SUPER GT 2022年シリーズの最終戦がモビリティリゾートもてぎで6日行われた。GT300クラスに参戦する61号車スバル『BRZ』はシリーズランキング2位で今大会を迎え、優勝すれば逆転でチャンピオンに輝く。追いかける立場のチームは最後まで攻めの姿勢を貫き通した。
SUPER GTのレギュレーションでは、ドライバーポイントは優勝すると20ポイントを獲得し、以下2位15、3位11、4位8、5位6、7位4、8位3、9位2、10位1となる。また予選ポールポジションを獲得すると1ポイント獲得し、最終的にシリーズが終わったときに、最大ポイントを獲得したドライバーがチャンピオンに輝く。
2015年からコンビを組む井口・山内両選手は、2021年に悲願のチャンピオンを獲得し、史上初となる2連覇に向け挑んでいた。2020年はライバルの56号車GT-Rがチャンピオンを獲得していて、2連覇目指していたところを阻止されたこともあり、56号車は是が非でも2022年のチャンピオンを獲得したいという思いがあった。今シーズンは互いに優勝を1回獲り、ポイントを地道に積み上げ最終戦で2.5ポイントという僅差での戦いになった。もてぎでは56号車や10号車が練習走行から好調をしめしていた。BRZも良いタイムがでており、三つ巴の雰囲気がサーキットには溢れていた。
Q1予選A組で出走した10号車が1’45.939、56号車が1’45.989というタイムを出す。61号車は予選B組で出走し1’45.863のタイムを出してQ2予選に挑むことになった。
壁に激突した山内選手自身には怪我は無かったがマシンは大きく損傷してしまう。ピットに戻ったマシンを見て山内選手は涙を流しながら、マシンをいつまでも「ごめん」と謝っていた。
このことにより予選は中断され、再開後のわずかな時間でのタイムアタックは、時間の問題やタイヤのパフォーマンスの問題で波乱が起き、ランキング上位の56号車は7番手、10号車は8番手となる。
決勝がスタートしてもトラブルは完治しておらず、パワーが出ないことで16位スタートから22位まで順位を落としてしまう。レースは多重クラッシュやFCY、SC走行などがあり波乱のレースとなった。その中で前半スティントを担当した井口選手は、なんとか走れる方法を探りだしてトラブルを抱えながらも走り続けた。20周をすぎて山内選手に交代してコースに復帰する。懸命に追い上げ、まるでトラブルが無かったかのような走りを見せて13位まで順位を押し上げることに成功した。
しかし下位から順位を押し上げる懸命の走りにより燃料が足りない懸念が出てきた。チームを率いる小澤総監督は、最後に少しだけ燃料を足すよりもギリギリ走り切れるかもしれないところに賭けてそのまま走らせる。ファイナルラップの第3セクターでガス欠でストップしてしまいチェッカーは受けられなかった。最終的な順位もストップにより他車に抜かれたことで20位完走扱いとなった。
井口選手は「悔しいですけど、山内選手の予選の走りはポールを狙うために攻めた走りをした結果のクラッシュですし責めることはできません。決勝レースの最後に燃料ギリギリまで使い切って止まったのも、攻めた結果でのことなのでチームがとった戦略は正しかったと思います」とコメントする。
山内選手は「自分のミスのせいでこの流れになってしまい、アタッカーとしてはやってはいけないことだったと思います。チームのみんなが必死になって修復してくれたマシンで走れることに感謝して追い上げましたが、最後は燃料が足りなかった。ゴールまでマシンをもってこられなかったことが非常に残念でならない。多くの人に励ましのコメントをもらって、すごく感謝しています」と目を潤ませながら気丈にふるまい語ってくれた。
小澤総監督は「今シーズンは全戦ポイントを獲るという目標がありましたが、いくつか獲りこぼしたところもありました。しかし去年よりもチーム力もアップして、レベルもぐんとアップしています。最後は残念な結果になってしまいましたが、攻める姿勢をもって挑んだ結果ですのでやりきったと思っています。ただ新しい課題も見つかっているので、来年向けてその課題を克服していかなくてはならない。今まで課題をみんなで乗り越えていきチームワークも良くなっているので、来年はもっと強いマシンを作って頑張りたいと思います」とコメントをした。
GT300クラスはバラエティに富んだマシンが参加しており、排気量もパワーも違う。BoPにより戦闘力の均等化は図られているが、最小排気量で挑むBRZには厳しい面もある。排気量の少なさをパワーでカバーすると燃費が悪化する。すると燃料を多く積みピットストップの時間も長くなる。相反する課題を克服しながら、多くのファン声援を味方につけて来年もチャンピオン獲得を目指してシリーズを戦っていく。