お台場で行われたEVのレース、「フォーミュラE」に行ってきました。間近で見ると結構な迫力です。狭いコースで「抜きつ抜かれつ」とならないのがつらいところ Photo by Ferdinand Yamaguchi
東京・お台場で開催された「フォーミュラE」に行ってきました
みなさまごきげんよう。フェルディナント・ヤマグチでございます。今週も明るく楽しくヨタ話からまいりましょう。
お台場で開催された、日本初の公道レース「Formula E」(以下、フォーミュラE)を見学してまいりました。
何しろEVのレースですからね。エンジンの咆哮(ほうこう)もなければ焼けたオイルの匂いも漂ってこない。無音無臭のしめやかなレースだろう……とタカをくくって出かけたのですが、さにあらず。
エンジン音こそしませんが、タイヤのスキール音が盛大に響いている。F1のようなハイグリップタイヤを敢えて使わず、各社共通で、市販に近い韓国・ハンコック社製のタイヤを使っている。おまけに公道ですから路面の摩擦抵抗値がサーキットと比べると極端に低い。つまりタイヤが滑るわけです。だからコーナーの度にキキキキと音がする。キュイーンというモーターの回転音も聞き慣れると悪くありません。かつて京急の車両で使っていたドレミファインバータ的なものを使えば、もっと盛り上がるかもしれません。
フォーミュラEのフロントサスペンション部分 Photo by F.Y
タイヤも共通。フロントサスペンションも共通。フォーミュラEで使用するレーシングカーは、実に部品と車体の7割をFIAが供給しています。
駆動用モーターとインバーター、ギアボックスなどは各チームで独自開発するのですが、レース結果はレーサーの腕とチームのバッテリーマネジメント戦略による部分が大きくなります。この辺りをハラハラドキドキしながら見るのも一興というものです。いやぁ最高に楽しめました。お招きいただいたジャガー・ランドローバー・ジャパン様、ありがとうございます。
ピットに入ると、焼けたオイルの代わりに、温度の上がった電子機器特有の匂いがしてきます(高出力アンプの裏から漂ってくる“あの匂い”に似ています) Photo by F.Y
開会式に岸田文雄首相と小池百合子都知事が登場
会場ではレース前からSPの姿がやたらと目立ち、ものものしい雰囲気です。はて、誰か要人でも来るのかしら……と思っていたら、岸田文雄首相と小池百合子都知事が開会式に来ておられました。
ぞろぞろと会場を練り歩くSP諸公。暑いのにスーツ姿でご苦労さまです Photo by F.Y
SPさんも所属によってバッジの色が違います。偽造防止のため、年に何度も色を変えるそうです Photo by F.Y
岸田首相は開会式で「二酸化炭素の出ない、エンジン音の出ないフォーミュラEだからこそ、東京での開催が実現しました。一方で、(日本で)初めての公道での国際レースです」とEVによるレースを最大限に持ち上げました。
小池さんが仕込んで来たフォーミュラE開催のオイシイ部分を持っていかれた訳ですが、策士である小池さんがタダでこの状況を受け入れる訳がない。ということは……ということでしょうね。
ということで、本編へとまいりましょう。今やバイクを売るならバイク王……ではないバイク王のインタビュー、続編です。
整備士不足はバイク・クルマ共通の問題点
たくさんのCMを打ち認知度を上げてきたバイク王。「バイクを売るならGOバイク王」なるフレーズをご存じの方も多いだろう。だがバイク王は最近になり、買い取り専業の一本足打法からの脱却を図っている。中古バイクの販売に力を入れ、さらには他社で買ったバイク整備にも注力しているというのだ。だから「バイクを売るならバイク王」ではなく、「バイクの“ことなら”バイク王」と、実はメッセージも変えている。前号(https://diamond.jp/articles/-/341297)ではこの辺りまでお話しした。
左がバイク王&カンパニーの澤篤史さん、右が筆者(これ以降の写真はすべてAD高橋が撮影)
バイク王&カンパニー 取締役常務執行役員 澤篤史さん(以下、澤):ご指摘の通り、宣伝が足りていないのは事実です。というか、まだ会社として全面的にアピールできないのが現状です。その背景には整備士のリソース不足があります。買い取りと同じボリュームで宣伝をしてしまうと、“整備難民”といわれる方たちが我々の店舗に押し寄せることは、目に見えています。みなさん整備には苦労されていますから。
