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トヨタの佐藤CEO、波乱に満ちた就任1年目-EV失速や不正対応

(ブルームバーグ): トヨタ自動車の佐藤恒治社長(54)が就任から1年を迎えた。その間、多くの企業トップが生涯で経験するよりも多くの浮き沈みを乗り越えてきた。

  昨年4月1日の就任直後、佐藤社長は電気自動車(EV)の導入に消極的だと長年批判されてきたトヨタが今後数年内にEVを本格的に導入していくと公言して脚光を浴びた。それから数カ月後には需要の低迷でEVブームの失速が指摘されるようになり、トヨタは逆にハイブリッド車(HV)にこだわってきたことで称賛されるようになった。

  2023年にトヨタが販売・生産台数と株価で過去最高を更新する一方、ダイハツ工業や豊田自動織機などグループ会社の検査不正が発覚。その謝罪や対応にも追われた。

トヨタの佐藤ceo、波乱に満ちた就任1年目-ev失速や不正対応

Toyota Motor President Koji Sato News Conference

  ブルームバーグ・インテリジェンスの吉田達生シニアアナリストは、就任一年目としては「すごく難しい年」だったと思うと述べた。

  佐藤社長は就任直後の会見で、トヨタが26年までにEVを年間150万台販売すると述べた。これは、30年までに350万台のEVを販売し、35年までに排出量を半減させ、50年までにカーボンニュートラルを実現するという従来のトヨタの公約の延長線上にあるものだった。

  こうした考え方は創業家出身で佐藤社長の前任者を務めた豊田章男会長が広めたものだ。世界的なEVシフトは一朝一夕には実現せず、その間、顧客にHVや水素、内燃機関を含む幅広いパワートレインの選択肢を利用できるようにすべきだとしている。トヨタは高級車ブランドであるレクサスを、中国のBYDや米テスラといったEVの世界的なトップランナーに追いつくための広範な計画における先鋒(せんぽう)として位置付けている。

  また、次世代の有力な技術とみられている全固体電池を開発し、車体などの大型部品を鋳造プレスで一体成型する「ギガキャスト」を含めた画期的な製造方法の開発を追求する戦略についての佐藤社長による詳細な説明も示唆に富んでいた。

  BIの吉田氏は「これを言ったから競争優位が失われる、損なわれる、弱くなるとは思ってないのだろう」とし、トヨタの自信のあらわれではないかとの印象を持ったという。

  トヨタは昨年、グループ全体で世界で1100万台以上を販売し、独フォルクスワーゲンを抑えて4年連続でトップの座を守った。

  しかし、昨年末に発覚したダイハツの新たな不祥事で複数車種の生産ラインが一時、停止を余儀なくされたことでその勢いは揺らいだ。この問題を受け、佐藤社長は、グループ全体の再編を視野に入れながら、上層部の再教育などを行うと述べた。

トヨタの佐藤ceo、波乱に満ちた就任1年目-ev失速や不正対応

Toyota Motor CEO Koji Sato News Conference After Certification Revoked for 3 Daihatsu Cars Due to Safety Scandal

  24年は多くの点で好調だった昨年から一転、トヨタにとってやや精彩を欠く年になると投資家は予想している。新型コロナウイルス禍以降の好況は一段落して新しい常態に落ち着き、サプライチェーンも安定すると見込まれている。

  需要が低迷する中、市場が注目しているのは世界最大のEV市場である中国での普及を促進するための中国政府の政策対応と、米国の政治サイクルだ。今年の米大統領選でトランプ氏が当選すれば、EVか否かにかかわらず、トヨタなど外国メーカーの自動車を買おうとする米国の消費者の意欲に深刻な打撃を与える可能性がある。米国はトヨタにとって大きな市場であり、売り上げの約35%を占めている。

  トヨタを巡る経営環境が変化する中、これまで以上に佐藤社長の真価が問われることになりそうだ。

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