ヒョンデ・コナ・ラウンジ2トーン/価格:489万5000円 Photo by Koujirou Yokota
世界第3位の自動車メーカー、ヒョンデの日本再挑戦第2弾BEVはSUVスタイル。コナはリーズナブルな戦略価格と充実装備、そして最長625kmの航続距離が魅力。各部は日本最適仕様となっている。
アイオニック5に次ぐBEV第2弾
SUVスタイル、名称はハワイの地名に由来
グローバルでは現在、世界3位の大規模メーカーながら、ヒュンダイは日本での乗用車販売に苦戦。2001年の参入からわずか8年ほどで撤退した(アフターサービスとバスなどの大型車は継続)。
それから12年。グローバルでのブランド名称統一の動きに従い“ヒョンデ”に変更すると共に、乗用車事業に再参入したこのブランドからアイオニック5に次ぐBEV第2弾としてコナ(KONA)が発表された。コナはSUVスタイル。名称はハワイの地名に由来する。
ラインアップはカジュアル/ボヤージュ/ラウンジ/ラウンジ2トーンの4グレード。価格は399万3000円から489万5000円と、内容を考えるとリーズナブルで、CEV補助金は全車65万円となる。
インパネはすっきりとしたデザイン。12.3inのメーターとセンターモニターが連結したパノラマディスプレイ仕様。主要コントロールは物理スイッチで操作でき初めて乗ってもまごつかない
ラウンジは前席ベンチレーション機能付き本革シート標準。シートヒーターは全席に装備。後席フロアはフラット形状。室内は広く快適。室内色は黒とベージュを設定
ヒョンデ・コナ・ラウンジ2トーンリアシート
フロントのリッド付きスペースは充電ケーブルの収納に最適
荷室はアレンジ多彩な大容量。リアゲートは電動式
モーター/バッテリー容量は、カジュアルが99kW(135ps)/48.6kWh。上位3グレードは150kW(204ps)/64.8kWh。一充電当たりの航続距離はWLTCモードで456~625kmと余裕たっぷり。ちなみにボディサイズは4355×1825×1590mmと手ごろにまとめられている。
ヒョンデは、2度目の参入となる今回、オンライン販売のみという試みを行っている。それゆえ購入を希望しても実車とコンタクトできる機会が少ないのは事実。初めてアイオニック5(同4635×1890×1645mm)を目にする人からは「これほど大きいとは思わなかった」という声も聞かれるという。その点、コナが日本の環境にフレンドリーな存在であることは間違いない。
コナにはBEVだけではなく、バリエーション中に3気筒1Lもしくは4気筒1.6Lのターボ付きガソリンユニットを搭載する純エンジン車と、4気筒1.6Lユニットをシステムに組み込んだHEVバージョンが存在する。
ただし、日本での販売は「BEVもしくはFCV、ゼロエミッション車に限る」という新ポリシーを尊重し、エンジン搭載モデルを導入する予定はないという。つまり、ヒョンデの日本戦略は多くの台数を販売することだけが目的ではないようだ。輸入車を含め熾烈な販売競争が展開される日本で確実な評価を獲得するのが主要命題。それをグローバル市場での飛躍に繋げるという、いわば“リトマス試験紙的な市場”と割り切りっている。
日本に合わせた最適セッティングを採用
滑らかな走りと、優れた操作系が好印象を加速
見方によっては“試験販売”とも受け取られかねないが、日本仕様へのローカライズは完璧と思える水準だ。
ドライバーズシートに腰を降ろす。SUVらしくアイポイントがやや高めである一方で、床下にバッテリーを敷き詰めたBEVにありがちなヒール段差(フロアから着座点までの高低差)が不自然に小さい印象は皆無。これは、フロント部分を薄くしたバッテリーパック形状を採用したメリット。複数のパワーソースを用意するが、コナはBEV優先で開発を進めて来たという。
省スペース化と使い勝手のよさを両立したシフトセレクターでDレンジを選び、ノーマルモードで走り始める。日本専用チューニングの効果もあってかさまざまな環境下でアクセル操作に対する違和感は皆無。BEV特有の高い静粛性と滑らかな加速感が味わえた。ただし速度が高まるとロードノイズは目立ちぎみ。路面補修跡を低速で通過するシーンでは、タイヤ踏面がやや硬いような振動感が伝わってくる。試乗車は235/45R19サイズのタイヤを履くラウンジだったが、街乗りシーンの快適性を重視するならば215/60R17のカジュアルもしくはボヤージュがよさそうだ。
タイトなワインディングロードでアクセルペダルを深く踏み込む。グリップ力や走りの安定感に文句はない一方で、ステアリングフィールにやや粗さが目立ってくることに気がついた。具体的には、アクセルワークによって保舵力が微妙に変化をしたり、コーナーからの脱出時にトルクステアを感じたりした。必ずしもフィーリングが洗練されているとはいえない。
これはコナがBEV専用設計ではないことのデメリット。というのも、専用設計のアイオニック5の場合、2WD仕様の駆動輪は後輪。一方、全仕様が2WDとなるコナは、前輪が駆動輪。エンジン搭載モデルが存在するため、後輪駆動にしようとするとプロペラシャフトを通す必要から後席フラットフロアが成立しなくなる。同じ骨格を用いるBEVも前輪駆動とせざるを得ないわけだ。
BEVである以前に
侮れない実力
コナの賢いユーザーインターフェースにも感心した。トンネルに進入したりウォッシャー液を使用すると、空調は自動で内気循環に切り替わり、頻繁に操作する装備機能はきちんと物理スイッチが残されている。初見でも問題なく操作できる。
このあたり、操作性に優れているとはいえないタッチスイッチを過度に用いるクルマが増えた中で、「走りながら操作系を作り込んだ」ことを強く実感した。コナは、レンタカーとの親和性も高いだろう。
ヒョンデが、グローバル市場で高い評価を得ているのは、実はこうした、まじめな開発姿勢も関係をしているのではないか。BEVである以前に、侮れない実力を感じさせられた試乗だった。
(CAR and DRIVER編集部 報告/河村康彦 写真/横田康志朗)
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