ですが、我々の体制が整っていない状態で多くの方の整備を受け入れてしまうと、バイク王で購入したお客様へのアフターサービスが手薄になってしまいます。それだけは避けなければいけません。
F:整備士が足りていない。
澤:はい。圧倒的に足りていません。でもこれは我々だけの問題ではなく、バイク業界全体の問題でもあります。そもそも整備士を目指す学生自体が減っているんです。バイクだけでなくクルマも同じです。整備士不足は深刻な状況です。さらに言うと二輪の場合、専門学校自体が少ないという現実もあります。四輪の整備専門学校で二輪も学べるのですが、卒業生は四輪メーカーに就職したがる傾向にあるので、なかなか二輪業界に人材が来ない。中古バイクの販売店となると、もっと回ってこない。要は優先順位が低いんです。だから当社では入社した未経験者を一から育成する仕組みを作っています。
バイク王では整備にも力を入れている
F:もうバイク王で一から整備士を育ててしまおうと。
澤:はい。会社の中でもしっかり教えますし、希望があれば会社負担で整備学校にも通ってもらえます。現状バイク王には150人ほどの整備士がいます。その中でマスタークラスの腕利きはわずか4人。整備のエキスパートをもっと増やしていくことが今後の課題です。
バイク王の買取専門店は、今後なくなっていく予定
F:買い取って整備して、質の良い上位2割ほどは自社店舗で販売する。残りの品質の劣るもの……と言ってはナンですが、バイク王基準を満たさないバイクはオークションに流す。さらには他社で買ったバイクのメンテまで受け入れるよう進めている、と。
澤:はい、その通りです。現在は買い取りと小売りの売り上げが半々ですが、今後は中古バイク販売シェアナンバーワンを目指していきます。今は全国に80店舗ありますが、バイク販売店はまだ可能性があると考えています。
F:すると買い取り専門の店舗はなくなる方向ですか? 買い取りと販売の両方を行う店舗になっていく?
澤:近日中に買い取り専門店はほぼなくなる予定です。また、販売専門店も作っていきます。例えば世田谷にはハーレー専門の販売店もあるんです。
メーカー正規店とバイク王、買い取り価格はどちらが高い?
F:例えばハーレーの中古を、ハーレーの正規販売店とバイク王とで比べたら、どちらが高く買い取ってくれるんですか?正規店も「中古価格の維持」という使命がありますから、それなりに高く買ってくれる可能性がありますよね。
バイク王&カンパニー取締役常務執行役員 澤 篤史氏
澤:ディーラーは基本的に新車販売がメインになります。ですが我々は販売店舗で高く売れるバイクは高く買う。売れない、売りにくい車両はオークションに出品すればいい。そうしたインフラが整っていますので、高価買い取りを可能としています。
つい先日も、ホンダの「ゴールドウィング」という大型バイクを200万円で買い取らせていただきました。そのバイクはディーラーで100万円と言われたそうです。でもこれは、ディーラーの買い叩きでも何でもありません。買い取ったバイクは、整備して店舗に置かなければ売ることができません。でも店舗のスペースは限られている。もちろん彼らが売りたいのは新車です。ゴールドウィングのような大きな中古バイクで店舗を占領されたのではたまりません。では、オークションに出せばいいか。出すとなると手間と暇とコストがかかる。ゴールドウィングを運ぶとなると、これは大仕事ですからね。そんなことを考え合わせると、買い取り価格は安く抑えざるを得なくなる場合もあるのかなと。
F:なるほど。分かりやすい。
澤:バイクを運ぶのって、意外とコストがかかるんですよ。オークションに出すにしても、店舗間移動にしても、輸送費はバカになりません。例えば名古屋の店舗が買い取ったバイクを関東のオークション会場まで運ぼうとすると、軽く2万円はかかってしまいます。でも我々は大量の車両を一括で運んでいるので、1台当たり数千円で輸送できます。この差は非常に大きいです。
F:2万円! たまに運ぶ素人が使うなら分かりますが、頻繁に使う業者が運んでも、2万円もするのですか?
