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「スペーシア」の反逆が始まった? Nボックス帝政に風穴を開けるか虎視眈々、夏商戦前バトルの行方とは

スペーシアの販売台数が急増

 全国軽自動車協会連合会は、日本国内で販売されている軽自動車に関するデータを毎月発表している。そのなかで、2024年2月の軽四輪通称名別新車販売台数に興味深い結果が現れた。

【画像】えっ…! これが軽自動車の「2月 新車販売台数」です(計16枚)

 前月まで圧倒的な台数でトップを独走していたホンダ・Nボックスに、強力なライバルが現れたのだ。その名はスズキ・スペーシア。Nボックスと同じカテゴリーのいわゆる「トールワゴン」である。

 Nボックスの1万6542台に対し、スペーシアは1万5066台である。ちなみに1月のデータでは、

・Nボックス:1万7446台

・スペーシア:1万1316台

となっている。

 つまり、スペーシアの販売台数は1月から2月にかけて

「33.1%増加」

したことになる(Nボックスは5.2%減少)。これは実に大きな伸びである。

フルモデルチェンジ後の比較

「スペーシア」の反逆が始まった? nボックス帝政に風穴を開けるか虎視眈々、夏商戦前バトルの行方とは

Nボックス(画像:本多技研工業)

 スペーシアの販売台数の伸びは、1年前の2023年2月の数字と比較するとさらに顕著だ。

・Nボックス:1万9652台

・スペーシア:9790台

である。要するに、両者はまったく比較にならなかったのである。ちなみに、Nボックスは2023年10月6日にフルモデルチェンジしている。一方、スペーシアのフルモデルチェンジは2023年11月22日である。

 これらを総合すると、フルモデルチェンジした両車と比較した場合、スペーシアのほうがユーザーからの評価が高いことが推測できる。しかし、

・外観デザイン

・インテリアのディテール

・メカニカルスペック

・安全性能

・その他のスペック

を比較すると、両車に明確な違いは見当たらない。

 真剣に購入を検討している人にとっては大きな違いがあるのかもしれないが、傍観者にとっては、販売台数に大きな影響を与えるほどの決定的な違いがあるとは思えないのである。

価格・生産遅れが原因説

「スペーシア」の反逆が始まった? nボックス帝政に風穴を開けるか虎視眈々、夏商戦前バトルの行方とは

2024年2月 軽四輪車 新車販売台数 前月比(画像:全国軽自動車協会連合会)

 唯一、おそらく最大の動機になると筆者(剱持貴裕、自動車ジャーナリスト)が感じたのは、両車の

「価格差」

である。ベーシックなNボックスの価格は、一番安いグレードで約164万円。高いほうは約188万円である。上級グレードのNボックスカスタムになると、一番安いもので約184万円。最も高価な最上級グレードは約236万円である。

 対してスペーシアは、ベーシックグレードの最も安いもので約153万円、高いほうで約182万円。上級グレードのスペーシアカスタムは安いもので約180万円。最も高いグレードで約219万円である。ディーラーが提示する実売価格はこの数字とは多少異なるかもしれないが、スペーシアがNボックスよりおおむね10万円以上安い。

 クルマ購入の決め手は人それぞれだ。ブランド選好がなく、基本スペックや安全装備、その他の装備に大きな差がなければ、消費者がより安いクルマに流れるのは自然なことだ。

 さらに、公式には発表されていないが、インターネット情報サイトの“クチコミ情報”によると、Nボックスは2024年初頭の能登半島地震の影響で、特に1月と2月の生産がやや遅れたという。

 3月には生産自体は改善されたというが、どこかの時点で遅れが生じていたことは間違いない。そうなると、2月にクルマの購入を予定していた人たちのなかで、

「Nボックスの納車が遅れるならスペーシアにしよう」

という選択がなされたことは想像に難くない。そうしたさまざまな要因が、2024年2月の販売台数の差につながったのだろう。

夏商戦での“隠し球”待ち

「スペーシア」の反逆が始まった? nボックス帝政に風穴を開けるか虎視眈々、夏商戦前バトルの行方とは

2024年2月 軽四輪車 新車販売台数 前年同月比(画像:全国軽自動車協会連合会)

 Nボックスとスペーシアはともに2023年後半にフルモデルチェンジした最重要モデルだ。おそらくこれから夏にかけて、新たなスペシャルモデルや限定モデルなど魅力的な商品戦略が展開されるだろう。ホンダは特に、販売実績を急速に伸ばしているスズキの今後の戦略を懸念しているはずだ。

 ホンダにとって、スズキの猛追を招いた生産遅れは、今後も抜本的な体制改善が必要な深刻な問題である。一方、スズキはディーラーレベルでの販売戦略を強化しなければ、現在の勢いは維持できないだろう。

 前述したように、メーカーブランドに特にこだわりのない顧客にとって最も魅力的な条件が販売価格だとすれば、ホンダに必要なのは、よりお得感のある限定モデルの投入である。

 この点で、ディーラーレベルでの販売価格は、最終的に決定される最も重要なトップシークレット事項である。ホンダとスズキは、4月以降の商戦、とりわけ夏のボーナスシーズンに向けて、どのような“隠し球”を用意しているのか。そして、それが今後の販売成績にどのような影響を及ぼすのか。

 スペーシアの33.1%増に続く2月は、スズキ・ワゴンRが27.1%増の7603台を販売した。また、日産デイズも21.4%増の5637台となった。これらの販売増は、個々のクルマの魅力というよりも、ディーラーの努力によるものだろうと推測できる。

 ちなみに、スズキ・ジムニーの3755台(51.8%増)も純粋な台数だけなら目を見張るものがあるが、ユーザー層が明らかに異なるため単純比較はできない。

 なお4月1日に発表された、3月の軽四輪乗用車台数(速報)は

・スズキ:5万2397台(前月比123.3%)

・ダイハツ:5257台(91.0%)

・三菱:8520台(133.9%)

・スバル:231台(240.6%)

・ホンダ:2万5263台(119.2%)

・マツダ:3874台(131.5%)

・日産:1万8951台(113.1%)

・トヨタ:821台(387.3%)

・その他:4台(50.0 %)

・合計:115318(120.3%)

となった(通称名別は未発表)。

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