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スバル「レイバック」とベース車「レヴォーク」の決定的な違い…1200kmのロングドライブで検証!

スバル「レイバック」とベース車「レヴォーク」の決定的な違い…1200kmのロングドライブで検証!

スバル「レヴォーグ レイバック」Photo by Ferdinand Yamaguchi

連載「フェルディナント・ヤマグチの走りながら考える」、今回はスバルの新SUV「レヴォーグ レイバック」の試乗レポートをお送りする。2023年10月25日に発表されたこのクルマに冠せられたコピーは「都会派SUV」。スバルが考える「都会派SUV」とは何なのか?そしてベース車である「レヴォーグ」とどこが違うのか?1200km走って確かめてきた。(コラムニスト フェルディナント・ヤマグチ)

名店「鮨さいとう」に行ってきました

 みなさまごきげんよう。フェルディナント・ヤマグチでございます。今週も明るく楽しくヨタ話からまいりましょう。

 名店、鮨さいとうで珠玉の握りをいただいてまいりました。アメリカ大使館の前にある、自転車会館の駐車場の一角にひっそりとオープンした「鮨かねさか 赤坂店」時代から通っていますから、もう20年来の付き合いになりましょうか。独立されてからも研鑽を重ね、今や本家をしのぐ三ツ星店。新規の予約はほぼ不可能の超人気店になりました。

スバル「レイバック」とベース車「レヴォーク」の決定的な違い…1200kmのロングドライブで検証!

この真剣な表情を見よ。若い店員さんもピリピリしています Photo by F.Y.

 先ごろは人気寿司店で妙な騒ぎがありましたが、さいとうはそうした騒動とは無縁の店。鮨がおいしいのはもちろんですが、「客あしらい」も名店の重要な要素の一つといえましょう。店が流行ると、それだけ筋の悪い客も増えますからね。

スバル「レイバック」とベース車「レヴォーク」の決定的な違い…1200kmのロングドライブで検証!

極上のまぐろは山幸さんから Photo by F.Y.

東京→宮崎をスバル レフォーグ レイバックでロングドライブ

 週末は試乗車のレヴォーグ レイバックに乗って宮崎に。サーフボードの面倒を見ていただいている赤田夫妻と一緒に海に入りました。今乗っているボードから徐々に短い板に乗り換えようと思っているのですが、果たして乗りこなせるかどうか。乗り方を見てもらい、私に合うボードを作ってもらおうという算段です。

スバル「レイバック」とベース車「レヴォーク」の決定的な違い…1200kmのロングドライブで検証!

サーフショップ兼アンティークショップを経営する赤田夫妻と。赤田氏が持っているのは、私が海外で買ってきた中古のボード。「うーん、今のフェルさんにはちょっと難易度が高いかな」 Photo by F.Y.

 海から上がった後は、日南の名店「にこにこショップ」で弁当を買い求め、鬼の洗濯岩を眺めながらのどかなランチ。良い時間を過ごしました。赤田さん、ありがとうございました。

スバル「レイバック」とベース車「レヴォーク」の決定的な違い…1200kmのロングドライブで検証!

のんびりといい時間を過ごしました。本気で宮崎に家を買おうと思っています Photo by F.Y.

 ……ということで、本編へとまいりましょう。スバルが提案する新しいスタイルの都会派SUV、レヴォーグ レイバックの試乗記をお送りします。

ワゴン車(レヴォーグ)の車高を上げてSUV(レイバック)を造る

 SUVが売れている。登録乗用車におけるSUVの販売比率は既に3割を超えた。都内で道を見渡すと、「走っているクルマはSUVとミニバンばかり」(そして地方に行くと軽自動車ばかり)という状況だ。これは国内市場に限らず世界的な潮流で、各メーカーはSUVを積極的にラインナップしている。メルセデス・ベンツ、BMW、アウディのドイツ御三家は言うに及ばず、昨今ではプレミアムブランドのロールス・ロイスやランボルギーニまで「バスに乗り遅れるな」とばかりにSUVを造り始めた。

 SUV、SUVへと草木もなびく。そんな状況の中で“急遽”造り出されたのが、今回試乗したスバルの“SUV”、レヴォーグ レイバックだ。

スバル「レイバック」とベース車「レヴォーク」の決定的な違い…1200kmのロングドライブで検証!

スバル「レヴォーグ レイバック」 Photo by F.Y.

