仏RFIの中国語版サイトは11日、「新興自動車大国の中国」とする独紙ディ・ベルトの記事を取り上げた。写真は斉魯モーターショー。 仏RFIの中国語版サイトは11日、「新興自動車大国の中国」とする独紙ディ・ベルトの記事を取り上げた。 記事はまず、「これまでのところ、ドイツの道路で中国メーカーの車を見かけるのは数台だけだ。そして欧州のブランドは世界市場で優位に立ち続けている。しかし、中国は急速に追い上げている。ある研究はその速さを示している」とした。 記事は、欧州連合(EU)欧州委員会のフォンデアライエン委員長が「世界市場には今、安価な中国製電気自動車(EV)があふれている」とし、中国からのEV輸入に関する反補助金調査を正式に開始したことに触れた。 その上で、「フォンデアライエン氏の警告を受け、多くの関係者が驚いたのは、EU諸国で登録された中国車の割合が増えているからだ。しかし、中国国内における欧州メーカーの市場シェアと比較すると、それらは依然として非常に小規模だ」と指摘した。2022年の欧州市場における中国車のシェアはわずか1.3%で、21年は0.4%、20年は0.1%だった。欧州市場における欧州車のシェアはこの3年間ずっと70%を超えている。中国市場では、22年の中国車のシェアは44.8%で、欧州車のシェアは19年の約29%から22年は約23%に低下している。 記事によると、中国の自動車メーカー、吉利汽車(ジーリー)傘下のボルボを除くと、ドイツの道路で中国車を見かけることはまだほとんどない。その中でもドイツで「最強」の中国ブランドは、中国の自動車大手、上海汽車(SAIC)傘下のMGで、1~8月の新規登録台数は約1万4000台。これはシュコダの月間販売台数とほぼ同じだ。中国の市場リーダーである比亜迪(BYD)の今年に入ってからの販売台数はわずか2700台で、ドイツではほとんど存在感を示していない。しかし、これらの数字は急速に変化する可能性があり、それに伴い自動車業界における世界的な勢力分布も変化する可能性がある。 投資銀行UBSのアナリストらは、30年に世界で販売される新車の3台に1台が中国で生産される可能性があると予測している。老舗メーカーの市場シェアは現在の81%から58%に低下することになる。 中国車が参入できないのは、中国車に対して厳しい貿易障壁を設けている米国だけだ。その一方で、外国メーカーは世界最大の自動車市場である中国から追い出されるだろう。 予測によると、30年には、中国のすべての新車のうち、海外の競合他社が生産するものは14%にとどまり(それらも中国国内で生産される)、それらとは別に6%がテスラ車になるという。 記事は「この発展の原動力の一つとなっているのが中国の政治だ」とし、「中国は何年も前に自動車輸出産業を構築するという目標を掲げた。一方で、中国は世界の他の地域にはまだ存在していないEV生産のための完全な産業システムを構築しているため、電動化が中国を助けている」と指摘した。 記事によると、中国の生産コストは西側のライバルに比べて格段に低い。EVに関しては、メーカーは一部の老舗企業よりも技術的に進んでいる。そして、より低い価格と組み合わせることで、チリ、ペルー、エクアドル、エジプト、サウジアラビアなど、中国からの輸入に抵抗しない国々において明らかな競争上の優位性がもたらされる。 これらの市場は、ロシアと比べると比較的小さい。ウクライナ戦争開始以来、西側メーカーはロシアへの納入を停止している。フォルクスワーゲンやルノーなどはロシア国内の工場を手放し、ロシアにはもはや独自の自動車メーカーは存在しない。そして今、中国は隣国に出現した空白を埋めようとしている。(翻訳・編集/柳川)
(写真=CAR and DRIVER) この記事は2023年9月30日に「CAR and DRIVER」で公開された「ヤリスクロス9カ月連続首位をハスラーがストップ! 8月SUV販売ランキング(23年8月の軽自動車を含むSUV車販売登録ランキングTOP20)」を一部編集し、転載したものです。 先月まで8カ月連続の首位を維持してきたトヨタ・ヤリスクロスだったが、8月のSUVセグメント首位に立ったのはKカー、スズキ・ハスラー。先月、前年同月比150%の販売で2位に浮上していたが8月の販売で先月同様に同154%、7,000台以上と好調な販売で1位を奪取した。 また、3位にはトヨタ・ライズが先月の7位から、4位にはKカーのタフトが同じく18位からランクアップ。コンパクトカーの伸長が目立った8月のSUVマーケットとなっている。 先月4位になり5,600台を登録したランドクルーザーは今月も5位、4,111台登録と好調。また、SUBARUクロストレックが1,335台を販売し、19位にランクインした。 いわゆる3ナンバーモデル、普通乗用車は先月に引き続き好調で、前年同月比で124.5%、120,052台の販売となった。(小型乗用車は同109.2%、軽乗用は121.8%) 普通車の中心となるSUVマーケットは引き続き好調で、同118.1%(本誌調べ)。 ■カー・アンド・ドライバー調べ (※SUVモデルはヤリス、カローラ、クラウンなどシリーズとは別ブランドとしてカウント) Writer:カー・アンド・ドライバー編集部 (提供:CAR and DRIVER)
