【レパードS】ライオットガールが13年ぶりとなる牝馬V サバイバル戦を粘った上位3頭の今後に期待
夏の新潟ダート1800mはシニスターミニスター
この時期の3歳限定戦となれば、古馬との対戦歴は一つの指標になる。今年は2勝目を挙げた直後の馬こそ複数いたが、3勝馬のうち、古馬相手のダート戦で3勝目を挙げたのはライオットガール1頭だった。世代限定戦で3勝目を挙げたエクロジャイトやパクスオトマニカと比べても見劣りしない実績がそのまま結果につながった。ユニコーンSやJDDを戦ってきた馬たちがいない状況を考えると、順当と言えば順当な結末といえる。
5番人気ライオットガールの単勝1190円は素直に実績をもの差しにした方には、おいしい配当だったであろう。最近は前走1着馬を高く評価する傾向、つまり連勝を期待したい気持ちが強いので、前走3勝クラスとはいえ、4着と敗れていたのはイメージが悪かったか。さらにいえば、ライオットガールが牝馬だったことも引っかかったのかもしれない。ダート中距離で牝馬が牡馬相手に互角に戦うのは簡単なことではなく、実際、15回目になるレパードSも牝馬の勝利は2010年、第2回のミラクルレジェンドしかいない。同馬はこの勝利を皮切りに中央・地方のダート重賞8勝。なかでもGⅠ格はJBCレディスクラシック連覇の2勝。ダート中距離戦線に君臨する女王に成長していった。ライオットガールもミラクルレジェンドと同じく、女王への道を一歩前に進めたことになる。
ダートの速い時計への対応がエーピーインディ系シニスターミニスターの武器でもある。そして新潟ダート1800mの特注種牡馬だ。なかでも速い時計が記録されやすい夏に強く、2012年以降、今年7月30日までにあげた19勝のうち、16勝を7~9月に挙げている。裏を返せば、春は未勝利、秋は3勝にとどまる。ライオットガールの母父ハーツクライも新潟ダート1800m巧者が多く、同期間で25勝を挙げた。そんな新潟ダート1800m巧者の血に母系のヌレイエフからスピードの持続力を強化されたライオットガールは血統から成長力も見込め、まだまだ上を目指せる。
ハイペースを前で粘り通した上位3頭
レース内容は伏兵ルクスフロンティアが飛ばし、前半1000m通過1:00.5のハイペースを演出した。ダートで前半から突っ込んで入ると、後方からの追い込みが決まりそうなものだが、同時についていけない馬から脱落していくサバイバル戦にもなるので、前にスピードの持続力とスタミナに長けた馬がいると、後ろは追走段階でスタミナを削りとられてしまう。今回はまさにそんなレースの典型であり、4コーナーを4番手以内で回った上位3頭と同じ位置にいた4着エクロジャイトとの差は5馬身と開いた。ついていける馬が限られたレースだったということは、勝ったライオットガールと背後から際どく迫った2着オメガギネス、逃げて3着に粘ったルクスフロンティアは素直に評価した方がいいだろう。
3着ルクスフロンティアは秋山真一郎騎手と手が合う。コーナーが急で、差し馬が追い上げにくい新潟ダートの特徴をよく知るベテランは、迷わず先手を選んだ。これが好走の最大の要因だろう。半端にやるのではなく、策を施すなら思い切って。けれん味ない逃げがレースレベルを一段引き上げたといっていい。父エピファネイア×母父ステイゴールドといえば、今週の小倉記念に登録があるアップデート(3勝クラス)や抹消になったリスペクト(2勝クラス)など芝の中距離を主戦場にする馬が多いが、ルクスフロンティアのしぶとさは、いかにもダートでこそといったタイプで、この血統の新たな可能性を示してくれそうだ。
ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース個人オーサーを務める。新刊『キタサンブラック伝説 王道を駆け抜けたみんなの愛馬』(星海社新書)に寄稿。
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