三菱デリカミニ T Premium 価格:CVT 223万8500円 Photo by Atsushi Harada
アウトドア派イメージをアピールするクロスオーバーSUVがデビューした。デリカD:5のイメージを継承したうえで、軽自動車にふさわしいファンなマスクを採用。はたして、オフロードの三菱らしいパフォーマンスを達成しているのだろうか。
もっと三菱らしいクルマを
訴求したらデリカに
三菱にはeKクロススペースというSUVスタイルの軽スーパーハイトワゴンがあったが、一部ではカスタム系という受け取られ方をしていたらしく、「意図したほど浸透しなかった」という。
そんな中で、もっと三菱らしいクルマを訴求していこうという思いの一環として、eKクロススペースも外観を中心にテコ入れを図ろうとしたときに、デリカの基本的なコンセプトとかぶる部分があったことから、車名にデリカを冠することとなった。そしてマイナーチェンジを機に改名し、ちょうどデリカが生誕55周年を迎えるタイミングで登場するはこびとなった。
発売までの予約受注において、4WD比率が約6割で、ターボの比率が7割という異例の高さを示した。上級グレードの「~プレミアム」は実に9割だ。それだけこのクルマにユーザーが期待するものの大きさがうかがいしれる。
三菱デリカミニ T Premiumリアビュー
ハイト系モデルがベースだけあって室内空間は広くて快適。着座位置が高いので視界は良好。 キャンプに行く際などに遭遇するラフロードも見切りがいいので安心安全に運転できる
汚れがつきにくく、通気性の良い撥水シート生地を採用。また、座面や背もたれ中央部に立体的なエンボス加工を施し、蒸れにくく座り心地の良いシートとしている
リアシートは320mmの前後スライド量を確保。また、片側ずつスライドや背もたれを倒すことができる
ラゲッジルームは4人乗車時でも十分な広さを確保しているが、後席は左右分割してスライド&シートバック格納ができるので、荷物に合わせて空間を自由にアレンジできる
デリカの末弟らしいタフでギア感のあるSUVスタイルは、このところ徐々に増えてきたSUVテイストの軽自動車の中でもひときわ異彩を放って見える。
とくに三菱独自の“ダイナミックシールド”による力強いフロントデザインは、小さいながらもインパクトは大きい。
eKクロススペースもそうだったが、小さな車体から想像するよりも車内に入るとその広さに驚く。
水平基調のインパネは精悍なブラックをベースにライトグレーのアクセントが配されていて、トレイやドリンクホルダーが見やすくレイアウトされているほか、見えるところも見えないところも車内のいたるところに収納スペースが設けられている。
座り心地と通気性にこだわったというシートには撥水性のある生地が用いられていて、試乗時にはちょうど雨に見舞われたのだが、水滴をハンカチでサッと拭き取ることができて不快な思いをせずにすんだ。小さな子どものいる家庭となればなおのこと重宝することに違いない。
荷室も同様に簡単に汚れをふき取れるようになっている。開口高が1080mmもあり、地上高が低めなのでかさばる荷物の積み下ろしもしやすい。リアシートは左右分割して320mmも前後スライドや前倒しができるので、乗せたい人と荷物に合わせて自在にアレンジできるのも助かる。
大径タイヤとサスペンションの改良で
路面からのアタリがマイルドになり快適性が向上
試乗した売れ筋グレード、最上級のTプレミアムは、eKクロススペースよりも外径の10mm大きいタイヤを履き、走りのほうも4WD車はデリカミニに相応しく足回りが専用にチューニングされている。ざっくりいうと、ショックアブソーバーの減衰力の縮み側を下げるとともに伸び側を強化したという。
ekシリーズ自体はNMKVにおいて日産主導で開発されたのだが、デリカミニの開発にあたっては三菱が主体となり、ときには日産サイドの関係者もまじえて大いにこだわって進めたという。
その成果は、走ってみるとすぐにわかる。まず砂利道にトライした。普通ならもっとガツガツと、いかにも砂利の上を走行している感覚がダイレクトに伝わってくるはずのところ、あまりそうならない。大径タイヤとの相乗効果で入力が上手く吸収されているようで、路面からの当たりがマイルドになって突き上げが少ない。轍でステアリングを取られることもない。よい意味で感度が低く、砂利道でも神経質になることがない。
伝統あるデリカが車名
期待を裏切らない
足回りの変更は、後席の乗り心地にも効いている。このプラットフォームを用いた一連の車種は、リアサスペンション形式が2WDはトーションビームのところ、3リンク式となる4WDはストロークがだいぶ短い。それが後席の乗り心地に顕著に表れていて、2WDはよいが、4WDは硬さが気になっていた。
デリカミニも傾向としてはそれを感じなくはないが、前述のタイヤの大径化や専用チューニングも効いて、段差や突起を乗り越えた際のガツンという衝撃がずいぶん抑えられていた。
パワートレーンに変更はなく、試乗車は車両重量が1トンを超えていた。これだけの車重がありながら、ターボのおかげで高速道路でもストレスを感じずに走れた。先進運転装備も軽自動車としては望外に充実しているのもこれまでどおりだ。
さらには、滑りやすい路面での発進性を高める制御が新たに追加されているとのことで、冬には相応しい場所でその機能を試せる機会もあるかと思うので、あらためてレポートしたい。
伝統あるデリカが車名についていることから興味を持った人も少なくないことだろうが、期待が裏切られることはない。
(CAR and DRIVER編集部 報告/岡本幸一郎 写真/原田 淳)
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