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「スペーシアX」に乗ってみた 新型特急での日光への旅はどんなものに?

「スペーシアx」に乗ってみた 新型特急での日光への旅はどんなものに?

東武の新型特急「スペーシア X」

7月15日にデビューする、東武鉄道の新型特急車両「スペーシア X」。同社のこれまでの特急車両より数段階上のサービスを提供する車両で、日光・鬼怒川エリアへの旅がこれまで以上に快適になります。

鉄道コムでは、6月上旬に開催された試乗会に参加し、そのサービスの内容を一足先に体感しました。新しい特急の旅は、どのようなものとなるのでしょうか。

浅草駅は専用ホームから

「スペーシアx」に乗ってみた 新型特急での日光への旅はどんなものに?

リニューアル後の浅草駅5番ホーム(イメージ・画像提供:東武鉄道)

「スペーシア X」の始発駅は、東武伊勢崎線・日光線系統のターミナル駅である浅草駅です。

浅草駅では、「スペーシア X」の運行開始にあわせ、ホームがリニューアルされています。2017年までは日光・鬼怒川方面の快速・区間快速が発着していた5番ホームを、「スペーシア X」用の発着ホームに改修。木目調のデザインとし、目的地の日光・鬼怒川エリアとのつながりを持たせました。

この試乗会の時点では、5番ホームは工事中のため利用できませんでしたが、「スペーシア X」の運行が始まった際には、当初はこのホームからの発着が基本になるといいます。

入線してきた「スペーシア X」ことN100系は、従来の100系「スペーシア」同様の6両編成。白地に窓回りの黒いアクセントが入る、シンプルながら目立つデザインです。

ちなみに、白い車体は汚れてしまうと余計に目立ちそうですが、東武では他の車両よりも念入りに洗車をしているとのこと。加えて、汚れが目立ちやすい外装であることを考慮し、ボディコーティングも施しているといいます。

それでは、早速車内に入ってみましょう。

6両編成に6種類もの座席を用意

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3~5号車の「スタンダードシート」

「スペーシア X」は、6両編成で座席種類を6パターンも持つという、バラエティに富んだ設備が特徴です。

普通席となる「スタンダードシート」は、3~5号車に設置。一般的な2+2列配置のリクライニングシートですが、背もたれを倒すと座面も傾くなど、かなり快適性に配慮したつくりです。シートピッチ(座席の間隔)は、「スペーシア」と同じ1100ミリ。1000ミリの「リバティ」よりも広くなっています。

テーブルは、座席背面と肘掛け内部の2つ。背面テーブルはノートパソコンを広げられるサイズで、車内でお弁当を食べるのにも十分な大きさです。肘掛け内部のインアームテーブルは、背面テーブルほどの大きさはありませんが、座席を向かい合わせにした際には役立つ装備です。

ちなみに、座席自体は「リバティ」のものの改良型で、コンセントの設置位置はひじ掛けから座席背面に変更。このほか、カップホルダーが背面に設置されました。

5号車の日光・鬼怒川寄りには、「ボックスシート」が2組設置されています。

この座席は、パーテーションによって区切られた半個室。大人2人での利用のほか、片方の座席につき大人と子どもが各1人座ることも可能です。写真では通路から丸見えのようですが、実際に座ってみると、意外とプライベート感が保たれている印象を持ちました。

2号車は、上級クラスである「プレミアムシート」。電動リクライニング式の座席が2+1列で配置され、スタンダードシートよりもゆったりとした空間で移動できます。座席背面には「バックシェル」が装備され、前席がリクライニングしても気になりません。

日光・鬼怒川寄りの先頭車である1号車の座席は「コックピットラウンジ」。「ラウンジ」とありますが、指定席車両の一つです。

座席は、1人席、2人席、4人席と、さまざまな人数に対応。先頭部の1人席は全面展望も可能です。実際に乗ってみると、運転席後ろの窓だけでなく、左右すべての窓から車窓が飛び込んでくる内装で、非常に開放感があります。

浅草寄りの先頭車である6号車の客席は、全てが個室。5室中の4室は、4人用の「コンパートメント」です。

従来の「スペーシア」の設備を引き継いだかのような客室ですが、座席が向かい合わせからコの字型になり、テーブルも折り畳み式となるなど、使い勝手は進化しています。

窓については「借景」を意識したデザインということ。「スペーシア」よりはサイズが小さくなっていますが、走行中の車内で見ると、そこまで閉塞感は覚えませんでした。

そして、運転席に近い1室は、スペーシア Xの最上級席ともいえる「コックピットスイート」。室内の広さは11平方メートルで、東武によると「私鉄特急では最大」だといいます。定員は7人で、「コックピットラウンジ」のようなソファーが設置されています。