澤:それくらいは普通にします。バイクは倒れやすいので、トラックに載せる時にロープでしっかり固定しないといけません。それでも急ブレーキなどでひっくり返ってしまうことがある。車内で揺れても接触しないようにお互いに多少の間隔を空けた上でガチガチに固定する必要があるんです。だから輸送コストが高くつく。遠方に運ぶとなると、2万円、3万円は当たり前のようにかかります。他のバイクと混載できないなど、タイミングが悪いともっとかかる。下手をするとクルマより高くかかることだってあります。
ですが我々は扱っている量が違う。大量に仕入れて大量に運んでいる。だから輸送コストを抑えられる。中古バイクにかかるコストのうち、輸送費というのは結構な割合です。これは重要なポイントです。
F:すると一般の人間が自分のバイクを手放そうとした時は、東京とか大阪とか、オークション会場から近い場所で売ったほうがいいということですか? 四国にはオークション会場がありませんよね。四国で売ると輸送コストの分、安く買われてしまう可能性がありますか?
オークションへのバイク出品、写真やビデオで済まないのはなぜ?
F:いまさらの質問なんですが、出品するバイクは、実際にオークション会場に持ち込まないといけないんですか? 今の時代、写真やビデオで済ますことはできないんでしょうか?
澤:はい。自分で会場に車両を持っていかなければいけません。写真だけで出品できるオークションもあるにはありますが、正直な話、成約率はそんなに高くはありません。やはり、実車を見ないと本当の状態は分かりませんからね。
オークション会場にはこれから出品されるバイクがズラッと並んでいて、それはそれは壮観です。そしてそれらのバイクを自由に見て触ってじっくりと吟味することができるんです。実際にバイクに触って、またがることも、エンジンをかけて音を聞くこともできます。
オークションで落札する業者さんは、前日までにオークション会場に行って、事前に現物を見て確認して入札価格を決めます。当日は会場に行ってもいいし、自宅や会社からパソコンでリモート入札することも可能です。会場に行かなくてもいいんですね。これが毎週行われています。
F:なるほど。面白い。中古バイクのイメージが大きく変わりました。失礼ながら、もっとグレーなビジネスなのかと思っていました。
澤:それはもう30年以上も前の話ですよ(苦笑)。
ビッグモーター事件、バイクの買い取りにも影響があった?
F:時間をかけてクリーンになってきた中古業界に、昨年、激震が走りました。ビッグモーター事件です。あれはビッグという悪徳企業の特殊事情かと思っていたら、ネクステージでも不正があった。あれで「やっぱり中古業界はウサンくさい」と時計が逆戻りしてしまった。あの事件はバイク王のビジネスに影響を与えましたか? それともクルマとバイクは別物で、特に影響はありませんでしたか?
澤:影響はありました。バイクは関係ないはずなのに、同じ「買い取り」という点で、「バイクの買い取り大手のバイク王も、同じようなことをしているんじゃないか」とお客さまから言われることもありました。
販売に関してはそれほど影響が出ませんでしたが、買い取りの問い合わせ件数は一時期激減しました。「中古の買い取りは悪い奴らがやっている。そんな会社と接点を持ちたくない」というお考えから、問い合わせをやめようという人がたくさん出てきたんです。これはデータからも明らかで、過去の実績を見ると7月より8月の方が問い合わせ数は絶対に多いのに、それが初めて下がりました。7月はまだ梅雨なので、梅雨が明けるとバイクが動き始めるんですね。それが下がってしまった。これは創業以来初のことでした。衝撃でしたね。
F:そうは言っても、売りたい個人は売らないと困りますよね。いつまでも要らないバイクを持っておくわけにはいかないし。
澤:それが、そうでもないんです。クルマと違ってバイクは場所を取らないし、維持費もかからない。だからあまり乗る機会がなくても、「まだ売らなくてもいいか」と手元に置いておく人が多いんです。
F:巻き添えもいいところだ。大迷惑ですね。昨年7月25日にはビックモーターの兼重宏行社長(当時)の記者会見がありましたが、その前後で如実に変わりましたか?
澤:あくまであそこの会社さんの会見だったのですが、「バイク」の検索キーワードがガクンと下がりましたね。
F:そんなひどい目に遭っても「さん付け」するんだ(笑)。
澤:いや、まあ、これはクセですね(苦笑)。
バイクは「売る」と「買う」のタイミングが違う
F:クルマは売るのと買うのが同じタイミングですが、バイクも同じですか?
澤:バイクの場合は違いますね。乗り換えのために売るお客さまももちろんいらっしゃいますが、「乗らなくなったから売る」という人のほうが多いです。就職とか結婚とか転勤とかで、自分が乗れない環境になったので売る、という方が多いですね。
我々は「手放し層」と「乗り換え層」という二つの顧客層を設定しています。手放し層に関しては、お客さまアンケートや自社調査でほぼ獲得できていることが分かっています。一方の乗り換え層はまだまだです。実をいうとウチはまだそこが弱いんです。
F:なぜでしょう?