「未来の車」に知恵とパワー グローバル・コラボレーション 2023年世界ICV大会の室内展示エリアでスタッフの説明を聞く来場者。(9月21日撮影、北京=新華社記者/鞠煥宗) 【新華社北京10月4日】「パワーもあるし、見た目もいいし、耐久性もある。もちろん、インテリジェントでなければ」、現在、クルマの評価基準には明らかな変化が起こっており、人々はますますインテリジェントがもたらすドライブ体験を重視するようになっている。このほど北京で開催された2023年世界インテリジェントコネクテッドビークル(ICV)大会では、現在、電気化、インテリジェント化、コネクテッド化が自動車産業を変革しつつあり、ICVがグローバル・コラボレーションの重要分野になっているという明確なメッセージが発せられた。 「未来の車」であるICVは現在、世界的に「加速走行」をしている。業界内では、ICV産業を発展させるには、各国企業の科学技術革新の主体としての役割を十分に発揮させ、川上と川下の企業の協調と連動を強化し、基礎研究、技術開発、産業のコラボレーションと市場の応用における産業協力を推進し、ICV産業の発展における新たなエネルギー、新たなエンジン、新たな活力を引き出す必要があると考えられている。 中国の自動運転開発企業、小馬智行(ポニー・エーアイ)はこのほど、北京大興国際空港から北京経済開発区までの自動運転シャトルテストを開始することを発表し、北京市のこのルートでテストを行う許可を得た最初の企業となった。北京首都空港では、大興空港と首都空港の自動運転シャトルサービスが開通し、自動運転車両による一般の道路での歩車混合交通が本格的に実現した。 「ICVは、将来さまざまなポジティブな要因をもたらす可能性がある」チューリング賞受賞者のホイットフィールド・ディフィー氏はこう話し、交通コストはさらに下がり、安全性が大幅に上昇し、都市内の交通効率が向上し、交通がよりフレキシブルで、スピーディーになり、人々の移動がより便利になるだろうと述べた。 BMWグループの開発担当取締役を務めるフランク・ウェーバー氏は、BMWは北京、上海、瀋陽、南京に四つの研究開発革新基地を持っており、これらはドイツ以外ではBMW最大の研究開発システムを構成しており、研究開発人数が3200人を超え、先端科学技術で持続可能なデジタル化された自動車産業をつくっていると述べた。 「ソフトウエアは、未来の電気自動車とスマートカーのコアになるだろう。NVIDIAは、インテリジェントドライブとインテリジェントコクピットの二つの次元に注目している」NVIDIA中国エリア自動車事業部社長の劉通(りゅう・つう)氏はこう話し、自動車の膨大なエコシステムの中で、NVIDIAは現在1チップ当たり254TOPS(毎秒1兆回)の演算力を提供しており、2024年までに次世代チップの1チップ当たりの演算力を2000TOPSに引き上げ、次世代の自動運転のために技術的な準備を整えていくと述べた。 理想自動車の李想(り・そう)董事長は「インテリジェント化は企業がずっと模索してきた重要な方向だ」と話し、インテリジェント化の核心になっているのは、新しい技術で物理世界の問題を解決したいという願いだと述べた。 世界ICV大会の組織委員会は、今回の大会では、産業チェーンの川上と川下のトップ企業が集まり、世界のICV産業の質の高い発展をハイレベルに後押ししていると述べた。 大会では世界の自動車メーカーと業界団体に関係する「世界のインテリジェントコネクテッドビークルの商用化の推進に関するコンセンサス(北京)」が採択された。中国自動車工程学会常務副理事長兼秘書長の張進華(ちょう・しんか)氏は次のように説明した。会議に出席した各当事者は五つのコンセンサスに達した。自動車のインテリジェント化モデル転換で新たなモビリティー革命を迎え、モビリティー需要を導きとして商業的応用を推進し、業界を越えたコラボレーションで新しいタイプのネットワーク化した産業エコシステムを構築し、コネクテッド化の応用を加速させて自動車・道路・クラウドの一体化発展をサポートし、手を携えて産業の発展を支える法規環境を着実に整備していく。
レクサス300e バージョンL/価格:685万円 Photo by Hiroya Yamagami レクサスのBEVはオールニューのRZだけではない。UXベースの300eも各部の改良で大幅に実力が向上。航続距離が367kmから512kmに一挙に伸び、走りと装備も改良された。良品である。 航続距離が従来比で約40%増で512km 開発陣のUXにかける強い思い ジェントルな存在感のため目立たないが、トヨタ系で初の市販BEVは、このレクサスUXである。2020年秋に抽選販売され、2021年2月からは通常販売されている。 当初は54.4kWhのリチウムイオン電池を搭載し、満充電からのWLTCモード航続距離は367km。正直なところ、少々物足りない感があった。だが先日リファインを実施して新開発の72.8kWh電池パックを搭載し、航続距離は一挙に512kmまで伸びた。実に従来比で約40%増である。これならファーストカーとしても十分な性能といえる。BEV技術は日進月歩とはいえ、開発陣のUXにかける強い思いの現れであることは間違いない。 改良点は航続距離だけではない。上質ですっきりと奥深い走りを深化させたほか、カーブ速度抑制機能や床下透過表示機能を追加した運転支援と予防安全技術を採用。音声認識機能を備えたマルチメディアシステムも組み込んだ。満充電時に約2.5日の電力供給(400W時)を可能としたV2H対応もプラスポイントだ。 改良型は下山テストコースで徹底的な走り込みを行い、ステアリングやサスペンションを最適化。足元は225/50R18(ミシュラン)と7Jアルミの組み合わせ 改良版は12.3インチの大型タッチディスプレイを採用。同時に直感的に操作可能な最新システムとしコネクティッド性が向上。ステアリングはスッキリとした操舵フィール。ワインディング路を気持ちよく走れる バージョンLは本革シート標準。パッケージングは前席優先。大人4名が無理なく乗れるが、後席はややタイトな印象。乗り心地はしなやか。速度/路面状況を問わず快適性はハイレベル レクサスUX300eリアシート ラゲッジスペースはクラス平均。実用性高水準 レクサスUXは想像以上に大きな進化 “BEVっていいな”と思わせる完成度 走り出すと、徹底したノイズクリーニングによる静粛性と、滑らかな走りに感心した。まさにレクサスらしいドライブフィールに仕上がっている。150kW/300Nmのモータースペックは変わってないが、微妙なアクセルワークへの応答性が増し、踏み込んだときにパッと前に出る感覚がより力強くなっているのも好印象。とくにスポーツモードの走りは気持ちいい。アクティブサウンドコントロール(ASC)が装備されており、アグレッシブに走るとサウンドのピッチと音圧が上昇するようになっていた。 ...
