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アメリカで売れている日本の中古車トップ3は?「日本の中古品」の価値が世界で高まるワケ

アメリカで売れている日本の中古車トップ3は?「日本の中古品」の価値が世界で高まるワケ

Photo:PIXTA

コロナ禍以降、海外でトレンドとなっている「Used in Japan」。日本で使われていたモノが、海外市場で価値が上がっているのはなぜか? コンサルティングファームのマッキンゼー・アンド・カンパニーを経て、ペイパル日本のトップを務める筆者が、その理由を解説。米国市場における日本の中古車売り上げトップ3も紹介する。(ペイパル日本事業統括責任者 ピーター・ケネバン)

海外で日本の中古車が人気! その理由は?

 COVID-19が季節性インフルエンザと同じ扱いになってから、「Experience in Japan」(日本での体験)が大変に盛り上がっている。日本での生活が20年超になった私でも、日本の食事や買い物、文化や歴史、自然との触れ合いなどから日々新しい発見があるのだから、旅行で日本にやってくる人々には驚きの連続だろう。

 特に欧米の富裕層や教育水準の高い人たちほど、日本的なexperienceを求める傾向がある。背景には、円安効果でお得に感じていることはもちろんあるものの、日本の創造的な国民性などが支持されているようだ。

 このExperience in Japanの他に、もうひとつ最近海外で話題になっているのが、「Used in Japan」だ。モノを大事に扱うことや、きれい好きな国民性などから、日本で使われていたモノが、海外市場で価値が上がっている。私が日本事業のトップを務めるペイパルでも、Used in Japanの盛り上がりを実感する。

 具体例の一つとして、中古車の越境ECを行うビィ・フォアード(東京都港区)を紹介しよう。2004年の設立後、新興国向けに日本の中古車を輸出して急成長している企業だ(22年6月期の売上高は814億円、中古車輸出台数は13万3370台)。

 ビィ・フォアードの直近1年のエリア別販売台数では、アフリカ地域が約60%、カリブ海地域が約15%を占めている。また、同社は米国市場にも力を入れている。米国では今、日本のスポーツカーや軽自動車が人気だという。

 その理由を説明する前に、まずは簡単なクイズだ。ビィ・フォアードの米国市場における日本の中古車売り上げトップ3は、何の車種(メーカー、モデル)だろうか? 当ててみてほしい。

米国で評価されるUsed in Japanの中古車

 さて、前のページで出したクイズの答え合わせをしよう。ビィ・フォアードによると、1位が三菱自動車のパジェロミニ、2位がホンダのアクティ・トラック、3位がダイハツ工業のハイゼット トラックとのことだ(2023年6月末時点)。

アメリカで売れている日本の中古車トップ3は?「日本の中古品」の価値が世界で高まるワケ

日本の中古車や中古の自動車パーツを扱う、越境EC「ビィ・フォアード」のWebサイト

 私が生まれ育った米コロラド州の田舎町では、自動車が生活必需品。そして私の学生時代、日本車が一大ブームとなった。日本車は、燃費が良く、故障が少ない。私の父は倹約家だったこともあり、我が家ではクルマは絶対に中古車。そして何台も日本車を乗り継いでいた。だから今、米国で日本車が売れている、という事実にとても共感する。

 わが家がかつて購入していた日本車は、米国内で流通していた中古車だが、ビィ・フォアードが扱う日本車は、日本で製造・販売されていたものが含まれる。米国では、製造年から25年経過していないと海外で製造・販売されていた車を輸入販売できない法律がある。いわゆる「25年ルール」と呼ばれるもので、他市場からの輸入を阻む規制だ。

 日本の中古車には三大特徴がある。車検制度が厳しい、買い替えサイクルが速い、走行距離が少ない、だ。それに加えて、日本人はキレイに使っていただろう、大事にしていたに違いない、といったUsed in Japanイメージ、新たなブランド価値が加わり、人気になっている。だから、日本の中古車は25年以上経過していても市場価値が高い。

