Photo by Akihiko Kokubo ティグアンの4WDモデルはパワフルな2Lターボ(190ps/320Nm)搭載。オールシーズン/全天候対応の逞しいオールラウンド性能と、上級SUVらしい入念な作り込みが魅力。ドイツ車らしくロングツーリングに出かけたくなる実力派である。 新登場の4WDは、 TSI・4モーションを名乗るガソリンモデル VWの上級SUV、ティグアンに4WDが復活した。ティグアンの4WD仕様は、2021年のマイナーチェンジで主力エンジンがディーゼルからガソリンに切り替わったことで一旦消滅。スポーツバージョンのRだけは4WDだったが、通常グレードはFFレイアウトに絞られた。だが、SUVはオールラウンド性能が魅力の源泉。通常ユースはFFでも十分とはいえ、積雪路や自然のふところで遊ぶシーンでは4WDのアドバンテージは明確である。ユーザーからもティグアン4WDの復活を望む声は強かった。 新登場の4WDは、TSI・4モーションを名乗るガソリンモデル。通常のFF仕様の1.5Lターボ(150ps/250Nm)に対し、2Lターボ(190ps/320Nm)を組み合わせる。車重がFF比で140~200kg増加したことに対する対応で、エンジンは最大トルクを1500~4100rpmの広い範囲で発揮するチューニング。トランスミッションは7速DCT。4WDシステムは、通常走行時はほぼFF、路面状況に応じて瞬時に後輪に駆動力を伝えるハルデックスタイプ。コンソール部には、ダイヤル式の走行モード切り替えを備える。 試乗車はスポーティグレードのRライン。電子制御ダンパーと20インチタイヤがセットになったDCCパッケージ(22万円)が装着されていた。 スポーティグレードのRラインはリアサイドスポイラーやサイドスカートをセットした専用エクステリア仕様 VWティグアンTSI・4モーション・Rライン/価格:7DCT 581万6000円。復活した4モーション=4WDはアクティブ(479万2000円)/アクティブ・アドバンス(518万8000円) /Rラインの3グレード構成。Rラインはナビ標準 室内空間は余裕たっぷり。写真の本革シートはセットop(31万9000円) ハイグレードなポジショニングを 走るほどに実感 走りは上質にして骨太。車重が1.7トンを超えるものの加速は力強く、的確なシフト設定と相まって、まさに走りは意のまま。SUVらしい高めの着座ポイントから周囲を見渡し、アップテンポのドライブを満喫した。静粛性は高水準。各種騒音が抑えられ、結果的に心地よいエンジン音が印象に残る設定は、ドライビングのリズムを作りやすい。 今回は、オンロードに限っての試乗だったが、その走りはオフロードを含めた長距離クルーズに連れ出したいと感じさせた。スケールの大きなキャラクターは、ドイツ車ならでは。陸続きの欧州で鍛え上げられた実力を改めて実感した。“コンチネンタル・ツーリング”という言葉がふと頭に浮かんだ。 感心したのは、上質な乗り味である。ファットな20インチタイヤにもかかわらず、快適性はハイレベルだった。これは電子制御ダンパーの効果だけでなく、堅牢なボディ、しっかりとした座り心地のシートなど、すべてをきちっと作り込んでいるからこそである。TロックやTクロスが誕生し、ティグアンは、いまやVW・SUVラインのトップモデル。そのハイグレードなポジショニングを、走るほどに実感した。 ...
