Photo by Akihiko Kokubo
EQSは専用プラットフォームを採用したメルセデスの本気BEV。AMGモデルはシステム出力658psの4WD仕様。満充電で601km走り、0→100km/h加速は3.8秒でクリアする。速さも完成度も圧倒的である。
メルセデスにとっては正真正銘“本気のBEV”
際立つデザイン、“未来的”以外の何ものでもない
メルセデスは高級車の中心、“重いクルマ”を動かすことがとても上手い。名車570Kや600プルマンから、最新のマイバッハまで、とにかく大きく重い高級車こそがブランドの中心なのだから当然だ。重いクルマはメルセデスの伝統。AMGでもそれは変わらない。EQS53の車重は2670kgに達する。
車名の末尾はS。つまりSクラス相当(=フラッグシップ)だ。ラインアップはEQS450+に加えて、AMG初のフル電動モデル、EQS53・4マチック+が設定された。
フロア下にはなんと107.8kWhという大容量リチウムイオンバッテリーを搭載。AMGの53は前後に電動パワートレーン“eATS”を積み、システム出力658ps(484kW)を誇る。満充電での航続可能距離は、WLTVモードで601km。450の700kmには劣るものの、実用上は十分な走行レンジを確保している。
メルセデスが“ワンボウ”と呼ぶワンモーションデザインは優れた空力特性と個性を両立。ボディ形状は5ドアHB
室内スペースは余裕たっぷり。床下に107.8kWhバッテリーを搭載。一充電当たり航続距離は601km
メルセデスEQS53リアシート
パフォーマンスは鮮烈である。試乗時に全面ディスプレイ、MBUXハイパースクリーンに気を取られていたこともあり、アクセルペダルを不用意に踏み込んでしまった。450がBEVにしては大人しい制御だったので油断していたというのもある。まるで違う圧倒的な加速フィールに度肝を抜かれた。
驚きのスタイリングから新感覚のインテリア
そして精緻なパフォーマンス
乗り心地は450に比べるとはっきりと硬質。コンフォートモードでもしっかりしている。低重心が生むフラットライドフィールは印象的で、クルージング時の安心感はこのうえなし。それでいて自由に動かせる感覚がつねにある。フロントの駆動制御が心強く、そうそう簡単に姿勢を崩すようなことはなかった。ドライバーズカーとして、とても優秀なフルサイズBEVだ。さすがAMGである。
最大9度まで切れるリアアクスルのおかげで、小回りが利くことにも驚かされた。450よりも街中での使い勝手はよく、さらにあらゆる場面において安定感ある走りの実現に寄与している。
EQS53は、驚きのスタイリングから新感覚のインテリア、そして精緻なパフォーマンスまで高い完成度だった。久しぶりにメルセデスの“真剣”を味わうことができた。
(CAR and DRIVER編集部 報告/西川 淳 写真/小久保昭彦)
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