(ブルームバーグ): 成長を続けてきた電気自動車(EV)市場に鈍化の兆しが見える中でも、国内自動車メーカーの多くは電動化に向けた長期の投資計画は堅持する方針だ。これまで積極的な姿勢を見せていた欧米勢が相次いで見直しを余儀なくされているのとは対照的な様相となっている。
日産自動車のスティーブン・マー最高財務責任者(CFO)は8日の決算会見で、EVなどの電動車への移行のスピードは消費者が決めるとした上で、電動化は一直線で進むわけではなく「アップダウンがあると思っている」と話した。
ただ、長期的には電動車は拡大していくと考えており、日産は必要な投資を行って顧客に適切な商品を提供するべく取り組んでいくと話した。同社は2021年11月に発表した中期経営計画で、電動化の加速に向け5年間で2兆円を投じるとしていた。
SUBARU(スバル)の江森朋晃専務執行役員も、電動化対応で30年ごろまでに約1兆5000億円を投資するとした同社の方針は、EV市場がいったん成長の踊り場に来ることは織り込んだ上で策定したと説明した。その上で、市場の状況に応じて柔軟に対応していく考えのため、投資の規模感を多少変更する可能性はあるが「大きな考え方については変わりがない」と続けた。
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一方、足元では高価なEVを購入可能な富裕層の需要が一巡したことなどを受けEV市場では販売増加ペースが鈍化しており、一部の欧米メーカーは計画を見直ししつつある。
米フォード・モーターや米ゼネラル・モーターズは電動ピックアップの生産縮小あるいは生産開始時期を延期したことが明らかになっている。仏ルノーはEV部門「アンペア」の新規株式公開(IPO)を取りやめた。
EVブームをけん引してきた米テスラも24年の販売台数の伸びは鈍化すると警告。テスラ社内ではレイオフの懸念も浮上している。同社の株価は年初来で2割超下げており、ハイブリッド車(HV)販売が好調なトヨタ自動車との時価総額の差も縮小しつつある。
ぶれない方針
英フィナンシャル・タイムズのfDiマーケットのデータによると、16-22年に打ち出されたEV関連の海外直接投資額の上位20社に入った日本勢はトヨタ、ホンダ、パナソニックホールディングスの3社だけだった。
EV一辺倒ではなく、多様なパワートレインを提供する「マルチパスウェイ」戦略を掲げるトヨタの宮崎洋一CFOは今月の決算会見で、充電インフラを必要としないHVは「現実解」として消費者の支持を集めていると話した。昨年約340万台だったHVの世界販売は目標を1年前倒して25年にも500万台まで拡大する可能性があるという。
Toyota Unveils New Prius as Hybrids Lose Luster to Battery EVs
ファー教授は「トヨタがそうなるのではないかと心配した時期もあった。しかし今、消費者の間ではEVの普及と熱狂が減速しているのを目の当たりにしており、これは賢明な戦略なのかもしれない」と述べた。
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