米ビッグ3、賃上げよりEVが足かせに 米3大自動車メーカーは従業員の要求にどこまで応えられるのか。それを左右する要因の一つは、消費者がいつ電気自動車(EV)に乗り換えるかだ。 全米自動車労働組合(UAW)によるストライキは29日で3週目に入り、さらに拡大する可能性がある。自動車メーカー側はUAWの要求は受け入れられないとしており、交渉に進展の兆しはほとんど見られない。 ジョー・バイデン米大統領はストの現場に現れてUAWへの支持を表明。一方、メーカー側には競合である米EVメーカー、テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)が援護に回った。同氏は自身のソーシャルメディア「X」で、40%の賃上げと週32時間労働の組み合わせは「GM(ゼネラル・モーターズ)、フォード(・モーター)、クライスラーを高速で経営破綻に向かわせる確実な方法だ」と述べた。 だがより大きな破綻リスクは、マスク氏が開拓したEVによってもたらされる。デトロイトの3社が生産している従来のピックアップトラックやSUV(スポーツタイプ多目的車)は、UAWの要求の大半を吸収できるだけの利益を出しているが、生産を始めたばかりのEVは、交渉中の要件どころか現在の賃金さえ捻出できていない。 UAWの直近の要求内容は不明だが、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は先に、UAWが契約期間の4年間で30%台半ばの賃上げを求めていると報じた。複利効果で実質の賃金はもっと上がるかもしれないが、35%の引き上げは各社の年間営業コストにそれぞれ約20億ドル(約2990億円)、つまり売上高の1%強を上乗せすることになる。影響が最も大きいのは、UAWの組合員数が最も多いフォードで、国外市場の規模が大きい欧州系ステランティスへの影響は最も小さい。 当然ながら、UAWが要求しているのは賃上げだけではない。ウェルズ・ファーゴの分析によれば、UAWが当初提示していた条件で最も負担が大きいのは、週32時間の労働に40時間分の賃金を支払うというものだった。マスク氏が指摘したのもこの点だ。だがこの異例の条件は、実際の要望というより、交渉上の戦術と見た方がいいかもしれない。確定給付型年金に戻すよう求めているのも同じ理由かもしれない。 組合員にとって賃上げの次に大事なのはおそらく、生活費の上昇に応じて賃金を引き上げる生活費調整と、階層別賃金体系の廃止だ。ウェルズ・ファーゴによると、これらは各社にとって負担増となるが、基本給引き上げほどではない。つまりこの要件を飲んでも、影響はおそらく大きいものの深刻というほどではなく、業界の営業利益率をせいぜい2ポイント押し下げる程度だろう。 EVの影響はこれよりはるかに大きいかもしれない。EV部門を分割したフォードの決算を見れば明らかだ。4-6月期(第2四半期)の「モデルe」事業は、「F-150ライトニング」と「マスタング・マッハE」の1台当たり10ドルの売り上げにつき6ドル近い赤字だった。生産台数が増え、2025年に第2世代のEV生産が始まれば、利益は改善するはずだ。それでも、大手3社のEVが従来品と同程度の収益性を達成する見通しは立っていない。 テスラが示したように、EVの利益率を改善する近道は中国を経由することだ。フォードは中国の低コストのバッテリー技術を採用しようとしているが、米政府の反対に直面している。駆け引きのつもりなのか、同社は35億ドルを投じてミシガン州に建設中のバッテリー工場の施工を中断したと明らかにした。政府は、中国企業との提携を理由にフォードを新たなEV向け税控除から除外するかどうかをまだ判断していない。控除はサプライチェーン(供給網)に中国が含まれていないことが適用条件となる。 フォードはコストを抑制するために交渉しているが、大きな未知数は、大手3社が実質的に独占しているピックアップトラックとフルサイズSUVの分野で、米国の消費者がどれくらい早くEVを受け入れるかだ。どちらも始まったばかりだ。F-150ライトニングの販売台数は、1~8月のFシリーズ全体の2%だった。ニッチ市場に特化した唯一のEV新興企業リビアン・オートモーティブは、今年の生産台数が5万2000台にとどまるとの見通しを示した。テスラもまだ電動ピックアップトラック「サイバートラック」を発売していない。 現在UAWと交渉している契約が切れる4年後には、ビッグ3にどれくらい余力が残っているかがもう少しはっきりするかもしれない。交渉がますます政治性を帯びる中、実現の可能性は高くないとはいえ、取りあえず最も合理的な着地点はインフレに連動した賃上げに気前よく利益配分を上乗せすることだろう。その結果パイがどうなるにしろ、公平に分配されるだろう。
中国で何年も販売不振に陥っていた米自動車大手フォード・モーターに、電動化の波に乗って苦境を脱するチャンスが訪れた。 同車は米電気自動車(EV)大手テスラに倣い、販売代理店を通さず消費者に車両を直接販売する方式を2020年ごろに導入した。さらに、疾走する馬をかたどった象徴的なエンブレムを冠した電動SUV(スポーツタイプ多目的車)「マスタング・マッハE」を発売した。同社の幹部らはこれがテスラのEVの強力な対抗馬になるとみていた。 それから3年後、フォードは世界最大の自動車市場である中国でいまだに「負け組」から抜け出せず、中国戦略を再び見直す必要に迫られている。同社は8月、直販事業から撤退した。マッハEの売れ行きは芳しくなく、今年に入ってからの月間販売台数は数百台にとどまり、テスラや多くの地場メーカーの数万台には遠く及ばない。 フォードの昨年の中国市場でのシェアは2%で、卸売りベースの販売台数は2016年比で61%減となった。フォードにとって中国は、販売台数が北米や欧州に次いで3番目に多い地域だが、収益面では長年足かせとなっている。フォードの中国事業は昨年、約6億ドル(約895億円)の赤字となった。 フォードの中国事業に詳しい複数の関係者は、マッハEに中国語名を付けなかったり、EV市場の競争がどれだけ激しくなるかを過小評価したりするなど、マーケティング戦略と販売戦略に問題があると指摘する。また、直販店導入の遅さなど、実行面での問題もあるという。しかも、マッハEの同価格帯の競合車にはマッハE以上の性能を備えている車もあった。 コンサルティング会社シノ・オート・インサイツの創業者、トゥー・レ氏は「フォードの中国でのEV戦略車はマッハEだった。それが通用しなかった時点でお手上げとなった」と述べた。 フォードの広報担当者は、EV事業の強化に向けて現地仕様のEVを開発したり合弁パートナーと連携したりしていると述べた。また、同社には「新たな計画に軸足を移せるだけの機動力と決断力がある」とした。 フォードのジム・ファーリー最高経営責任者(CEO)は、中国事業の焦点を商用車に絞り、支出の削減や資産の軽量化に取り組み、中国を輸出拠点として活用していく予定だと述べている。同社は中国で先ごろ開催された自動車ショーで、「エクスプローラー」などのアウトドア車をアピールしていた。 ファーリー氏が中国事業の戦略見直しに動いた背景には、同氏の前任者らが高い目標を掲げながらも未達に終わったことがある。 フォードは米国でも中国とEVに関する問題に直面している。同社はミシガン州の新バッテリー工場について議会から厳しい追及を受けている。同工場では、EV向け電池で世界最大手の中国・寧徳時代新能源科技股(コンテンポラリー・アンペレックス・テクノロジー、CATL)の技術支援を受けて電池を生産する予定だった。フォードは25日、競争力のある操業が可能だと確信できるまで、建設工事を停止して工場への支出を制限すると発表した。 フォードのマッハEでの苦戦は、中国で事業を展開する外国企業への教訓となる。機転が利く中国ブランドは、最先端技術を駆使していることも多い魅力的な製品を迅速に提供しているが、外国の有名ブランドは、たとえマスタングのような象徴的ブランドであっても、もはや市場で一定の地位が自動的に保証されることはない。 中国勢にシェアを奪われた欧米自動車メーカーは方向転換を図っている。中国最大の外資系自動車メーカーであるドイツ自動車大手フォルクスワーゲン(VW)は、EVの研究・調達センターの新設や地場企業との提携に数十億ドルを投じる計画だ。米自動車大手ゼネラル・モーターズ(GM)は合弁相手の上海汽車集団(SAICモーター)と共同で、新プラットフォームをベースにしたEV15車種を2025年末までに中国で発売する目標を掲げている。 既に中国から撤退したブランドもある。欧米自動車大手ステランティスの「ジープ」は、販売台数の減少に伴い中国での生産を終了し、輸入車のみの販売に切り替えた。 フォードのファーリー氏は5月、同社は中国事業を継続するが、サービス対象者は限られるだろうと述べた。 マッハEはフォード社内で、テスラに対抗できるSUVと考えられていた。事情に詳しい複数の関係者によると、フォードの市場調査では、マッハEは中国でテスラのSUV「モデルY」の直接の競合車になるとの見通しが示された。 フォードはまた、EVの販売方法に関してテスラを参考にした。テスラは車両を顧客に直接販売するビジネスモデルを確立し、中国のEVブランドの多くも同社に追随していた。 自動車メーカーが直販を採用すれば、顧客との関係深化、販売関連データの取得拡大、価格設定の自由度向上につなげることができる。だが、販売台数が少なければ、直販チャネルの運営はコストがかさみかねない。GMも「ビュイック」と「キャデラック」のEVの一部を中国で直接販売している。 フォードは2020年、新たな直販ネットワークの運営を担うEV子会社を上海近郊の南京に新設した。また、EV技術の研究開発に専念する数百人のエンジニアも採用したと、事情に詳しい関係者らは述べている。 フォードは2021年、同社初の直販車となるマッハEを26万5000元(約540万円)で発売した。さらに、中国でマスタングの生産を開始し、こちらも初の取り組みとなった。 しかし、その時すでにEV市場では激しい競争が繰り広げられていた。マッハEが発売された週に、吉利汽車傘下のEVブランド「ジーカー」や小鵬汽車(シャオペン)といった中国ブランドが同価格帯のEVを発売した。テスラはすでに中国での自動車生産を始めており、21年には上海で生産したモデルYの現地向け納車を始めた。 ...
