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レッドブルの”最高速”のアドバンテージ……その秘密はビームウイングの構成にあり

 メルセデスのルイス・ハミルトンは、ハンガリーGPの際に「レッドブルはもはやDRSのアドバンテージを手にしていない」と発言した。実際ハンガリーGPでは、ハミルトンがフェルスタッペンを0.003秒上回り、ポールポジションを獲得。今季圧倒的な強さを見せてきたレッドブルに風穴を開けた。しかし、レッドブルのDRSにおけるアドバンテージが失われたというのは、事実なのだろうか? そして今後のグランプリでも、同じような傾向になるのだろうか?

 2023年のF1は、レッドブルが圧倒的な強さを見せ、開幕から11連勝。1988年のマクラーレン・ホンダが持つ、開幕からの連勝記録に並んだ。その強さは決勝レースのみならず、予選でも同様。唯一土をつけたのは、第4戦アゼルバイジャンGPのシャルル・ルクレール(フェラーリ)のみだった。

 しかし先日行なわれたハンガリーGPでは、メルセデスのハミルトンがポールポジションを獲得。フェルスタッペンとの差は3/1000秒と僅差だったが、それでも打ち破ったことには変わりない。

 ポールポジションを獲得した際、ハミルトンは次のように語り、それ以前のレッドブルが手にしていたDRSのアドバンテージが、一気に失われたと語った。

「彼らにはもちろんDRSはあるけど、突然そのアドバンテージを失ったみたいだ」

 ハミルトンはスカイスポーツF1に対してそう語った。

「一体それはどこに行ったんだろうね?」

「彼らはアップデートを投入した。それによって彼らが新たな一歩を踏み出すことになるだろうと考えていた。それは0.2秒程度と聞かされていたんだ。でも、予選でそれを引き出すことができなかったのは、とても興味深いことだ」

 確かにシーズン序盤、レッドブルはストレートスピードで大きなアドバンテージを手にしていた。それは、DRSを開いた時にはより顕著になった。

 ただハンガリーGPのスピードトラップを見ると、たしかにレッドブルのトップスピードは、ライバルとはそれほど大差はない。

 フェルスタッペンのスタート/フィニッシュラインの最高速は260.9km/hであり、そこからターン1手前に設定されたスピードトラップまでの間に、304.9km/hまで加速している。その差は、44.9km/hである。一方ハミルトンは、スタート/フィニッシュラインで260.3km/h、スピードトラップで304.9km/hと、フェルスタッペンとほとんど変わりはない。

 これは、シーズン序盤のサウジアラビアGPとは大きく異なるデータだ。当時のフェルスタッペンは、スタート/フィニッシュラインで311.9km.hを記録し、スピードトラップまでに337.5km/hへと加速している。対するハミルトンは307.9km/hから329.7km/hへと加速……その最高速は、フェルスタッペンとは約8km/hもの差があった。当時のハミルトンはレッドブルの速さについて「あんなに速いマシンは見たことがない」と語ったものだ。

 確かにハンガロリンクのメインストレートは、サウジアラビアのコースよりもかなり短い。しかしそのアドバンテージが少なくなっているのは明らかである。そのため、何らかの巧妙なトリックを削除するよう、レッドブルに通達が下されたのではないか……そんな陰謀論まで飛び出す始末であった。

 ただあるエンジニアは、このDRSの効果が減っているように見える原因は、ビームウイングの構成に依存しているのではないかと示唆する。

レッドブルの”最高速”のアドバンテージ……その秘密はビームウイングの構成にあり

Lewis Hamilton, Mercedes-AMG, 3rd position, inspects the car of Max Verstappen, Red Bull Racing RB19, 1st position, in Parc Ferme

Photo by: Steven Tee / Motorsport Images

 レッドブルのDRSの効果が大きいということは、他のマシンに比べてRB19のリヤウイングは空気抵抗が大きいということを示唆していると思われる。そのため、DRSを使った時には、ライバルよりも多くの空気抵抗を減らすことができるとすれば、辻褄が合う。

 レッドブルのマシンは、より大きなリヤウイングを搭載した方が、バランスが良いのだろう。しかしその一方で、ビームウイングの大きさは他のチームと比較してはるかに小さい。

 ビームウイングは、ディフューザーの効果を高める空力パーツと言える。これにより効果的にダウンフォースを生み出すことができるため、現代のF1マシンにはなくてはならないモノと言えるだろう。

 しかしその代償もある。大きなビームウイングを搭載すれば空気抵抗が増え、DRSを使う使わないに関係なく、最高速は下がるということになるわけだ。しかしレッドブルはフロア下とディフューザーのパフォーマンスに大いに自信を持っており、ビームウイングに頼る必要性が他のチームよりも少ないのだろう。

 ただ、最大限のダウンフォースが必要なサーキットでは、レッドブルとて大きなビームウイングを装着する。そうなれば、DRSの効果は現れない。まさにそれが、ハンガリーで起きていた現象だと想像することができる。

 つまり、ダウンフォースをそれほど必要としないサーキットでは、ビームウイングを薄いモノにするか、あるいは1枚にしてくるはずだ。そうなれば、彼らの最高速におけるアドバンテージが復活するのは間違いない。

 今週末に行なわれるベルギーGPの舞台であるスパ・フランコルシャンは、かつてはテクニカルサーキットと言われ、大きなダウンフォースを必要としていた。しかし今では、F1マシンのグリップ力が増し、各車のダウンフォースが削られるようになった……つまり超高速サーキットの仲間入りを果たした。

 そう考えると、レッドブルがビームウイングで発生する空気抵抗を削り取ってくるのは必至と思われる。つまり、DRSのアドバンテージは復活する公算が高いと言えそうだ。

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