こちらも「コックピットラウンジ」のような前面展望ができる空間ですが、室内空間自体は1号車よりも狭いため(それでも十分な広さですが)、どちらかと言うとプライベート感の方が大きい印象。それもそのはず、この個室は「プライベートジェット」をイメージしたもので、「走るスイートルーム」というコンセプトを体現したものとなっています。

ちなみに、この部屋の椅子やテーブルは固定されておらず、利用者が自由に動かすことができます。ただし、いずれも床に対する十分なグリップ感があるので、例え列車が非常ブレーキを掛けたとしても、椅子やテーブルが動いてしまうことはありません。

「スペーシア X」限定のビールやコーヒーを販売するカウンター

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1号車のカフェカウンター「GOEN CAFE SPACIA X」

「コックピットラウンジ」がある1号車には、カフェカウンター「GOEN CAFE SPACIA X」(ゴエンカフェ スペーシアエックス)も設置されています。

このカフェカウンターでは、クラフトビールやクラフトコーヒー、スイーツなどが販売されます。看板商品であるビールとコーヒーは、この「スペーシア X」専用に開発された商品。その他の飲食品も、日光や栃木の食材を用いたさまざまな商品が用意されています。

かつての「スペーシア」では、車内カウンターでカレーなどが販売されていましたが、この「スペーシア X」では、食品はおつまみやスイーツなどの軽食のみ。この列車が日光・鬼怒川という行楽地で向かう列車であるため、目的地に着くまでに満腹にならないよう、あるいは浅草へ帰る際に余韻に浸れるよう、あえて軽めの食品をチョイスしたということです。

価格については、詳細は発表されていないものの、ビールとおつまみの組み合わせでは1500円ほど、コーヒーとスイーツの組み合わせでは1000円ほどになる予定ということです。

また、カフェカウンターの利用は、1号車の「コックピットラウンジ」の特急券を持つ乗客が優先とのこと。その他の車両の利用者は、事前にネット予約で整理券を発行する必要があります。商品の購入は現金は対応しておらず、クレジットカードまたは交通系ICカードのみが利用可能となります。

「スペーシアx」に乗ってみた 新型特急での日光への旅はどんなものに?

前面展望が可能な「コックピットラウンジ」

浅草駅から東武日光駅までは、およそ2時間の道のり。浅草駅を出て、東京スカイツリーを望み、荒川を渡り、都市部から住宅街、そして田園地帯へ……という、これまでの東武特急と同じ風景のうつろいです。

とはいえ、新型車両から見た景色は、どことなく新鮮。「スペーシア」や「リバティ」よりも窓は小さくなっている「スペーシア X」のスタンダードシート・プレミアムシートですが、2列で窓1つだった既存形式に対し、「スペーシア X」では1列につき窓1つという配置に変わったことが理由で、それほど圧迫感や閉塞感はありません。加えて、「景色を見たいのに、前列の人がカーテンを閉めたせいで、存分に見られない……」なんてこともなくなります。

先に紹介した車内設備は、スタンダードシートを中心に試してみましたが、いずれも乗り心地は良好。一番オーソドックスなスタンダードシートでも、「リバティ」では肘掛けにあったコンセントが座席背面に移設されており、使い勝手が向上しました。この座席なら、都心~日光・鬼怒川間のみならず、浅草~春日部間のような短距離でも利用したくなります。

試乗会訪問後に立ち寄った商店では、店員の方が「スペーシア X」を見て「あ、発車した!」と声を上げており、聞くとやはり注目している様子。新型特急としては2017年デビューの「リバティ」以来約6年ぶり、フラッグシップ特急としては1990年デビューの「スペーシア」以来約33年ぶりとなる「スペーシア X」は、地元でも期待度が高まっているようです。

「スペーシアx」に乗ってみた 新型特急での日光への旅はどんなものに?

東武日光駅で顔をそろえた「スペーシア」(左)、「リバティ」(中央)、「スペーシア X」(右)

「スペーシア X」の営業運転開始日は、7月15日。浅草~東武日光・鬼怒川間で、平日は計2往復、土休日は計4往復を運転するダイヤです。当初は「スペーシア X」は2編成のみですが、今後さらに2編成が増備される予定で、近い将来に運転本数も増える予定となっています。

浅草~東武日光・鬼怒川温泉間の大人特急料金は、スタンダードシート利用時が1940円、プレミアムシート利用時が2520円。その他の座席を利用する際は、スタンダードシート料金に加え、「特別座席料金」が必要です。

特別座席料金は、「コックピットラウンジ」の1人用が200円、同2人用が400円など、「ボックスシート」が1室400円、「コンパートメント」が1室6040円、「コックピットスイート」が1室あたり1万2180円となります。

当初はプラチナチケットとなりそうな特急券は、乗車日の1か月前の9時に発売。駅窓口や券売機のほか、6月15日にサービスを拡充するネット予約サービスでの予約が可能です。

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