(写真=CAR and DRIVER) この記事は2023年9月19日に「CAR and DRIVER」で公開された「誕生50周年を祝う日産キャラバンの特別仕様車が登場」を一部編集し、転載したものです。 日産が人気1BOX車のキャラバンの早寿を記念する特別仕様車「50th Anniversary」を発表。ボディカラーに専用色のカシミヤグレージュを設定し、ブラックのアクセントパーツを随所に採用。販売は2024年3月までの期間限定 日産自動車は2023年9月13日、人気1BOX車のキャラバンに特別仕様車の「50th Anniversary」を設定し、本年10月10日より発売すると発表した。 車種展開および車両価格は以下の通り。 50th Anniversary バン2WDロングボディ ガソリン:348万3700円 50th Anniversary バン2WDロングボディ ディーゼル:415万1400円 50th ...
テスラの価値は? 決めるのはあなた 米電気自動車(EV)メーカーのテスラのことが好きな人も嫌いな人も、同社の評価が自動車製造とはあまり関係がないという点では意見が一致するかもしれない。 EVの先駆者であるテスラの価値は、株式市場で最も関心が高い問いの一つだ。1日当たりの売買高が他の米国株を上回る日が多いことからもそれが分かる。価格を巡って意見が分かれることが売買の大きな要素となっている。 データ会社バンダ・リサーチによると、年初来の取引日のうち92%で、個人投資家の資金が最も多く集まった米国株はテスラだった。一方で、別のデータ会社S3パートナーズのデータによると、テスラは空売り残高が現在約210億ドル(約3兆1400億円)と、こちらも米国株でトップだ。 テスラが7-9月期(第3四半期)の納車台数を発表すれば、同社の評価を巡って多くの見解が飛び交うことになりそうだ。今年値下げを実施し、アナリストが同社の利益予想を引き下げたにもかかわらず、株価は堅調に推移している。 この議論に決着をつけられるとは思わないが、争点の一つに方を付ける手助けはできる。その一つとは、テスラは自動車メーカーではなくテック企業として評価されている、というものだ。 同社の時価総額が8590億ドルで、自動車業界の世界最大手で時価総額トップのトヨタ自動車の3倍以上であることを踏まえると、これは当然のことに思えるかもしれない。だが投資家は、こうした比較を見慣れているからといって、それが奇妙であることに目をつぶるべきではない。自動車でもうけている会社が、その価値の多くを他のものから得ているのは奇妙なことだ。 その価値とはどれくらいか。割引キャッシュフロー(DCF)法で計算してみよう。テスラの財務を単純化したモデルを作成し、同社の見通しに関するさまざまな仮定に基づいて理論的な企業価値を算出した。この数字に貸借対照表の現金(テスラの場合、現在230億ドル)を加えたものが、推定市場価値となる。 主な変数は、2030年の新車販売台数、現在の価値に換算したその平均販売価格、そこから得られる利益から営業費用を差し引いたもの、資本コスト、つまり資金調達の平均支払利息、さらに、自動運転タクシー「ロボタクシー」のような潜在的な自動車事業の価値だ。 最後の仮定は取りあえず脇に置こう。テスラの中核的な自動車製造事業の価値を1兆ドル超と仮定することもできるが、売上高と利益率をかなり強気に見積もる必要があり、現実的ではない。同社が値下げによって成長を追求したことから分かるように、販売台数の最大化と利益率の最大化はトレードオフの関係にある。 数字で見てみよう。イーロン・マスク最高経営責任者(CEO)は以前から、30年までに年間生産台数を2000万台にすると表明してきた。首位のトヨタの販売台数が昨年1050万台だったことを踏まえると、これは相当に野心的な目標だ。創業120年の米フォード・モーターは420万台だった。マスク氏の言葉通りなら、テスラは裕福な地域にも貧しい地域にも訴求できる世界的な大衆車ブランドになる、ということだ。 テスラがどのような企業になり得るかを示す最良の指針は、やはりトヨタだろう。トヨタの23年3月期連結売上高は1台当たり約2万8000ドルだった。この数字と、営業利益率を多めに10%と見積もり(大衆車メーカーでは1桁が一般的)、われわれのモデルに当てはめると、30年に2000万台を生産する自動車事業の企業価値は4450億ドルにしかならない。 一つ注意点がある。このようなDCF法は会社の資本コストである割引率に大きく左右される。ニューヨーク大学スターン・スクール・オブ・ビジネスのアスワス・ダモダラン教授(コーポレートファイナンス・バリュエーション)は1月、自身のテスラ算出モデルに「金利とリスクプレミアムが上昇している世界」を加味し、割引率を10.15%に引き上げた。われわれは単純化するため端数を切り捨てて割引率を10%とし、4450億ドルという数字を導き出した。 自動車販売による潜在キャッシュフローに基づくと、テスラの現在の時価総額を半分程度しか正当化できないとなれば、株価が大幅に割高か、投資家が他からのキャッシュフローを織り込んでいるかのどちらかということになる。同社を巡る議論は今この点に集まっている。強気派は新たな収益源の可能性を持ち出し、弱気派はそれにけちを付けている。 例えばモルガン・スタンレーは今月、テスラのスーパーコンピューター「Dojo」の価値を最大5000億ドルと試算し、同社株を買い推奨リストのトップに置いた。これを受け、株価は10%上昇した。テスラはDojoを活用してドライバーなしの自動運転車の開発を進めている。モルガン・スタンレーは、より高速なコンピューターが自動運転車の利益創出を加速させるとみている。継続的に収入をもたらす運転支援ソフトウエア同様、ロボタクシーも有望視されている。モルガン・スタンレーが算出したテスラの企業価値では、中核の自動車事業はその4分の1程度を占めるに過ぎない。 このシナリオの妥当性には議論の余地がある。実現するかどうかは、テスラが自動運転で他の誰にもできない方法で解を見つけられるかどうかにかかっている。