3月11日から2日間、岡山国際サーキットでスーパーGTの公式テストが実施された。参戦する全チームが一堂に会する今季初めてのテストとあって、パドックでの話題はもっぱら「今季の勢力図はどうなるのか?」という点に終始した。
もちろん岡山での2日間のテストだけで今季の勢力図を断定するのは早計であり、かといって3月下旬の富士テストを終えても本当のパワーバランスは見えてこないかもしれない。実際、GT500の各メーカーの関係者は異口同音にライバルを警戒するコメントを残し、「蓋を開けてみなければ分からない」と締めくくるのが通例となっている。ではそんな中で、具体的にはどのメーカーがどのように警戒されているのか?
まず今季最大の変更点であるカーボンニュートラルフューエル(CNF)との適合について。化石燃料非使用ながら既にガソリンと遜色ない性能を発揮しているCNFだが、それぞれが少しでも燃焼効率を上げるために奮闘している。CNFから最大限の力を引き出せるかどうかは間違いなく重要なファクターになるだろう。
そんなCNFの扱いについては、日産が一歩抜きん出ているのではないかという声が多く聞かれる。37号車Deloitte TOM’S GR Supraの笹原右京は、CNF導入によるパワーダウンは全体的に少ないものの、日産が特に少ないようだとコメント。8号車ARTA MUGEN NSX-GTの大湯都史樹もCNFについて「日産は“良いところ”を見つけてきているんじゃないかと思います」と話していた。
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しかしそうではないと語るのが、ディフェンディングチャンピオン、1号車MARELLI IMPUL Zのふたり。ベルトラン・バゲットはこう語る。
「僕はそうは思わない。他のマシンも見ていたが、大体同じようなパワーだと思う。誰もフルパワーではないはずだ。日産が他よりも何かを隠していることはないと思う」
そしてチームメイトの平峰一貴も同じく日産のアドバンテージを否定し、次のように語った。
「僕たちにアドバンテージがあるとは思いません。ホンダは昨年に比べてメカニカルグリップがかなり改善しているように思います。難しいところで何とも言えないですけどね」
「トヨタは何か隠しているかもしれません。あくまで噂に過ぎませんが、トヨタはパワーを抑えているのではないかという話も聞きます。トヨタは毎回リザルトでは下位にいますが、そこまで遅いとは思えません」
このように平峰はホンダの強さを警戒すると共に、苦戦気味に見えるトヨタが爪を隠しているのではないかという見立てをしている。もちろんトヨタ陣営がこれを肯定することはないが、37号車Deloitte TOM’S GR Supraの大立健太エンジニアは、各メーカーがどこまでエンジン出力を出しているのか分からないというのは確かだと述べた。
「他メーカーのことは全く分かりません。今はトヨタが下位に沈んでいますが、では開幕戦もそのままかと言われたら、難しいところですよね」
「他メーカーがどこまで出力を出しているのかも分からないです。なので、とにかく自分たちとしてはクルマをしっかりと仕上げることに集中しています」
「次の富士テストで、もしかするとCNFに合わせ込んだ全く違うエンジンを入れてくるメーカーがあるかもしれません」
「特にトヨタなどは下位に沈んでいますが、実はもう原因は分かっているけど今はモノがないので耐えている、という可能性も拭いきれません。やっぱり開幕まで分からないですね」
やっぱり開幕するまで分からない……野尻のその言葉に尽きるわけだが、4月の開幕まで“情報戦”が終わることはないだろう。
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