 位置付けとしては、ワゴン車であるレヴォーグの車高を70mmほど引き上げた「クロスオーバーSUV」である。ワゴン車の最低地上高を上げてSUVに造り変える手法はスバルの得意技で、レガシィツーリングワゴンの車高を上げてアウトバックに、インプレッサの車高を上げてクロストレックに仕上げている。

 このやり方は海外のメーカーでも多く見られる。インプレッサと同じCセグメントだと、ゴルフヴァリアントの車高を23mm上げたフォルクスワーゲンのゴルフオールトラック(このモデルは今のところ日本未発売)。セグメントは違うが、メルセデス・ベンツCクラスステーションワゴンの車高を40mm上げたCクラスオールテレイン。アウディではA4アヴァントの車高を55mm上げたA4オールロードクワトロとして販売している。上げ幅はスバルほど盛大ではないにせよ、いずれもワゴン車の車高を上げ、4輪駆動化し、黒い樹脂製のホイールアーチトリムを装着してSUV“らしい”タフさをアピールしたデザインである。

「都会派」のSUVとは?

 興味深いのは、レイバックの元車であるレヴォーグが発表された段階では、「車高を上げたレイバックは企画されていなかった」というエピソードである。(先に“急遽”造り出された、と書いたのはこのためだ)。レイバックは予想をはるかに超えるSUV市場の沸騰ぶりに押される形で生み出されたモデルと見ることができる。

スバル「レイバック」とベース車「レヴォーク」の決定的な違い…1200kmのロングドライブで検証!

お約束のホイールアーチトリム Photo by F.Y.

 ではこのクルマは、スバルが形勢悪しと慌てて造った即席SUVなのか。

 否。そこは「安心と愉しさ」を提供し、「笑顔をつくる会社」を標榜するスバルである。車高を上げて大径タイヤを履かせて黒モールでお化粧をして、へい一丁上がり、としたわけでは無論ない。“スバルらしく”、実にキッチリ造り込まれている。

 さらに興味深いのは、レイバックが「都会派SUV」を謳っている点だ。今さら「都会派」と宣言せずとも、SUVを“SUV的”に、つまり野山を駆けめぐったり未舗装の林道を走ったりする人は少数派だろう。それはランクルやディフェンダーなどの“本チャン系”でも同じことだ。黙っていてもほとんどのユーザーはSUVを「都会的」に使っている。それをなぜあえて謳うのか。その辺りは開発者インタビューで詳しく聞いてみよう。

東京←→宮崎の往復1200km、レイバックで走ってきました

 今回の試乗は東京から神戸まで高速を飛ばし、神戸からフェリーに乗って宮崎までサーフィンに出かけてきた。往復1000km、宮崎現地で200km、トータル1200km超のロングドライブである。神戸港からフェリーが出港する時間は午後7時10分。前の月にホンダの中国製オデッセイで出かけた時は時間の見積もりが甘く、出港ギリギリの滑り込み乗船でムダに肝を冷やしたので、今回は余裕を見ての出発だ。

スバル「レイバック」とベース車「レヴォーク」の決定的な違い…1200kmのロングドライブで検証!

レイバックのステアリングまわり。太いホイールは握り心地が非常に良い。ステアリングフィールも非常に上質 Photo by F.Y.

 用賀の東京インターから東名高速に上がる。道は空いている。アクセルを強めに踏み込む。力強い加速。フロントに積まれた1.8リッター水平対向4気筒 DOHC 16バルブ ターボエンジンは177馬力を発生し、300N・m(ニュートンメートル)の強力なトルクを絞り出す。車重はわずか1610キロ(サンルーフ装着車)。駆動用バッテリーを積まない純エンジン車は軽いのだ。積載する荷物はわずかな着替えと新しいサーフボードだけなので、ほとんど空荷の状態である。馬力が強く車重が軽いクルマ特有の軽快な加速感。アクセルを踏んだら踏んだ分だけスッと前に出る快適さがある。この加速感は、元車であるレヴォーグと同等だ。

スバル「レイバック」とベース車「レヴォーク」の決定的な違い…1200kmのロングドライブで検証!

スバル伝統の水平対向エンジン。1.8リッター4 気筒DOHC 16バルブ ターボ。後方にインタークーラーのラジエーターが置かれている Photo by F.Y.

スバル「レイバック」とベース車「レヴォーク」の決定的な違い…1200kmのロングドライブで検証!

ボンネット上に置かれたエアインテーク(吸気口)から外気がインタークーラーに導かれる Photo by F.Y.