 欧米では、地球温暖化への問題意識や、廃棄物を減らそうという動きが日増しに強くなっている。その影響もあり、大量消費社会からの脱却、モノを長く大切に使うことに価値観がシフトしつつある。こうした世界的潮流の中、Used in Japan自体が新たな価値となり、評価されている。もちろん、消費者は品質や価格などにもシビアだが、「Made in ~」(どこで作ったか)ではなく、「誰が使ったか」が価値になるというのは、とても面白い現象だ。

 さらに言えば、二次市場、三次市場での評価は、一次市場での高評価に好循環する。その意味で、このUsed in Japanに力を入れることの波及効果は大きい。

 なお、ビィ・フォアードでは米国市場参入にあたり、ペイパルのBNPL(後払いの決済手段)サービスを導入した。これにより購入者は、総費用を分割して支払うことが可能になり、クルマのような高額商品でも、より手軽に購入することが可能となった。単価が高いものでも、安心してグローバルに取引できる決済手段が整いつつある。

 さて、ここで2問目のクイズだ。ペイパルのユーザーを対象にした調査において、世界の消費者が日本から購入している商品カテゴリーのトップ3は何だろうか? 当ててみてほしい。

日本に足りないのは「挑戦しよう」というマインド

 早速、答え合わせをしよう。ペイパルのユーザーを対象にした調査において、世界の消費者が日本から購入している商品カテゴリー(複数回答可)のトップ3は、1位「日本特有の商品(アニメ関連ほか)」、2位「エンタメ」、3位「電子機器」だった。自動車も8位にランクインしている。

アメリカで売れている日本の中古車トップ3は?「日本の中古品」の価値が世界で高まるワケ

提供:ペイパル

 日本の中古車は、「日本仕様」×「日本使用」の掛け算により、ブランド価値を進化・深化させている。そして、越境ECを行えば、あらゆるジャンルのモノを世界中に届けることが可能な時代だ。従来とは違った新しいビジネスチャンスが押し寄せている。

 特にコロナショックを経て、越境ECへのハードルは大きく下がっている。一昔前は、物流拠点の確保、通関手続きの煩雑さ、言語の壁、ECツール開発など、さまざまな課題があったが、それらのほぼ全てが課題解決に向かっている。

 残る大きな課題とされる海外市場マーケティングは、越境ECを支援する各種サービスを活用することで乗り越えられる。とにもかくにも、スタートすることが大事だ。始めてみれば、何が売れるか売れないかが一目瞭然(りょうぜん)。そこからトライアンドエラーを繰り返していけばいい。

 日本のビジネスパーソンに足りない点を挙げるとすれば、「挑戦しよう」というマインドだけだ。

 私はこれまで多くの経営者やアントレプレナーと付き合ってきたが、「自分がやりたいことは何が何でも突っ走る」といった感覚を持った優秀な人材は、もちろん日本にもたくさんいる。ただ、傾向として米国では「失敗しても次、その次、その次の次にうまくいけばいい」、といったマインドで失敗を恐れない。むしろ、そうした困難を楽しむ人も多い。

 一方、日本では失敗を嫌がる傾向がある。自らの失敗で周りに迷惑をかけたくない、といった意識が働く国民性なのだろう。冒頭でも述べた通り、日本には、世界の人々が喜んだり驚いたりする魅力がたくさんある。だから、日本企業による海外へのチャレンジが、もっとあってもいいはずだ。

 そうしたなかで、先端サービスやテクノロジーを活用して積極的に挑戦しているビィ・フォアードは、Made in Japan、Experience in Japan、Used in Japanという三つの「~ in Japan」が強みとなった日本ブランドの恩恵を、最大限に享受しているように見える。

 言ってみれば、彼らは、魚がいる海に最初に飛び込んだファーストペンギンだ。きっと今後も第二、第三のペンギンが次々と現れるに違いない。日本企業発の越境ECがますます盛り上がることを、私は楽しみにしている。

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