見方はそれぞれだが、実証されていない技術や稼ぎ方に委ねるにしては大きな価値だ。ダモダラン氏が指摘するように、未来の事業モデルは旧来の事業モデルの価値を損なう。もしロボタクシーが普及すれば、自動車を所有すること、ひいては消費者に自動車を販売するテスラの既存事業が打撃を受けるだろう。 EVが移動の未来を大きく広げる中、壮大な計画に取り組んでいる自動車メーカーはテスラだけではない。米ゼネラル・モーターズ(GM)は、サンフランシスコで運用を始めたロボタクシー事業クルーズについて、30年の売上高が500億ドルになると見込んでいる。だが投資家は、資本を流出させているこの事業を、潜在的な金脈というよりコストとみなしている。懐疑から巨額の評価を得ているのはテスラくらいだろう。 <評価方法> ここで使用したモデルは、テスラの将来キャッシュフローの予測を基にしている。30年の予想新車販売台数に予想平均価格を乗じて売上高を出し、予想営業利益率を適用して営業利益を算出した。30年までの予想は、ファクトセットによる今年のアナリスト・コンセンサスの変数に大きな変化がないことを想定している。 営業利益の税率は11%とした(ファクトセットによる23年のテスラに関するコンセンサス)。キャッシュフローは、税引後営業利益から資本的支出を差し引き、減価償却費を戻し入れて算出。資本的支出は一律で売上高の7%、減価償却費は資本的支出の20%とした。 ...
(写真=CAR and DRIVER) この記事は2023年9月16日に「CAR and DRIVER」で公開された「電気自動車のジャガー・Iペイスの2024年モデルがオンライン限定で日本での受注を開始」を一部編集し、転載したものです。 よりエレクトリックでスタイリッシュな外観に刷新したフルバッテリー電気自動車(BEV)のジャガー・Iペイスの2024年モデルがオンライン限定で予約受注をスタート。グレードはR-DYNAMIC HSEのみの設定で、ボディカラーはアイガーグレイ、サントリーニブラック、オストゥーニパールホワイトの3色を用意 ジャガー・ランドローバー・ジャパンは2023年9月7日、フルバッテリー電気自動車(BEV)に位置するジャガー・Iペイス(I-PACE)の2024年モデルの受注を、オンライン限定で開始した。グレードはR-DYNAMIC HSEのみを設定する。 車両価格は以下の通り。 R-DYNAMIC HSE ボディカラー・アイガーグレイ:1623万8000円 R-DYNAMIC HSE ボディカラー・サントリーニブラック:1517万1000円 R-DYNAMIC HSE ボディカラー・オストゥーニパールホワイト:1517万1000円 ...
プジョー408GT/価格:8SAT 499万円 408のキャッチコピーは「解き放たれた新種」。クーペイメージの5ドアHBボディとロードクリアランスをたっぷり確保したSUVルックが独自の個性を主張。誰もがスタイ リッシュと感じる造形のインパクトは絶大。ボディサイズは全長×全幅×全高4700×1850×1500mmのミディアムクラス。日本の道路環境でも持て余さない。足回りは適度に硬めなセッティング。ハンド リングはスポーティ感覚 Photo by Hiroya Yamagami 408はセダン/ワゴン/SUVの特性を融合させた新たなクロスオーバー。どの角度から見ても鮮烈なスタイリングの持ち主だ。パワートレーンは1.2Lターボと1.6L+モーターのPHEVの2種から選べる。 いかにしてプジョーは 408のスタイリングにたどり着いたのか? プジョーのニューモデル“408”が大きな注目を集めている。 なにしろ、今年6月に国内で発表されるやいなや、メディア関係者用広報車の予約が1カ月先まで即座に埋まったほか、発表の2週間後に都内のプジョー・ディーラーを訪れたところ、ショールームに1台だけ置かれていた408の展示車には早くも“売約済み”のカードが掲げられていた。 なぜ、408はこれほど人気なのか?実際に試乗した人がまだ決して多くないこの段階で注目を集めている理由は、408のコンセプトそしてスタイリングが好評だからと推測される。 クーペライクなハッチバックに SUV的なスタイリングを取り入れた 確かに408のスタイリングは斬新で、これまでのどんな乗用車とも似ていない。とりわけ印象的なのが、やや高めに設定された最低地上高だ。カタログには170mmと記されているので、一般的なセダンやハッチバックより40~50mmは高い。これがSUV的なたたずまいを生み出す一因になっている。 一方で全高は1500mm。“高め”ではあるけれど、SUVほどではない。そして、ボディ後端をクーペライクなファストバックとする手法で軽快感を生み出している。408のプロポーションは、このあたりが最大の特徴といえるだろう。では、いかにしてプジョーは408のこのスタイリングにたどり着いたのか? セダンやハッチバックが売れなくなったといわれて久しい。人気凋落の最大の理由はスタイリングが古くさく見える点にある。そこでプジョーもセダンの508にクーペ的な要素を盛り込むなどの実験を行ってきた。408ではこれをさらに一歩推し進め、クーペライクなハッチバックにSUV的なスタイリングを取り入れた。これがフレッシュな印象を生んだといえるだろう。408のような“SUV的ハッチバック”はクロスオーバーと呼ばれ、すでに多くのモデルが誕生している。その中で408はライバルに比べて全高が低く、ボディがワイドで大地を力強く踏みしめているように見える点に特色がある。 ...
(写真=CAR and DRIVER) この記事は2023年9月10日に「CAR and DRIVER」で公開された「京商、KYOSHO MINI CAR & BOOK 第16弾「TOYOTA SPRINTER TRUENO」全国のファミリーマートで9月7日(木)より発売!」を一部編集し、転載したものです。 本格R/Cモデルやミニカー等、ホビー製品を製造・販売する京商が、京商CVSミニカーシリーズである『KYOSHO MINI CAR & BOOK No.16』 TOYOTA ...
