PHOTO:TOYOTA GAZOO Racing
限定モデルとしてスタートした
GRカローラ
GRカローラは12代目カローラ・シリーズのフラッグシップであるとともに、“GR”のオリジナルカー第4弾。当初は一般販売モデルとアナウンスされたが、生産体制を考慮してまずは限定モデルとしてスタートした。販売台数は通常モデルのRZが500台、スペシャル版のモリゾウエディションは50台(ともに抽選申し込みは終了)。2023年春スタートのデリバリーを前に千葉県の袖ヶ浦フォレストレースウェイで試乗した。魅力をレポートしよう。
エクステリアは専用ワイドボディの採用により精悍だ。全幅はノーマル+60mmの1850mm。明らかに“ただ者ではない”雰囲気がプラスされている。ただし後付け感の強いリアのフェンダー周囲は賛否が分かれるところだ。
インテリアはカローラ・スポーツをベースにメーターやステアリング、加飾などが専用品になる。シートはGRヤリスと共通。だが着座姿勢の違いかフィット感はより高く感じた。後席はカローラ・スポーツ同等のスペースで実用性は高い。
モリゾウエディションは“ユーザーを魅了する野性味”を追求したスペシャルバージョン。エンジンをトルクアップ(370Nm→400Nm)するととも にモノチューブダンパーを採用した足回り/ハイパフォーマンスタイヤを採用。車重もRZ比で30㎏軽量 化された。キャラクター的にはサーキット志向
インパネはカローラ・スポーツと共通形状。専用TFTメーターと小径スポーツステアリングが走りをアピール。トランスミッションは6速MT。現在8速DAT(ダイレクトオートマチック)を開発中といウワサもある
シートはGRヤリスと同形状のスポーツバケット。フィット感/サポート性ともに最高水準。サーキット走行でもしっかりと身体を支える。モリゾウエディションのステアリングはバックスキン仕上げ
GRカローラRZ/価格:6MT 525万円(限定500台/抽選予約終了)。RZは今後正式カタログモデルに発展する可能性が濃厚。開発にはスーパー耐久レースに参戦する“水素エンジン・カローラ”の知見を投入。徹底的に鍛え上げた
キャンビンは実用性の高い5シーター仕様。日常ユースにも対応
GRカローラRZ
スイートスポットが広い走り味!
速く、操る楽しさが味わえるAWDスポーツ
サーキット走行なので、VSCは“全OFF”でコースイン。GRヤリスの272psから304psに出力アップした1.6L直3DOHC12Vターボ(G16E-GTS型)はピーキーな特性になったと思いきや、印象は逆だった。最大トルクは370Nmで共通だが、ターボラグが抑えられたうえで実用域のトルクバンドが広がったような印象を受けた。2速か3速か悩むコーナーで、GRカローラは迷うことなく3速を選べる。それくらいの粘り強さだ。ゼロ発進からの加速力はGRヤリスとほぼ同等。高回転域の伸びはGRヤリスより頭打ち感があるので早めのシフトアップのほうが速く走れると感じた。
フットワークは素晴らしい。ステアリング系はスポーツモデルにしては軽めの操舵力。ベース車でも定評ある第3世代EPS制御を活かしたスムーズでつながりのいい操舵フィールと直結感の高さ、そしてステアリングシャフトがひと回り太くなったかのような芯の強さが味わえる。
車体の高い剛性はいわずもがなだが、ドイツ系のようなガチっとした印象とは違う。剛の中に柔(=しなやかさ)がある印象。ハンドリングはAWDらしからぬノーズの入りのよさとAWDらしいリアの安心感の絶妙なバランスが心地いい。ドライバーの操作次第でアンダーもオーバーも自由自在なコントロール性はGRヤリスと共通の美点だ。しかもGRカローラは、GRヤリス以上にクルマの動きが穏やかで挙動変化が予測しやすい。“スイートスポットが広く、多くのユーザーが安心して楽しめる”懐の深い走りに仕上がっている。
乗り心地はサーキットなので断定はできない。しかし凹凸がある路面を通過した際の視線のブレ具合や、縁石に乗り上げたときの入力の優しさ、スッキリとした足の動きなどから判断して、かなりよさそうである。
モリゾウエディションに乗り換える。こちらはサーキットに軸足を置いたモデルだ。パワートレーンはエンジンのトルクアップ(370→400Nm)に加えて、6速MTの1~3速のクロースレシオ化とファイナルのローギアード化を実施。フットワーク面は、剛性アップのために構造用接着剤追加(3.3m)とボディ補強ブレースを装着。専用セットの前後モノチューブダンパー、245/40R18サイズのミシュラン・パイロットスポーツ・カップ2を採用。リアシートレスの2シーター仕様である。
エンジンのトルクアップとギア比&ファイナル変更で、実用域はRZ以上にトルクフル。しかも回転が増すにつれてレッドゾーンまで一気に吹き上がる。ギア比のつながりもバッチリで、つねにパワーバンドをキープする。ただしシフト操作はRZより忙しい。iMTをフル活用したほうがシフトミスは少なそうだ。
GRカローラは
“最強のカローラ”と断言できる
ハンドリングは意のまま。RZにキレのよさと俊敏なクルマの動き、ダイレクトなフィーリングをプラスしている。車両重量はRZより30kg軽いだけだが、実際に走らせるとその差は数値以上。一般的にロードカーから無駄を削いでいくとピーキーな特性になりがちだが、モリゾウエディションはその逆。より精緻、より対話性が高く、より細かなコントロールが楽しめる。
おそらく、グリップを活かしてタイムを削る走り方が最も得意だろう。欲をいえば、大型ウイングなどでリアの安定性をもう少し高めたほうが安心感はより高まるかな、と感じた。
乗り心地はRZよりハードな設定だが、“しなやかな硬さ”といった印象。想像していたより快適だった。
GRカローラは“最強のカローラ”と断言できる。ちなみに1984年に初代カローラFXが登場した時のキャッチコピーは“2BOX上級生”だった。GRカローラはGRヤリスの兄貴分として、ズバリ“AWDスポーツ上級生”と呼べる存在である。
(CAR and DRIVER編集部 報告/山本シンヤ 写真/TOYOTA GAZOO Racing)
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