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トヨタが新型PHVで攻勢、狙うは「現実的なEV」

トヨタが新型phvで攻勢、狙うは「現実的なev」

トヨタが新型PHVで攻勢、狙うは「現実的なEV」

 トヨタ自動車は来月、新型プラグインハイブリッド車(PHV、PHEV)を米国で発売する。背景には、ガソリン車から電気自動車(EV)への移行でPHVは橋渡し役になれるとの読みがある。

 トヨタのほか、フォード・モーター、現代自動車も新型PHVを発売する。現在、ハイブリッド車の大半はエンジンと電力モーターの双方を使用して燃料の消費を抑制する仕組みだ。一方、PHVは主にバッテリーで走行し、エンジンは充電切れへの備えという位置づけで、完全な純EVに限りなく近い存在になっている。

 トヨタはPHVを「プラクティカル(現実的な)バッテリーEV」として再定義することを狙う。念頭にあるのは、大半は電力で走行したいが長距離運転には不安があるという、車通勤の平均的な米国民だ。5月から米国のディーラー店舗への納車が始まるPHVの2023年モデル「プリウス・プライム」は、バッテリーだけで最大44マイル(約71キロ)の走行が可能だ。

 環境保護団体の間では、化石燃料を燃やすため、PHVは環境対応車としてなお十分ではないとの意見が支配的だ。業界アナリストからも、テスラ車をはじめ純EVへの関心が急速に高まっている中で、PHVに商機があるのか疑問視する声が聞かれる。

 PHV市場にとっての大きなリスクは規制の行方だろう。例えば、カリフォルニア州は電動化への移行を義務づける規定においてPHVを制限、もしくは除外する方向へと向かっている。

 トヨタの佐藤恒治社長は21日、「BEV(バッテリーEV)がスピードを上げて普及していく地域と、もう少し時間がかかる地域の両方がある」と述べ、PHVへの投資は電動化への移行を実現する現実的な方法だとの考えを示した。

 また、トヨタの目標はPHVの航続距離をできる限り純EVに近づけることだと佐藤氏は説明した。トヨタは今月、EVモードで200キロ以上走行可能なPHVを開発する計画を明らかにしている。

 佐藤氏は「PHEVの捉え方を変えていきたい」と述べた。

 EV充電拠点は世界的にまだ不足しており、充電設備があったとしても、問題を抱えていることが多い。調査会社JDパワーの報告書によると、米国では昨年、公共のEV充電拠点で約2割は充電できないケースが発生した。

 米国では、先月のEV平均価格が5万8940ドル(約790万円)となっており、ディーラー関係者はEV本格普及への障害になっていると話している。これに対し、プリウス・プライムは3万3445ドルからだ。

 シカゴ周辺でディーラー網を家族経営するハンリー・ドーソン3世さんは、航続距離の制限や充電の問題による大変さを十分に理解できていなかったことが分かり、多くの顧客がEVを返却すると話す。「そこから、ハイブリッドについて問い合わせる」

 PHVは世界のライトビークル(乗用車・小型商用車)販売の約4%に過ぎないが、近年は増加傾向にある。昨年のPHV販売台数は前年比46%伸びた。コンサルティング会社EVボリュームズが分析した。これに対し、EVは59%増だ。

 米国では現在、30モデル以上のPHVが販売されている。米財務省が4月17日に公表したリストによると、フォードとステランティスのPHVは、EV税控除(全額・一部含む)の適用要件を満たした16モデルのうち六つを占める。

 米国では、フォードのスポーツ用多目的車(SUV)「エスケープ」や現代のクロスオーバーSUV「ツーソン」など、新型PHVの投入が続く。トヨタは今月、さらなるPHVの発売を予定していると明らかにした。

 とはいえ、中国に加え、米国や欧州の一部でも純EVの販売が拡大に向かう状況下で、PHV市場の持久力を巡っては疑問も生じている。ゼネラル・モーターズ(GM)は純EVの開発に資金を投じる方が投資効率が良いとして、米国では今後ハイブリッド車は投入しない考えを示している。

 ムーディーズ・インベスターズ・サービスは最近の報告書で、2030年の世界販売に占めるPHVのシェアについて全体の7%と予想し、従来の9%から下方修正した。半面、純EVは同時期に全体の約3割を占めるまでになるとし、従来の約25%から引き上げた。

 ムーディーズはその理由の一つとして、ハイブリッドがエンジンと電力モーターの両方を搭載している点を挙げ、「余分な推進システムを生産するコストの高さ」を指摘している。

 カリフォルニア州では、新車登録に占めるPHVの割合が約3%で頭打ちが続く一方、EVは昨年、新車登録の6台に1台を占めるまでに急拡大した(カリフォルニア州新車ディーラー協会調べ)。

 同州では2026年モデルから、販売する自動車の35%をゼロエミッション車(ZEV)とすることが義務づけられる。PHVがゼロエミッション車と認められるには、EVモードで50マイルの航続距離が必要であり、また各メーカーが販売するゼロエミッション車のうち、PHVが占める割合は2割が上限となる。

 カリフォルニア州新車ディーラー協会のブライアン・マース会長は、EVモデルの普及や自動車メーカーが掲げる純電動化戦略が、消費者にEV購入を促しつつあると話す。「EVを試してみようという方向に影響を与え始めている」

 もっとも、マース氏自身はPHVを好む。今の車は4台目のPHVで、純EVモードの航続距離は約40マイルだという。

 「通常の通勤にはEVモードで運転し、(環境問題への取り組みで)自分の責任は果たしていると感じられると同時に、長距離運転では別の選択肢を確保できる」と話すマース氏。「私にとって、これは理にかなっている」

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