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中国のBYD「ATTO3」、個性的な内装と価格が魅力的なクルマ

中国のbyd「atto3」、個性的な内装と価格が魅力的なクルマ

ボンネットの内部。左右の端に塗り足した部分があった

 中国の自動車メーカー「BYD」の電気自動車(EV)「ATTO3(アットスリー)」に試乗した。個性的なインテリア(内装)は好き嫌いが分かれそうだが、クルマとしての基本性能に問題はなく、価格が魅力的なクルマであった。

 BYDは1995年にバッテリー(電池)メーカーとして創業した。携帯電話向けから始まり、2003年に経営破綻した国営自動車メーカーを買収し、自動車事業に参入。2022年にはEV販売台数が首位の米EV大手テスラに次ぐ約91万台(プラグインハイブリッド=PHV=などは除く)に達し、2023年から日本での乗用車販売をスタートした。今年は日本でこのクルマも含めた3車種を発売する予定だ。100年近い歴史をかけて成長してきた日米欧の大手自動車メーカーとは比較にならないほどのスピード出世で、いかにEV市場が世界で急拡大してきたかを示している。

■筋肉とダンベルをイメージした個性的なデザイン

 運転席に座ってみる。まず目に入るのはやや個性的なデザインだ。運転席から助手席にかけて縞(しま)模様のパネルが貫く。また、前席中央にあるエアコンの吹き出し口も個性的な形状をしている。前者は人間の筋肉、後者はダンベルをイメージし、全体としてフィットネスジムを表現しているそうだ。座席のドアポケットもギターのデザインで、弦の部分を弾くと実際に音を奏でる。

 機能的な部分は、SUV(スポーツ用多目的車)らしく着座位置が高めで見通しが良く、ウィンカーレバーが日本向けに右側仕様になるなど配慮されている。

 人によって好き嫌いは分かれそうだが、伝統的な自動車メーカーではこれほど前衛的なデザインを採用するのはなかなか難しい。新興メーカーらしい発想の斬新さは面白いと感じた。

■バッテリーメーカーという特性を生かした車体

 電池は、同社独自のブレード(刃)バッテリーという長方形の板状のものを使用している。創業がバッテリーメーカーという特性を生かしたもので、車体下部にこのブレードバッテリーを敷き詰めることで車体骨格と同等の効果があり、車体剛性および安全性を向上させた。リチウムイオン電池は発火する危険性があるが、リチウムの中でも安全性が高いリン酸鉄系を使用している。また、1回の充電で走れる最大距離は約470キロだ。

 実際に運転してみると、車体下部に電池が配置されているため、安定性が増して運転しやすい。モーターの加速性能も問題なく、回生ブレーキは弱めの設定になっているため、ガソリンエンジン車と同じ感覚で運転ができた。

 乗り心地はやや柔らかめで、日本や欧州メーカーのクルマとは異なる。中国本国の好みが柔らかめと聞いたことがあるので、同じ仕様なのだろう。

 EVは車体下部に電池を置く構造が多く、室内の高さがとれない閉塞(へいそく)感を減らすため、サンルーフを設置するクルマが多い。このクルマの場合、長さ約1270ミリ、幅約870ミリと大型のサンルーフで、完全開放にして外の空気を取り入れることも可能だ。天気の良い日は開放感あふれるドライブになる。

■伝統的な自動車メーカーとは異なるEV専業メーカーのクルマ

 個性的なデザインだが、欧州メーカーのデザイナー経験者を起用するなど奇をてらった要素はない。また、外観デザインでは買収した日本の金型メーカーの高い技術力を感じさせる部分があった。一方で、ボンネット内部に塗装を塗り足した跡などもあった。

 米テスラ、BYDなどEV専業メーカーのクルマは、伝統的な自動車メーカーのクルマとは異なる気がする。スマホと連動した音楽や映像などのエンターテインメント性や様々な運転支援システムの充実による運転のしやすさなどを重視。一方、走行性能を優先する側面は弱い気がする。今後クルマの選び方が変わっていくのかもしれない。EV専業メーカーのクルマに試乗し、伝統的な自動車メーカーがつくるクルマとの違いなどを実感するのも面白いと思う。(デジタル編集部 松崎恵三)

【仕様・主要諸元】

 ▼全長・全幅・全高(ミリ) 4455・1875・1615

 ▼最高出力(kW)     150

 ▼バッテリー容量(kWh)  58.56

 ▼価格 440万円(オプションは除く)

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