元車のレヴォーグよりも、レイバックは格段に静か

 だが乗り心地は大きく違う。まず静寂性。レヴォーグよりも格段に静かになっている。基本的にSUVは車高が高くタイヤハウスに余裕があるので、ロードノイズがこもらず音が外に逃げやすい構造になっている。レイバックも55mmリフトアップした分だけレヴォーグよりも静寂性が高い(え?SUVって結構ロードノイズがうるさくない?と思われたそこの貴兄。それはSUVの多くが、ロードノイズの大きいブロックパターンのタイヤを履いているからです)。

 それにしても静かだ。レヴォーグにプラスして防音制音機能を施しているのかもしれない。ここもインタビューの時に聞いてみよう。

 次に挙げられるのが、しなやかな乗り心地だ。道路の段差を乗り越える際の突き上げ感が明らかに減少している。サスペンションストロークの伸びはレヴォーグから10mmである。わずか1センチ。これだけで、ここまで乗り心地が良くなるものなのか。サスペンションとは何と奥深いものだろう。

 車高を上げるとその分重心が高くなるので、クルマはグラグラと揺れやすくなる。カーブの際には大きくロールしやすくなる。そのままだと危ないので、大抵はサスペンションを固めてロールを抑える方向でチューニングを行う。だがレイバックに固さは感じられず、むしろ明確にレヴォーグよりも柔らかくしなやかになっている。レヴォーグはスポーティーな味付けで、キュキュッと小気味良くコーナーを抜けて行けるのが持ち味なのだが、その分ゴツゴツと固い印象がある。レイバックはこのゴツゴツ感がきれいに払拭されているのだ。足回りの開発には相当に心血を注いだものと思われる。

 ただし。当然だが、ロールの量はレヴォーグと比べるとそれなりに大きくなる。

スバル「レイバック」とベース車「レヴォーク」の決定的な違い…1200kmのロングドライブで検証!

レイバックのフロントサスペンション。レヴォーグから10mm伸長されている Photo by F.Y.

 宮崎では車内にサーフボードを積んで波乗りに出かけた。サーフポイントは未舗装路の先にあることが多い。連日の大雨で、アプローチの道はボコボコに削られ、グズグズにぬかっている。中にはガリガリと下を擦ったり、スタックして往生しているクルマもある。都会派を謳ってはいるものの、レイバックの最低地上高は余裕の200mm(その内の25mmはタイヤ径の拡大によるものだ)、下を擦ることはない。しかもスバル伝統の4輪駆動車である。デフやカップリング等の四駆部分の設計はフォレスターやアウトバックと同等で、こうした悪路走行にも十分に耐えうる造りになっている。ドロドロの道も安心して走り抜けることができた。

悪路での走りをサポートする「X-MODE」機能は付いていない

 ただ、残念なことが一つ。このクルマには電子制御でタイヤの空転を抑える「X-MODE」機能が付いていない。フォレスターやアウトバックに付いている、“あの”機能が搭載されていないのだ。今回の試乗ではそこまでヤバい悪路を走っていないので、X-MODEの有用性を確認できていないが、最終的な悪路走破性は“都会派を謳わない方のスバルSUV”に劣ることになろう。

スバル「レイバック」とベース車「レヴォーク」の決定的な違い…1200kmのロングドライブで検証!

こんな悪路でも楽勝だ Photo by F.Y.

 X-MODE未搭載が「都会派」の証しということなのだろうか。ちなみに非都会派であるフォレスターとクロストレックの最低地上高は220mm。アウトバックのそれは213mmである。

 急カーブが続く日南海岸沿いのワインディングでは、ステアリングを切るとアウト側がグッと沈み込み、段差をいい具合に吸収しながら気持ち良くコーナーを抜けていくことができた。調子に乗って飛ばし過ぎると、「おっとっと」というシーンも何度かあった。レヴォーグと同じような調子で運転することは難しい。

スバル「レイバック」とベース車「レヴォーク」の決定的な違い…1200kmのロングドライブで検証!

躾の良いサスペンション。乗り心地は非常にいい Photo by F.Y.

スバル「レヴォーグ レイバック」ここがイイ!&ここがちょっと……

 それでは最後にレヴォーグ レイバックのマルとバツを。

■レヴォーグ レイバックのここが( ・∀・)イイ!!

1.水平対向エンジン:我が国の宝です。未来永劫、造り続けてほしいです。

2.低騒音低振動:高剛性ボディと高剛性サスペンションが生み出す上質な乗り心地。SUVなのにゴツゴツ突き上げ感がなく、ロングドライブでも疲れない。

3.超優秀なアイサイトX:高度運転支援システムであるアイサイトX。テレビのCMで自動ブレーキ制御の安全性ばかりがアピールされているが、実はこの機能の白眉は運転支援にある。高速道路ではほとんど自動運転状態。神戸までの500km、音楽を聴きながら実にリラックスして移動することができた。これは素晴らしい。

スバル「レイバック」とベース車「レヴォーク」の決定的な違い…1200kmのロングドライブで検証!