澤:恐らく、バイク王がバイクを売っているというイメージがあまりないからだと思います。ですから今は出張査定に行った際に、「実はウチは販売もしていますよ」とお声がけするようにしています。
バイク王の工場を見学
バイク乗りの平均年齢は53歳
F:バイクは何歳くらいの人が売って買っているのですか?
バイクを一番買っているのは45~49歳の層です。バイク乗りの平均年齢は53~54歳といわれています。10年前は40代前半だったのが、そのままスッと10歳上がってしまった。こんな感じです。若い人の流入が弱いのが、バイク業界の課題です。ここを変えていきたいですね。
F:「若者よ、バイクに乗ろう!」というところですね。いいお話をたくさん伺うことができました。ありがとうございました。
バイク王世田谷本店にあったサイン
自工会が発表した自動車購買層の平均年齢は実に54歳と高齢化が進んでいますが、バイクも同じでした。もはやオッサンの趣味と化したバイクですが、どのように若返りを図っていくのか。各社の方針をインタビューするのも面白いかもしれません。
次号は、新しく出た“あのクルマ”の試乗記をお送りします。お楽しみに!
(コラムニスト フェルディナント・ヤマグチ)
こんにちは、AD高橋です。
バイク王の世田谷本店。たくさんの中古バイクが並ぶ
1994年に創業したバイク王。私が中古車情報誌の編集部に配属となったのが1995年10月だったので、ほぼ同時期に業界に関わったことになります。
その頃すでに電話帳のように分厚かった某誌の後半ページは、買い取り専門店や買い取りに力を入れる大手中古車店の広告が多数掲載されていました。他にも新車の低金利販売の広告が多かったですね。
正確な時期は覚えていませんが、2000年代に入り多くの人がインターネットサービスを利用するようになると、ネットで必要情報を入力するだけで複数の専門店から査定額のお知らせが来る一括査定が主流になっていきます。
一括査定はユーザーにいち早く査定額を伝えて商談に入るのがキモになるため、情報を送信した途端に電話が鳴りやまなくなるなど、ユーザーにとっては利用しづらい面もありました。そのため現在では、ユーザーの利便性を考えたサービスも登場しています。
クルマの買い取りサービスと、バイク王のサービスで違いを感じるのが、広告の打ち出し方です。
クルマの買い取りサービスでは、「簡単・気軽に利用できますよ」という部分を強調したり、親しみやすさを前面に打ち出したCMが多い印象です。一方でバイク王のCMは、大切に乗ってきたバイクと別れる寂しさ、バイクを降りることに対する切なさを感じさせる映像と音楽で構成されているのが特徴。その上で、「そんなあなたの大切なバイクをしっかり査定し、次のオーナーに受け渡します」という企業メッセージが伝わってくる内容になっています。
バイク王世田谷本店の壁にあったメッセージ
上の写真は、店舗に掲示されていたメッセージ。やはり、気軽さや親しみやすさより、「オーナーの気持ちを大切にします」というコピーが使われています。
バイクライフプランニング事業部の新井マネージャーにそのことを尋ねると、「バイク王を利用される方々はみなさん、愛車に対して強い思い入れがある方が多い。だからこそ私たちは、オーナーの気持ちに寄り添ったサービスをお届けしたいと考えているのです」とのことでした。
残念ながら私は二輪の免許を持っておらず、当然バイクを所有したことはありません。でも私と同世代でバイクに乗り続けている友人と話すと、本当に自分が所有しているバイクのことが好きなのだなということが伝わってきます。
最近、ご近所に住む60代の方とよく話をするようになったのですが、きっかけはバイクでした。数カ月前にその方が自宅の庭で古いバイクを整備しているのを見かけ、思わず話しかけてしまったのです。所有しているバイクはBMW R100。
「若い頃に中古車で購入し、すっかり気に入ってしまっていまだに手放せずにいるんです。本当に手がかかるやつで、実は手に入れてから絶好調という状態がほとんどない。だから手元にやってきてから30年以上たつのに、ほとんど乗ってあげることができなくてね。いつも整備ばかりしています」
オイルまみれのつなぎを着て、ハンドル周りをいじる姿を見て、素敵な趣味だなと感じました。(AD高橋)
>>前編:「バイクを売るならGOバイク王」は看板に偽り!?フェルディナント・ヤマグチ、日経からダイヤへ“電撃移籍”