Photo by Atsushi Harada 新型テスラを街で見かける機会が増えてきた。モデルYは、ずんぐりスタイルのSUV。ワールドワイドで支持を集めるBEVだ。デュアルモーターのパフォーマンスを体感した。 パフォーマンスの瞬発力はかなりのレベル 走りはすべてがダイレクトで俊敏 モデルYの日本仕様は、標準バッテリーを搭載しリアモーターで後輪を駆動するエントリーモデルの“RWD”と、ロングレンジのバッテリーを積み、デュアルモーターのAWDとした最上級の“パフォーマンス”の2タイプとなる。 一充電当たりのWLTCモード最大航続距離はそれぞれ507kmと595km、最高速度は217km/hと250km/h。0→100km/h加速は、RWDでも他メーカーBEVの高性能版とほぼ同等の6.9秒、パフォーマンスは3.7秒を誇る。このあたりは、いかにもテスラらしい。 パフォーマンスの瞬発力はかなりのレベルだった。走りはすべてがダイレクトで俊敏である。メーターも何もないインパネの中央に配された大画面タッチパネルディスプレイで、走りに関することから車両のさまざまな機能まで任意に設定できるようになっている。 テスラ・モデルYデュアルモーターAWDパフォーマンス/価格 758万1600円。モデルYはRWD(587万1600円)とAWDパフォーマンスの2グレード構成。室内は超シンプル。センターモニターで各種表示と操作を行う。独立したシステム起動スイッチはなく、ブレー キを踏み、コラムセレクターをDにセレクトすると走り出す クロスオーバーSUVとしての利便性はハイレベル “乗用車で世界最大級”のパノラマルーフも 走行モードを“最速”に設定したときの刺激度はインパクトたっぷり。AWDなので発進時の蹴り出しは強く、めっぽう速い。しかも音もなくスムーズ、2重ガラスの採用部位がかなり広範囲におよぶ効果で静粛性にも優れている。 足回りは、かなり引き締められている。重心高が高いSUVであっても運動性能を重視したためだ。操舵に対して応答遅れを感じない切れ味鋭い回頭性と正確なライントレース性は、その賜物に違いない。アクセルワークとステアリングワークの両面に対して、極めて高いダイレクト感があり、意のままの走りを実現している。ただし乗り心地はややコツコツとした硬さを感じた。 コンパクトクラスというものの、ボディサイズは意外と大きく、全幅は1.9mを超えていて、見た目にもなかなか存在感がある。海外では7人乗りの設定もあるほどだ。クロスオーバーSUVとしての利便性はハイレベル。外見からイメージするよりも室内空間は広々としている。そしてルーフの大半を1枚のガラスで覆った“乗用車で世界最大級”というパノラマルーフを装備している点もモデルYの特徴だ。空調は“生物兵器にも対応するレベル”の空気清浄機能付きのアイテムが搭載されている。 室内空間は広く快適。シートは座り心地に優れた薄型形状。後席は足が組めるほど余裕がある。ルーフは“世界最大級”のパノラマルーフ仕様。ガラスは遮音性の高い2重構造部分が多 く静粛性に貢献している ...
Photo by Akihiko Kokubo 速さ/ハンドリング/取り回し性に優れたオールマイティな存在。ポロGTIは、ファーストカーの機能と、ワインディングで“いい汗”がかけるスポーティな万能モデル。分別を備えた大人が似合う。 ポロにGTIが復活 2Lの直噴ターボ搭載 ポロのラインアップにGTIが復活した。 ポロに初代GTIが誕生したのは2000年5月。初代は全長が4mを大きく割り込み、全幅は1.7mを下回る文句なしの“5ナンバーサイズ”。車両重量は1.2トンそこそこだったから、まさしく“軽量・コンパクト”なスポーツハッチといえた。 兄貴分が積むちょっと大きめのエンジンを移植する、というのを常套手段にしていた当時のGTIの流儀に従い、初代GTIが搭載したエンジンは、最高出力が125psにすぎない自然吸気の1.6Lエンジン。それと比べるとまさに“隔世の感”なのが、22年余りの時を経てラインアップに加えられた、最新のポロGTIである。 ボディサイズは、全長×全幅×全高4085×1750×1430mm。現在の感覚でいえばコンパクトな部類に入るが、堂々の3ナンバー規格になる。エンジンは2Lの直噴ターボを積む。 最新GTIは最高出力を従来比7psアップ。2L直噴ターボは207ps/320Nmを誇る。パフォーマンスは鮮烈。0→100km/h加速は6.5秒でクリア VWポロGTI/価格:7DCT 411万3000円。インテリアはレッドトリムが印象的。ステアリングの反応はシャープ。写真のディスカバリープロ・ナビはop(15万4000円) 前席は専用スポーツ形状。GTI伝統の赤いタータンチェック仕上げ ちなみにポロGTIは、その2代目(2005年)から心臓部にターボチャージャーをプラスしたユニットを搭載。“ゴルフGTIの弟分”というキャラクターを明確にしていた。 最高出力は 初代の2倍以上という強大さ 2Lに排気量が拡大された最新モデルの最高出力は、今回のマイナーチェンジで207psにアップ。最大トルクは従来型同値だが、それでもターボチャージングを得て320Nmを発揮する。もはや初代の2倍以上という強大さである。 加速力は圧巻だ。4気筒ユニットらしく乾いたサウンドとともにスピードを一気に高める。圧倒的な加速力が得られるのはターボブーストがフルに立ち上がったゾーンに限られるものの、その領域に至らなくても動力性能は十分。 ...
