが加わった。コンパクトなラグジュアリークロスオーバーSUVで、車名はインドネシア語の虎に由来する。
ポルシェ・ミッションE
2015年にコンセプトカーとして発表されたポルシェ・ミッションEは、テイカン＝ポルシェ初の量産電気自動車となった。
ポルシェ・テイカン
販売デビューの2020年には2万台以上のテイカンが納車された。写真は2019年11月20日、AutoMobility LAでワールドプレミアされたTaycan 4Sである。
ポルシェ博物館
ポルシェ・ミュージアムは、シュトゥットガルトにある自動車メーカーの敷地内にある。この施設には約300台の車両が展示されており、その多くは初期のデザインやプロトタイプの貴重でユニークな例である。
ポルシェ 64
ミュージアムの目玉展示のひとつが、ポルシェ64、別名タイプ64である。これは、後にポルシェ社となる会社の最初の自動車と考えられている。実際、戦後の市販モデルのまさにデザインの先駆けである。
すべての始まり
しかし、エッガー・ローナー・エレクトロモービルが誇るべきは、1898年にフェルディナント・ポルシェによって開発された電動馬車だろう。
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