※写真はイメージです アイドリングストップ機能を不採用とする新車が増えている。モータージャーナリストの鈴木ケンイチさんは「15秒以上の停車時間がないと、アイドリングストップによる燃費向上の効果は期待できない。それよりも、各社は『より安くてフィーリングの良いクルマづくり』を目指すようになっている」という――。 ガソリン高騰時代、燃費をどう良くするか ガソリン価格の高騰が止まりません。 資源エネルギー庁が発表する「石油製品価格調査」を見ると、8月28日時点ではガソリン価格(レギュラー)は185.6円になり、これまでの最高である2008年8月の185.1円を突破して過去最高に。9月4日時点ではさらに高騰し、ガソリン価格は186.5円にまで記録を更新しました。 政府は、9月末までとしていたガソリン価格抑制のための補助金を12月末までに延長しましたが、ガソリン価格の高騰は、まだまだ予断を許さない状況が続きそうです。 そこで考えるのは、クルマの燃費向上でしょう。 クルマの燃費を良くする方法はいくつもあります。たとえば、ふんわりとアクセルを踏む燃費の良い運転の実施もありますし、不要な荷物を降ろしてクルマを軽くするだけでも、燃費は向上します。ラゲッジルームにキャンプ道具を積みっぱなしにしている人は、大急ぎで荷物を降ろすべきでしょう。 2010年代に普及が進んだアイドリングストップ そして、自動車メーカーによる燃費向上のひとつが「アイドリングストップ」という技術であり機能です。 これは、信号などで一時停止して、エンジン回転がアイドリング(低回転)になると、自動でエンジンを停止するというもの。クルマが停止しているのにエンジンを動かすなんて、燃料の無駄! という考えを実現した技術です。 そのアイデアは古く、1981年のトヨタのコンパクトカー「スターレット」にも採用されています。ただし、昭和の時代は燃費に対する要求がそれほど高くなかったためか、アイドリングストップが普及することはありませんでした。 現実的なアイドリングストップの普及は、ハイブリッドカーが登場して、燃費競争が激化した2010年代以降に進んでいきました。ハイブリッドカーは当然のこと、エンジン車の多くにアイドリングストップが採用されていきます。スポーツカーであるマツダの「ロードスター」にさえ、アイドリングストップはオプション扱いですが用意されていました。 ほとんどのクルマが採用するようになったが… ちなみに、ハイブリッドカーは、エンジンとモーターという2つの動力源を持っています。その2つの動力源は、それぞれ特性が異なっています。エンジンは低回転で力が出にくく、回転数が増えるほど力が出ます。一方、モーターは低回転で力が出ますが、高回転は苦手。そのためハイブリッドカーは、停車したらエンジンを止めて、発進は低回転の得意なモーターに任せるという方法を採用しています。 ですからハイブリッドカーは、基本的にアイドリングストップを行います。ただし、バッテリーの電気の残量が少ないときは、エンジンを動かしっぱなしにするため、アイドリングストップを行いません。 そして、アイドリングストップを実施すると、確実にクルマの燃費性能は向上します。そのため、最近では、ほとんどのクルマが採用するようになりました。 しかし、アイドリングストップにも弱点があります。 エンジンの再始動に運転手はイライラ まず、燃費削減になる条件が意外と厳しいということです。一般的には15秒以上の停車時間がないと、燃費向上の効果が期待できないとされているのです。5秒や10秒の停止ではアイドリングストップをやってもやらなくても燃費は変わりません。 ...
(写真=CAR and DRIVER) この記事は2023年9月6日に「CAR and DRIVER」で公開された「【最新イタリア車試乗】名門の卓越。アルファロメオのSUV、ステルヴィオの完成形は超美味だった!」を一部編集し、転載したものです。 ■ジョルジョ・プラットフォームの完成形登場 アルファロメオのSUV、ステルヴィオに仕様変更が実施された。エクステリアではフロントグリルならびにテールライトのデザインを微調整し、フルLEDマトリックスヘッドライトを新採用。インテリアは、メーターパネルを12.3インチのフルデジタル仕様としたほか、インフォテイメントシステムを新型に切り替えた。 今回は、全3グレードをラインアップする新型ステルヴィオの中で、中心的な存在となるガソリンモデルの2.0ターボQ4ヴェローチェに試乗した。 アルファロメオ初のSUVとして開発されたステルヴィオは、2016年に鳴り物入りで誕生した。何しろ、フィアット・クライスラーの一員となってから基本的に前輪駆動ベースのモデルだけを世に送り出してきた同社が、前年デビューしたジュリアに続く「後輪駆動ベースモデル」の第2弾として、このステルヴィオを発表したのだ。 その基盤となったのはジョルジョ・プラットフォームと呼ばれるアーキテクチャー。「打倒BMW3シリーズ」を目標に掲げられたジョルジョ・プラットフォームは、一説には数千億円ともいわれる巨額の開発費が投じられ、グループ内で広く採用されることが決まっていた。 高い目標を実現するため、「ジョルジョ」はアルミを主体とする軽金属で構成されるとともに、サスペンションはフロントがダブルウィッシュボーン、リアはマルチリンクを採用。何から何まで贅沢に作り込まれたこのプラットフォームは、前述のようにまずはアルファロメオ・ジュリアに採用され、続いてこのステルヴィオ、そして最近はマセラティ・グレカーレにも用いられるという広がりを見せている。 私の「ジョルジョ初試乗」はジュリアだった。その恐ろしく高いボディ剛性に圧倒されたほか、サスペンションの動きが驚くほどスムーズで、静粛性もバツグンに高いことに舌を巻いた。 続いてデビューしたばかりのステルヴィオにも試乗。こちらは「やりすぎ」な感じがなきにしもあらずだった。何よりサスペンションがガチガチに固められていたうえ、ステアリングの反応が敏感そのもの。相当ていねいにステアリングを切り込まないと、コーナリングではギクシャクしてしまう場面さえあった。 ジョルジョ・プラットフォームのポテンシャルの高さを身をもって知っていた私にとって、これは何とも残念なことだった。 しかし、いまから2年前に設定された新グレード「ヴェローチェ」は、初期型からガラリと足回りのセッティングを変更。スポーティなプレミアムSUVとして理想的ともいえるハンドリングを手に入れた。今回試乗したヴェローチェも、基本的にこれと同じ足回りセッティングである。印象をご紹介しよう。 ■アルファらしい絶品ハンドリング。熟成のドライバーズSUVである 最新のヴェローチェも、サスペンションの感触は決して「ヤワ」ではない。もっとも、それはアルファロメオを名乗るからには、「このくらいのソリッドさ」は必要でしょうというレベル。耐えられないほど硬いわけではない。しかも、路面から多少の突き上げがあっても、ジョルジョ・プラットフォームの強靭極まりないボディがこれを受け止めてくれる。ショックはたちどころにして吸収され、不快な印象をほとんど残さない。むしろ「引き締まった乗り心地」として、多くのアルフィスタから歓迎される種類の味わいだ。 この、しなやかさが増した足回りのおかげで、ハンドリングのレスポンスはまさに「ちょうどいい」範囲に仕上がった。とくに意識することなく自然にステアリングを切り込めば、ステルヴィオのノーズは期待したとおりの速さでイン側を向き、ステアリングを戻せば落ち着いたマナーで直進を始める。それは、ドライバーのイメージとノーズの動きが一体化したような心地よい反応である。コントロール性は極めて高いと評価できる。しかも、ステアリングから伝わるインフォメーションは実に豊富。今回、ステルヴィオでワインディングロードを訪れた日はあいにくの雨模様だった。だがそんな悪条件でもタイヤが滑り始めるかどうかの感触が克明に伝わってくるので、安心してコーナーを攻めることができた。 排気量2リッターの4気筒ターボエンジン(280ps/400Nm)は、まるでマイルドハイブリッドが組み合わされているのではないかと思うほど低速域でトルクのつきがよく、そのままフラットなトルク特性を保ったまま5500rpm付近のレッドゾーンまでスムーズに到達する。アルファだったら、エンジンがもう少し官能的でもいいように思うが、本格的な電動化時代が間際に迫ったいま、それは望みすぎというものだろう。 ...
