中国製「EV」にアメリカがとどめを刺す…
中国製電気自動車(EV)は、国内の売上が減少しているばかりか、アメリカへの輸出が滞ろうとしている。中国政府は多額の補助金を出してEV産業を育成してきたが、ここにきて窮地に立たされている。
3月7日、アメリカの上院議員がバイデン大統領に中国製電気自動車(EV)の輸入関税を引き上げるよう求めた(ロイター・3月8日付)。
中国のEVメーカー大手「BYD」の輸送船 Photo/gettyimages
3人はゲーリー・ピーターズ、デビー・スタベナウ、シェロッド・ブラウンの各議員で、いずれも民主党議員。うちピーターズ議員とスタベナウ議員は、アメリカの自動車産業の集積地として知られるミシガン州の選出だ。
「中国製EVは安全保障上の重要なリスクをもたらす」
「EVや自律走行車はドライバーや車の位置、車の周囲に関する膨大な情報を収集しており、そのデータがすべて中国政府に渡っているのではないか」
バイデン政権は、中国から輸入される自動車への追加関税と米国民の個人情報を保護する大統領令を検討している。
アメリカ「中国EV」への規制強化へ
中国の今年の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)は、3月11日に閉会した。例年以上に世界の注目が集まったが、わかったことは「中国政府が出口の見えない経済の低迷をどのようにしていいのかわからない」という不都合な真実だけだった。
2月の消費者物価指数(CPI)は前年比0.7%増と6ヵ月ぶりにプラスに転じたが、「春節の一時的効果で終わり、早晩、マイナスに戻る」との見方が一般的だ。
バイデン大統領も規制強化を始めた…Photo/gettyimages
ところが、頼みの綱の「輸出」への希望を断ち切ろうとしているのが、米中の安全保障問題だ。米国政府は今年に入り「安全保障」をテコに中国に対して圧力を高めようとしている。中でも厳しい標的にさらされているのが「EV」なのだ。
やり玉にあがった「“つながる”中国EV」
先述したとおり、「中国製EVは安全保障上の重要なリスクをもたらす」と語ったレモンド米商務長官の懸念の先には、自動運転で自律走行するEVが収集する膨大なアメリカ国内の情報収集があり、そのデータはすべて中国政府が掌握しているのではないかとの疑念がある。
米ホワイトハウスは2月29日、「インターネットに常時接続する中国製のコネクテッドカー(つながる車)に対して安全保障上のリスクを根拠に調査を開始した」と発表した。
ホワイトハウスは「調査の結果次第では、輸入規制もあり得る」としている。
中国側は「根拠がない」と調査の撤回を求めているが、「米国の自動車産業労働者を守る」と公約するバイデン大統領の政治的思惑が絡んでおり、米国側がこれに応ずることはないだろう。
自動運転をはじめ「中国製の”つながる”クルマ」への警戒が強まっている…Photo/gettyimages
中国製EVは今後窮地に陥り、中国経済はますます泥沼化することが懸念される。
さらに後編記事『アメリカが「中国EV」にブチギレ…!「虎の子EV」の壊滅で窮地に立つ習近平「経済対策」の悲惨すぎる中身』では、中国製EVを皮切りに中国製品を敵視し始めたアメリカと追いつめられる習近平の現状について、詳しく見ていこう。