トヨタ・ヤリスクロスGRスポーツ/価格:CVT 236万7000円(ハイブリッ ドは275万円) Photo by Hiroya Yamagami
GRスポーツは、メーカーだから可能なファインチューンドモデル。足回りとボディを強化し、内外装をスポーティに演出。ハイブリッドはモーターの過渡特性もリファインした。コンパクトで小粋、運転好きに最適のSUVが誕生した。
一歩踏み込んだGRスポーツ
駆動力がよりダイレクトに
人気のヤリスクロスにGRスポーツが追加された。GRスポーツとは、ワインディングロードや高速道路での“スポーティで楽しい走り”を重視したモデル。標準モデルよりはドライバー優先設計を徹底し、しかも快適性や実用性が基本的に損なわれていないのがGRスポーツの特徴といえる。
ランドクルーザーやコペンなど、従来のGRスポーツ各車はサスペンション系とボディの強化、そして内外装のドレスアップが中心メニューだった。
ラインアップはハイブリッドと純エンジンの2種。まずは1.5Lエンジン(120㎰/145Nm)のGRスポーツに試乗した。走りは適度に硬質な印象。確かにタウンスピード域では路面からゴツゴツした感触が伝わってくる。だが、そうしたショックは決して直接的なものではない。またショックが加わった後でボディにいやな微振動が残ることもない。この辺はセンタートンネル部に追加されたブレースとボディ後端に取り付けられたロアバックブレースの効果だろう。いずれにせよ、極端に不快な乗り心地ということはなく、“スポーティでソリッドな感触”の範囲に留まっていた。
この“ちょっと硬めな足回り”は、ワインディングロードで意外なほどの効果を発揮してくれた。コーナーに向けてステアリングを切り込むと、操舵したら操舵した分だけ確実に進路が変わる。しかもドライバーの想像を超えて鋭敏に反応するということもない。見事なリニアリティを実現していた。
GRスポ ーツはGグレードがベース。車高は標準車比10mm低い
GRスポーツは専用本革巻きステアリング/アルミ製ペダル/ガンメタ塗装センターコンソールを採用。パワーステ特性ハンドリング重視設定
シートはGRロゴ入りスポーツ形状。素材はエアヌバックと合成皮革のコンビ
トヨタ・ヤリスクロスGRスポーツリアシート
ラゲッジスペースはアレンジ自在。後席は3分割タイプ。荷室ボードは高さ調節ができる。電動リアゲートはop (7万7000円)
ハイブリッドの
ファルケンのスポーツタイヤ(FK510SUV)を標準装着しているだけあって、グリップレベルは上々。コーナリング中にステアリングを切り増しても正確に応答してくれる点が頼もしい。
一方、オリジナルそのままの1.5Lの3気筒ユニットは、決して力不足というイメージではないが、アクセル開度が20%ほどを超えると急激に振動と騒音が高まってしまうのが残念。端的にいうとノイジーで、積極的にアクセルペダルを踏み込もうという気持ちが削がれてしまう。
その点、1.5Lエンジン+モーターのハイブリッドはパワーで31%、トルクで21%ほど上回っているため、結果的にアクセル開度が小さくなり、騒音と振動のレベルが抑えられる点がうれしい。また、GRスポーツならではのレスポンス改善も実感できる。もちろんキビキビとしたパワートレーンと、ちょっと固められた足回りとの相性は良好である。
予算が許すのであれば、ハイブリッドのヤリスクロスGRスポーツがお勧めといえるだろう。
(CAR and DRIVER編集部 報告/大谷達也 写真/山上博也)
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