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チェコスロバキア製の激レア工兵車、ロシアとウクライナ双方に出現

チェコスロバキア製の激レア工兵車、ロシアとウクライナ双方に出現 VT-72Bは「希少種」と言っていいような軍用車両だ。旧ソ連のT-72戦車をベースにした装甲工兵車で、旧チェコスロバキアで開発された。製造はもっぱら同国で行われ、その期間も1980年代後半から90年代前半までと短かった。

設計は、ありていに言えばT-72から砲塔と主砲を取っ払ったもの。代わりにクレーンなどを備え、行動不能になった戦車などの回収にあたる装甲回収車(ARV)だ。

VT-72Bは東ドイツやインドも数両取得したが、大半はチェコスロバキアが保有していた。1993年に同国が現在のチェコとスロバキアに分離すると、両国に引き継がれた。

重量46トン、乗員2名のVT-72Bは、すでにチェコでもスロバキアでも退役。チェコ軍は、より新しいタイプのVT-72Mを数両運用している。

チェコとスロバキアが古いVT-72Bをどう処分したのかは、いまいちはっきりしない。だがどういうわけか、VT-72Bはロシアが全面侵攻したウクライナの戦場で、双方の側に姿を見せている。

一方、ウクライナとロシアがVT-72Bを必要とした理由ははっきりしている。全面侵攻が始まって1年半近くたつなか、どちらの軍もこれまでに、戦車をはじめとする装甲車両を何百両と失っているからだ。

行動不能に陥った車両であっても、実は修理できるケースが多い。しかし、そのためにはまず、工兵がその車両を戦場から回収しなくてはいけない。そして、この任務で通常、最初に必要になる作業が、装甲回収車によって車両を安全な場所に引っ張ってくることだ。

ディーゼルエンジンで駆動するVT-72Bはそのために、ウインチ(巻き上げ機)、つり上げ能力19トンのクレーン、車体を安定させるためのドーザーブレードを装備している。ドイツのベルゲパンツァー、英国のチャレンジャーARV、米国のM-88と同類の車両だ。

ウクライナ軍は複数のベルゲパンツァーも保有している。最近では、ドイツから供与されたレオパルト2A6戦車、フィンランドから供与されたレオパルト2R重地雷処理車、米国から供与されたM2歩兵戦闘車といった貴重な車両の回収に使用され、ウクライナ陸軍第47独立機械化旅団が6月8日に南部ザポリージャ州でロシア側の地雷原突破を試みた際に出した大きな損害の軽減に役立っている。

同旅団は、こうした高性能の車両20数両を置き去りにすることを余儀なくされていた。だが数週間後には、工兵がベルゲパンツァーで回収作業に着手できるほどの位置まで、地雷原を越えて前進した。

北大西洋条約機構(NATO)加盟国であるチェコとスロバキアは、いずれも自由なウクライナを支持し、ウクライナに戦闘車両を供与している。チェコはどうやら、ロシアが最初にウクライナに侵攻した2014年ごろにVT-72Bを数両供与していたらしい。一部はいまも現役だ。

他方、ロシアがどのようにしてVT-72Bを入手したのかは、もっと謎に包まれている。ロシア軍は、戦車や戦闘車両の車台を使ったさまざまな回収車両を運用していて、その数は数百両にのぼるという事情もある。

ロシア軍がVT-72Bも保有していることはあまり知られていなかったが、26日、ネット上に出回った動画に映っていたことで周知されることになった。動画はウクライナに向かうロシアの列車を撮影したもので、古い戦闘車両などとともに、老朽化したVT-72Bも1両輸送されていた。

ロシア軍は、シベリアのどこかの車両置き場にある古い装甲回収車を、片っ端から現役に編入しているようだ。とはいえ、これは驚くにあたらない。

2022年2月にウクライナに全面侵攻して以降、ロシア軍は独立した調査で確認されているだけで工兵車をおよそ300両も失っている。これは大半の国の軍隊が保有する工兵車の総数をはるかに上回る数であり、ロシア軍にとっても大きな損害だ。

(forbes.com 原文)

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