3眼カメラになったアイサイトX:ユニットはご覧の通りかなり大きい Photo by F.Y.

4.高い悪路走破性:都会派を謳っているが、そこはスバルですから。

5.お値打ち価格:諸物価高騰の折り、この内容のクルマを400万円切りで出したのは立派。最近のクルマ、高いもんなぁ……。

■レヴォーグ レイバックの、ここはちょっとどうもなぁ……(´・ω・`)

1.惜しい全高:古いタイプの立体駐車場の高さ制限は1550mm。対してレイバックの全高はそれよりわずかに高い1570mm。「このクルマは入れませんよ」と駐車場の係員に冷たく言われて絶望する人が多いのではあるまいか。

2.地味な外観:ここはまあ好き嫌いの問題ですね。「都会派」を謳うとこうなるのでしょうか。

スバル「レイバック」とベース車「レヴォーク」の決定的な違い…1200kmのロングドライブで検証!

もっとハデにしても良かったのでは…… Photo by F.Y.

 次号はレヴォーグ レイバックの開発者インタビューをお届けします。お楽しみに!(フェルディナント・ヤマグチ)

AD高橋のレイバック試乗インプレッション

 こんにちは、AD高橋です。

 今週からスタートしたスバル レヴォーグ レイバック編(以下、レイバック)。今週の試乗レポートに続き、来週からは開発者インタビューをお届けします。お楽しみに。

スバル「レイバック」とベース車「レヴォーク」の決定的な違い…1200kmのロングドライブで検証!

今回試乗した、スバルのレイバック(プレスリリースより)

 スバルといえば、水平対向エンジンとシンメトリカルAWDという他メーカーにはない独自の機構を採用しています。先代インプレッサから採用されているスバルグローバルプラットフォームの完成度の高さと相まって、街なかや高速道路はもちろん、ワインディングでも安定感のある走りを味わえるのが魅力。一度スバルの乗り味を体験してしまうとなかなか他のメーカーのクルマに乗り換えられないというのも頷けます。

 私は20代中盤で初代レガシィツーリングワゴン(BF)のGT後期型を中古車で購入。その後、3代目レガシィツーリングワゴン(BH)のGT30を乗り継ぎました。BFを手放す際は友人のフォトグラファーに譲ったのですが、彼はオープンカーに乗り続けていたのにBOXERエンジンの走りにすっかりハマり、以来25年近くスバル車に乗り続けています。

 さて、フェルさんにスバルからお借りしたレイバックを渡すために運転席に乗り込み、インパネ中央にある大型のインフォメーションディスプレイに目をやると、思わずニヤリとしてしまいました。

スバル「レイバック」とベース車「レヴォーク」の決定的な違い…1200kmのロングドライブで検証!

レイバックのインフォメーションディスプレイ。ナビ画面の左上にはアクセル開度、右上には油温を表示 写真:AD高橋(以下すべて同)

 ナビ画面の左上に表示されるアクセル開度表示、そして右上には油温が表示される。こういうさり気なくドライバーの心をくすぐるギミックがスバルらしいです。

 CVTを含む2ペダルのATが当たり前になった現在では、タコメーターが搭載されないクルマも珍しくありません。水温計も警告灯のみ搭載していて、まだ水温が温まっていないときは青い表示が出るものの、温まった後は水温の状況が分からない(警告灯が点灯していないので平常なのですが)クルマも多くなっています。

スバル「レイバック」とベース車「レヴォーク」の決定的な違い…1200kmのロングドライブで検証!

レイバックのインフォメーションディスプレイ。ドライバー正面の表示

 スポーツモデルだと油温だけでなく油圧やブースト圧などさまざまな情報を表示するモデルもありますが、ワゴンベースのSUVでアクセル開度まで表示されるのは楽しいです。スピードメーターとタコメーターが表示される12.3インチ液晶メーターには車両がグラフィカルに表示され、アイサイトの作動状態などを確認できます。ウインカーを使うと、ここに表示される車両もチカチカとウインカーが点滅します。ただ、こちらはアニメーションなので実際のウインカーの点滅とはズレが生じるのはご愛嬌。

スバル「レイバック」とベース車「レヴォーク」の決定的な違い…1200kmのロングドライブで検証!

レイバックのシフトノブ

 ハイブリッドカーや電気自動車だとシフトレバーがジョイスティックサイズだったり、ボタン式だったりするものも多くなりました。指先で操作できるのは楽なのですが、一方でどこか心もとない感じもあります。

 レイバックをお借りする数日前に最新EV3台を乗り比べる撮影を行っていたこともあり、レイバックのどっしりしたシフトノブの操作フィーリングはとても頼もしく感じました。(AD高橋)

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