ランボルギーニ・ウラカン・テクニカ 価格/7DCT 2999万2916円 Photo by Hiroya Yamagami
テクニカは、2003年以来ガヤルド/ウラカンと続いたV10自然吸気ミッドシップスポーツの集大成。街乗りからサーキットまで対応し、エンジンはSTOと同スペックの5.2L/640hp。最高速度は325km/hに達する。
V10自然吸気ミッドシップ
スーパーカーシリーズの最終з«
ランボルギーニ・ウラカンの完熟モデル、テクニカがついに日本に上陸した。サブネームの意味するところは、もちろん“技術”。ただし、それは単純に車両テクノロジーを意味するものではない。ラグジュアリーイメージやトラック(サーキット)性能といった“昔はなかったモダンランボの魅力”を表現するため、持てる“技”をすべて注ぎ込んだという誇らしい思いの表れでもある。
ウラカン・テクニカは2003年に登場したV10自然吸気ミッドシップスーパーカーシリーズの最終章だ。2万台超という大成功作となった“ウラカンの10年”と、1万4000台を生産した“ガヤルドの10年”を含めた完成形。20年にわたった“技の結晶”である。
ドライバーを“特別な時間”に誘うコクピット。室内各部はアルカンターラ仕上げ。ステアリング上部にアクセント入り。前方視界は思いのほかワイド。車両感覚が掴みやすく自信を持ってドライブできる
シートはサーキット対応のバケット形状。軽量化のため各種調節は手動式。素材は本革とアルカンターラの組み合わせ。サイドに“TECNI CA“のロゴ入り。乗り心地は硬質
5204cc・V10DOHC40V(640hp/565Nm)
2003年以来、筆者はすべてのサンタアガータ製V10ロードカーを試す機会に恵まれた。ガヤルドとウラカン合わせて3万5000台以上に達したV10・NAミッドシップスーパーカーのデビューが筆者のフリー人生のスタートとほぼ重なっていたこともあり、個人的にも思い入れが深い。
それゆえ集大成を飾るモデルとしてRWD(後輪駆動)のミッドシップスーパーカーが登場したという事実に感慨ひとしおだ。実をいうと、ウラカンの最終モデルはテクニカではなかった。最後の最後としてAWD(四輪駆動)の限定モデル、ステラートが発表された。それは未来のスーパーカーへの示唆に富むモデルである(ランザドールの前触れだ)。
思い返せば当初5LだったV10自然吸気エンジンの最高出力はたったの500psだった。現在では平凡な数値である。だが、当時のライバル、フェラーリ360モデナはV8・NA+RWDで400psだったから、500psでも驚異的だった。当時のランボ技術陣は、「500psを安全かつ効果的に路面へと伝えるために4WDを選んだ」とわれわれに説明してくれた。しかし、その6年後の2009年にはシャシー制御の進化に助けられて550psのRWDを登場させている。以来、サンタアガータ製V10ミドシップシリーズのカタログにはAWDとRWDというキャラクターのまるで異なる2系統が存在する展開になった。
そしていまや、640psの最高出力を誇るV10・NAエンジンをAWDのみならずRWDモデルにも搭載する。これぞ20年間の進化のなせる“技”というものだろう。
ウラカン・テクニカは標準モデルのウラカンEVO・RWDと、サーキットスペシャルのウラカンSTOとのギャップを埋めるために生まれた。何度もいうようだが、限定車ではない。シリーズモデルだ。けれどもウラカンそのものの生産終了の時期が迫っているから、もはや期間限定車のようなものではある。
硬質だが心地いい走行フィール
走るほどドライバーと一体になる
だが、スタンダードモデルと比べると、雰囲気はかなり異なる。エアロダイナミクスや冷却性能の向上の結果として改変されたフロントの特徴的なデザインは、電動コンセプトカー“テルツォ・ミッレニオ”を彷彿とさせ、最新フラッグシップのレヴエルトとの共通性も感じる。伸びた全長とサイドウィンドウ周辺のデザイン変更によって、真横から見たスタイルにはサーキット専用モデル“エッセンツァSCV12”との近似性さえ見出せる。テクニカのトップスピードは325km/h、0→100km/h加速は3.2秒でクリアする。パフォーマンスも完熟ウラカンにしてシリーズベストといえる極みに達していた。
体に心地よく残ったV10・NAの余韻
次世代モデルはPHEV
街乗りはさすがに少々ハードな味付けだ。路面のザラつきが手に取るようにわかる。けれども速度を上げていくとだんだんと気にならなくなっていく。ライド感にフラットさが増していくからだ。70km/hを超えれば、もう快適とさえいっていい。とくにドライブモードのANIMAをストラダーレにセットしておけば、街中でも低速域を除いて、硬めだけれどクルマ好きに最適なライドフィールを提供する。
キャラクターが豹変するのはANIMAをスポルトかコルサに変えた瞬間だ。サウンドがいきなりラウドになってV10エンジンのイキリ具合が手に取るようにわかる。素晴らしいのはそのサウンドクォリティ。輪郭のぼやけた感じがまるでなくなり、V10特有の一本筋の通った美しい音色になった。7速DCTの制御も明らかに進化しており、アップシフトの心地よさは、優秀だったEVOのさらに上をいく。
STOと同じシャシー制御を持つだけあって、ワインディングロードでのお楽しみは、クラス最高レベル。意のままのドライビングフィールとはこのことだ。ライバルの硬派モデルと比べても“楽しさ”という点ではまるで遜色ない出来栄えだった。
次世代モデルはPHEVになる。おそらく高効率のV8を積んでくるだろう。それはそれで楽しみだけれども、体に心地よく残ったV10・NAの余韻が未来の電動化を残念がっているようにも思えた。
(CAR and DRIVER編集部 報告/西川 淳 写真/山上博也)
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