ニュース

パーソナルファイナンス

ビジネス

自動車

EVで運転学び直し 5車種の試乗で分かったこと

evで運転学び直し 5車種の試乗で分かったこと

EVで運転学び直し 5車種の試乗で分かったこと

 電気自動車(EV)を運転するには、ガソリン車の知識を捨て去る必要がある。とんでもない加速の速さや図書館のような静かさ以外にも、車の電源が入っているのをどうやって確かめるのかなど、新しい複雑な操作に対処しなければならない。

 EVを買ったり借りたりすることを考えている人は、慣れるまで時間がかかることを覚悟しておくべきだ。

 筆者は家族で使う2台目の車を選ぶために、6万ドル(約880万円)以下のEVを5車種テストした。フォード・モーターの「マスタング・マッハE」、現代自動車の「アイオニック5」、起亜の「EV6」、テスラの「モデルY」、フォルクスワーゲン(VW)の「ID.4」だ。テストを勝ち抜いたのは、筆者の自宅のガレージに現在止まっている「マスタング・マッハE」だ。

 EVを試したのは、次の車を探すためだけではない。バッテリー電力への移行によって、自家用車がいかにスマートフォンやコンピューターのような電子機器へと化すかを確かめたかったこともある。テクノロジーは100年の歴史を持つ産業を根底から覆しつつある。

 EVを採用する人にとって、それはこれまでに得た運転知識の多くにさよならを告げることを意味する。筆者がEVに買い替える前に教わっておきたかったと思った点を以下に説明する。

 「車のドアハンドルは使い方が簡単過ぎる」などとは誰も言っていない。それでもEVメーカーは革新が求められていると考えたようだ。

 フォード・マスタングでは、ドアに付いた丸いボタンを押せば、ドアが自動的に開く。起亜のEV6と現代のアイオニック5では、ハンドルがドアに埋め込まれており、解錠すると飛び出てくるようになっている。テスラのモデルYでは、ハンドルの幅が広くなった部分を押してからハンドルの細長い部分を引っ張る仕組みだ。幸いそれを説明したGIF画像もある。

 VWのID.4のハンドルはハンドルらしい見た目をしているが、引っ張る必要はない。下にセンサーが付いているためだ。もちろん、自分の車であれば開け方を学ぶだろうが、不慣れな人が乗り込もうとするのを見るのは楽しいだろう。

 車に関する遊びで筆者が最も苦手なのが、電源ボタンとの隠れんぼだ。

 「テスラの電源の入れ方」というフレーズは、筆者のグーグル検索履歴に永遠に焼き付けられることになるだろう。電源ボタンが全然見つけられなかったのだ。その理由は、ボタンはないからだ。

 テスラは物理的なキーフォブ(キーホルダー型の鍵)ではなく、ホテルのようなカードキーを提供している。テスラのスマホアプリを鍵として使用することもできる。モデルYのドアを開くと、タッチスクリーンの電源がオンになり、全てのコントロールを操作できる。始動するにはブレーキペダルを踏み、シフトレバーを「ドライブ」モードに動かす。

 VWのID.4もだいたい同じだ。アプリかキーフォブを持っていれば、運転席に座った際に自動車の電源が入る。ブレーキペダルを踏むと、運転システムが起動する。

 フォード、現代、起亜は従来の「スタート/停止」ボタンを採用している。キーフォブもあるが、アプリを鍵として設定することも可能だ。

 従来のオートマ車はブレーキペダルから足を離すとゆっくり前に進む。EVは概してそうではない。動かすには、アクセルペダルを踏む(バックするときでさえ踏むが、これはちょっと緊張する)。アクセルペダルから足を離すと減速し、おのずとブレーキがかかる。ブレーキペダルを踏むのは、減速が十分でない場合だけだ。

 ほとんどのEVは、アクセルペダルだけで運転する「ワンペダル走行」ができるようになっている。

 その理由は「回生ブレーキ」にある。モーターを使用してエネルギーを回収し、バッテリーに戻す技術だ。ハイブリッド車(HV)でもしばしば使用されているが、EVでは要となる機能だ。

 初めは素早い自動的な減速に不安を感じるかもしれない。同乗者が吐き気を催したり気分が悪くなったりする場合もあると話す人もいる。ご心配なく。多くのEVでは回生ブレーキ設定をオフにしたり、利き具合を最小限にしたりできる。VWは優先さえしておらず、回生モードを選ぶ必要がある。標準の運転モードは従来車に近い走行感だ。

 しかし、筆者は今や完全なワンペダル走行派だ。実際、自宅にもう1台あるボルボのガソリン車を運転するときは、ブレーキペダルを踏むのを忘れないようにする必要がある。

 エンジンをかけると「ブルン、ブルン」という音が鳴る内燃エンジン車と異なり、EVの音は未来のゴルフカートのようだ。筆者はマッハEではスタートをやり直すことになった。エンジンが始動したかどうかが分からなかったためだ。

 米道路交通安全局(NHTSA)は、歩行者(特に目の不自由な人や弱視の人)を保護するため、「静音自動車」向けのガイドラインを設定している。時速19マイル(約31キロ)以下では、車は何らかの音を出さなければならない。筆者が所有するマッハEはバックする際にビープ音が鳴る。モデルYはSF映画「E.T.」に登場する宇宙船のような「ヒュー」という音がする。

 合成音を使用してEVから従来車のような音が出るようにしている自動車メーカーもある。マッハEでは、「アンブライドル(全開)」モードにしてアクセルペダルを踏み込むと、内燃エンジン車のような音がする。 

 自動車に関する史上最も偉大な発明は、給油口が左右どちら側にあるかを教えてくれる燃料計の小さな矢印であることに異論はないだろう。EVに関しては、充電口の場所は標準化されていない。筆者が試乗したEVの内部には便利な矢印は見当たらなかった。実は現代と起亜はタッチパネルに小さな矢印が表示されており(筆者は見落としていた)、VWは充電口の場所を示す気の利いた図があるが、設定で数タップする必要がある。

 これも自分の車であれば覚えるだろう。ただ、なかなか慣れないのは、多くの充電ステーションは充電ケーブルが短いため、ノズルを充電口に差し込めるようにするには車を後ろ向きで駐車する必要があることだ。

 一つ明確にしておきたいのは、ここで書いたことは「ガイダンス」であって、「ぐち」ではないということだ。読者もきっとEVの運転が大好きになるだろう――車への乗り込み方と電源の入れ方が分かるようになれば。

***

――筆者のジョアンナ・スターンはWSJパーソナルテクノロジー担当コラム二スト

TOP STORIES

発見・体験、日本旅行に関する記事
Top List in the World