オートマチック・スポーツは、燃費にどう影響するのか? 2001年にデビューしたヤマハ「TMAX」シリーズは、車体中央にエンジンを搭載し、駆動輪への動力伝達にドライブチェーンやドライブベルトを採用することで、ユニットスイング方式が当たり前のスクーター界に一石を投じました。スクーターではなく「ATスポーツ」として人気を確立。今や世界で唯一無二の存在になっています。 実際の燃費はどうなのか? ヤマハ「TMAX560 TECH MAX」(2023年型)を走らせる筆者(松井勉) 実際の燃費はどうなのか? ヤマハ「TMAX560 TECH MAX」(2023年型)を走らせる筆者(松井勉) そのシリーズ最上級モデル、2023年型の「TMAX560 TECH MAX ABS」(以下、TMAX)が、今回のthe「燃費」テスト車です。 【画像】ヤマハ「TMAX560 TECH MAX」の燃費性能は? 実際に走って調査! を見る(18枚) 2022年に受けたマイナーモデルチェンジにより、軽量なスピンフォージドホイールの採用や、アプリを活用してスマホ連動が可能になった大型7インチTFTカラーモニター、さらにクッキリ、シャキッとしたフロントフェイスの採用等々、装備面の大きなアップデイトを受け、プレミアムクラスのモデルとしても非の打ちようのない完成度を手に入れたのです。 跨がるとライダーインターフェイスの変貌により、ゴージャスな先進性でオーナーを満たします。この「テックマックス」バージョンには、電動調整式ウインドスクリーン、シートヒーター、グリップウォーマー、クルーズコントロールなども標準装備。左右のスイッチ類は夜間でも扱いやすいよう照明付きになるなど、スポーツイメージが強いTMAXにあって、プレミアムツアラーのような趣も持つのです。 燃費計測は、車載のトリップメーターと平均燃費計を利用 ...
フェイスブック上の動画でストライキの準備を呼び掛けるUAWのショーン・フェイン委員長=2023年9月14日午後10時ごろ、大久保渉撮影 ゼネラル・モーターズ(GM)など自動車大手3社の従業員が加盟する全米自動車労組(UAW、約15万人)は15日、経営側との賃上げ交渉が期限内に妥結しなかったとして、複数の工場でストライキに入った。UAWによると、「ビッグ3」と言われた3社の組合員が同時にストに踏み切るのは初めてという。 3社は、GMのほかフォード・モーター、旧クライスラーを傘下に持つ欧米大手のステランティス。 UAWは4年ごとに経営側と労働条件の契約を更新しており、現行契約は14日深夜が期限。UAWのショーン・フェイン委員長は期限切れ2時間前の14日夜にフェイスブック上で動画を配信し、期限内に合意に達しなければ「史上初めてビッグ3に対し同時ストライキを実施する」と延べ、組合員にストの準備に入るよう呼びかけた。 UAWはまず一部工場でストを始め、段階的にスト入りする職場を拡大していく予定。 UAWは当初、4年間で46%の賃上げを要求。米メディアによると、現在は上げ幅を36%にまで引き下げた。だが、経営側が14日までに提示した賃上げ幅はGMとフォードがともに20%、ステランティスは17・5%で隔たりが大きい。 米ホワイトハウスによると、バイデン大統領は14日、フェイン氏や3社のトップと交渉の進捗状況について協議。米経済に打撃を与えかねないストの回避を模索したとみられるが、防げなかった。 GMなどが拠点を置くミシガン州の調査会社アンダーソン・エコノミック・グループによると、UAWの全組合員がストに踏み切った場合、組合員の賃金や企業側の利益など10日間で56億ドル(約8200億円)の経済的損失が発生するという。生産停止で在庫が不足し、自動車価格が値上がりする恐れもある。 前回19年の交渉ではGM労組だけが約40日間のストを実施し、GMに約36億ドルの損失が発生した。【ワシントン大久保渉】
中国自動車大手の上海汽車集団、1~6月は増収増益 第20回上海国際自動車工業展覧会(上海国際モーターショー)で展示された上海汽車集団傘下のブランド「飛凡汽車(Rising Auto)」の新エネルギー車「F7」。(4月18日撮影、上海=新華社記者/王翔) 【新華社上海9月14日】中国自動車大手の上海汽車集団がこのほど発表した2023年6月中間決算は、売上高が前年同期比3.3%増の3265億5千万元(1元=約20円)、純利益が2.5%増の70億9千万元だった。構造の最適化、コストの削減、収益の向上を通じ、増収増益を実現した。 完成車の1~6月の卸売販売台数は207万2千台、小売台数は223万7千台となり、国内で業界をリードする地位を維持し、月間販売台数も前月比が数カ月連続で増加した。第2四半期(4~6月)の販売台数は第1四半期(1~3月)比32.5%増となり、伸び率は市場全体を上回った。1~6月の新エネルギー車(NEV)販売台数は37万2千台で中国メーカーの2位となり、1月以降は「月ごとに伸びる」傾向を維持した。 同社は、4月に発表した「新エネ車発展3カ年行動計画(2023~25年)」の実施加速に伴い、新たな成長で新たな発展をけん引し、新旧事業の発展原動力の切り替えを着実に推進するとした。 第20回上海国際自動車工業展覧会で展示された上海汽車集団傘下のブランド「名爵(MG)」のスポーツカー「MG7」。(4月18日撮影、上海=新華社記者/王翔) 1~6月の海外販売台数は40.0%増の53万3千台で引き続き業界をリードした。傘下の「MG(名爵)」ブランドは海外販売台数が4年連続で中国ブランドの首位を維持し、欧州での販売台数は2.4倍の11万5千台、うち新エネ車の割合は50.0%を超え、月間販売台数は4カ月連続で2万台を超えた。中東、チリ、オーストラリア、メキシコなどの地域では上位7に入り、シェアは5.0%を超えた。米ゼネラル・モーターズ(GM)と広西汽車集団との合弁会社、上汽通用五菱汽車のスポーツ用多目的車(SUV)「宝駿(BAOJUN)530」は販売台数がメキシコの同セグメントでトップを走り、超小型電気自動車(EV)「Air ev」は現地生産を行うインドネシア市場のシェアが4割に達した。傘下で商用車を手掛ける上汽大通汽車は、海外小売台数が47.0%増となり、オーストラリア、欧州、メキシコ市場での販売台数はいずれも1万台を超えた。海外販売台数の急速な増加に伴い、同社の今年の海外事業は「大幅な増益」となる見通し。 7月の新エネ車販売台数は9万1万台と、月間販売台数として年初以降の最高を記録し、第3四半期(7~9月)は月間販売台数10万台を目指す。傘下の自主ブランド乗用車メーカーである上汽乗用車は、新エネ車の月間販売台数が3万台に迫る。ドイツ・フォルクスワーゲン(VW)との合弁会社の上汽大衆汽車(上汽VW)、GMとの合弁会社である上汽通用汽車(上汽GM)は、新エネ車の月間販売台数がいずれも初めて1万台を突破した。上汽通用五菱汽車は5ドア小型EV「五菱繽果」の月間販売台数が2万台を超えた。同社の自主ブランドと合弁ブランドは顕著な増勢を示し、新エネ車事業全体の発展見通しは明るい。
アッセン・サーキットでの功績を称える限定車 イタリアのバイクブランド「MVアグスタ」は高級ネイキッドモデル「BRUTALE(ブルターレ)1000RR」の限定モデル「ブルターレ1000 RR アッセン」を発表しました。 300台限定のMVアグスタ「ブルターレ1000 RR アッセン」 300台限定のMVアグスタ「ブルターレ1000 RR アッセン」 イタリア語で獣のような荒々しさ、猛々しさを意味する「BRUTALE」をモデル名に掲げる「ブルターレ1000RR」をベースにしたブルターレ1000 RR アッセンは、最高出力208ps/13000rpm、最大トルク116.5Nm(85.9ポンド・フィート)/11,000rpmを発揮する排気量998cc直列4気筒エンジンを搭載する特別なモデルです。 【画像】300台限定のMVアグスタ「ブルターレ1000 RR アッセン」を画像で見る(33枚) MVアグスタは、これまでにジョン・サーティース選手、マイク・ヘイルウッド選手、ジャコモ・アゴスチーニ選手などのレジェンドライダーの活躍により、オランダのアッセン・サーキットで35回の優勝を飾っていますが、限定車として登場したブルターレ1000 RR アッセンはその栄光へオマージュを捧げて製作された一台で、ブルー、シルバー、ゴールドをミックスした特別なカラーリングを採用。 300台限定のMVアグスタ「ブルターレ1000 ...
スポーティな雰囲気のV7 Stone派生モデル イタリアのバイクブランド「モトグッツィ」は、新型モデル「V7 Stone Corsa」を発表しました。 モトグッツィ「V7 Stone Corsa」 モトグッツィ「V7 Stone Corsa」 モトグッツィの「V7」シリーズは、その起源を1967年とするモト・グッツィのラインナップでも最も基幹とされるモデルです。最新世代では排気量853ccの縦置き空冷90度V型2気筒OHV2バルブエンジンを搭載し、先進的な装備で現代版に進化しています。 【画像】モトグッツィの新型モデル「V7 Stone Corsa」を画像で見る(16枚) モトグッツィは創立以降レースで頭角を現し世界選手権で 14 回、マン島TTレースで11回優勝していますが、新たに登場したV7 Stone Corsaはそれらの勝利を祝うモデルで、ネイキッドモデルのV7 ...
(写真=CAR and DRIVER) この記事は2023年9月1日に「CAR and DRIVER」で公開された「7月の輸入車市場は前年比115%と好調!フォルクスワーゲンがランクアップ(2023年7月・輸入乗用車販売TOP20)」を一部編集し、転載したものです。 6月は前年比3.0%増と大人しかった輸入車市場だったが、7月の外国メーカー・乗用車の輸入車登録台数は前年同月(15712台)と比べ14.9%増(18054台)と好調な実績となった。1月からの累計でも前年比6.4%増だ。 首位は変わらずメルセデス・ベンツ。しかし、先月4位だったVWが前年同月比160%、3578台を販売し、126台差の2位に。 その他、ランキングで大きな変動はないものの、ポルシェ、ランドドーバーがそれぞれ前年比2倍、3倍の販売と好調だ。 また、下図のランキング外ではあるが、BEVの本格進出が進む中国のBYDが78台で21位まで上がってきている。(韓国ヒョンデは15台) 国産ブランドでは、タイ生産のマーチが販売終了となったものの、代わってキックスが1570台と輸入増となった日産が先月比5ランクアップの5位に上昇している。マツダもタイ工場からの輸入増で前年比10倍の輸入増だ。 Writer:カー・アンド・ドライバー編集部 (提供:CAR and DRIVER)
今年で70周年 2023年は名車シボレー・コルベット発売70周年にあたる。現行車としては史上最長のロングセラーだ。性能とスタイルをかつてないレベルで両立させた、スポーツカーの象徴とも言える存在で、発売当初から多くのセレブがこぞって買い求めた。この名車の歴史を、ハンドルを握った有名人とともに振り返ってみよう。 駆け出しの頃 この革命的な車のハンドルを発売直後に握った一人がイタリアの女優、ソフィア・ローレンだ。ここでは1954年型とともに写っている。 ベティ・スケルトン ベティ・スケルトンは自動車での最高速度記録も保持していたことがあるほどのスピードマニア。曲芸飛行パイロットでもあり、オートレースや航空業界、宇宙飛行士や広告界に女性が参入する大きなきっかけとなった。そんな彼女が腰掛けているのは独自の改造を経たシボレー・コルベット。1956年頃のフロリダ州デイトナ・ビーチでの写真だ。 パット・ブーン この写真で運転席に座っているのはポピュラー歌手のパット・ブーン。車は1956年か1957年型で、撮られたのは50年代後半と見られる。 ジェフ・ベック 充実したカー・コレクションで知られるイギリスのギタリスト、ジェフ・ベック。発売されるやいなや殿堂入り級の存在となったコルベットも当然所有していた。写真は1958年頃のモデル。 XP-755 Mako Shark(1961年) 写真はラリー・シノダがデザインしたコンセプトカー、「XP-755 Mako Shark」だ。けっきょく大量生産はされなかったが、コルベットをフィーチャーしたテレビドラマ『ルート66』に登場した。 写真:Chevrolet pre-1978, Public domain, ...