Photo by Akihiko Kokubo EQSは専用プラットフォームを採用したメルセデスの本気BEV。AMGモデルはシステム出力658psの4WD仕様。満充電で601km走り、0→100km/h加速は3.8秒でクリアする。速さも完成度も圧倒的である。 メルセデスにとっては正真正銘“本気のBEV” 際立つデザイン、“未来的”以外の何ものでもない メルセデスは高級車の中心、“重いクルマ”を動かすことがとても上手い。名車570Kや600プルマンから、最新のマイバッハまで、とにかく大きく重い高級車こそがブランドの中心なのだから当然だ。重いクルマはメルセデスの伝統。AMGでもそれは変わらない。EQS53の車重は2670kgに達する。 それにしてもEQSのデザインは際立っている。これまでのSUV系EQシリーズは既存の内燃機関車からエンジンを取り去って電気モーターとバッテリーを積んでいた。言ってみれば派生モデルに過ぎなかった。だがEQSは違う。メルセデスにとっては正真正銘“本気のBEV”、電動車専用設計のプラットフォームが使われている。メルセデスが“ワンボウ”と呼ぶワンモーションシルエットは、高級車らしく見えるかどうかは別にして、“未来的”以外の何ものでもない。 車名の末尾はS。つまりSクラス相当(=フラッグシップ)だ。ラインアップはEQS450+に加えて、AMG初のフル電動モデル、EQS53・4マチック+が設定された。 フロア下にはなんと107.8kWhという大容量リチウムイオンバッテリーを搭載。AMGの53は前後に電動パワートレーン“eATS”を積み、システム出力658ps(484kW)を誇る。満充電での航続可能距離は、WLTVモードで601km。450の700kmには劣るものの、実用上は十分な走行レンジを確保している。 メルセデスが“ワンボウ”と呼ぶワンモーションデザインは優れた空力特性と個性を両立。ボディ形状は5ドアHB メルセデスAMG53・4マチック+/価格 2372万円。AMG53は左右12.7インチ/ 中央17.7インチの大型モニターを一体化したMBUXハイパースクリーン標準。機能/デ ザインとも先進度満点 室内スペースは余裕たっぷり。床下に107.8kWhバッテリーを搭載。一充電当たり航続距離は601km メルセデスEQS53リアシート パフォーマンスは鮮烈である。試乗時に全面ディスプレイ、MBUXハイパースクリーンに気を取られていたこともあり、アクセルペダルを不用意に踏み込んでしまった。450がBEVにしては大人しい制御だったので油断していたというのもある。まるで違う圧倒的な加速フィールに度肝を抜かれた。 といっても、“加速ダッシュ命”のモデルとは違う。出力コントロールはきめ細やかで、しかも前後パワー配分も精密。つまり、恐怖心はない。眼前に広がる“新しい景色”を楽しみながらスピードの伸びを味わっていられる。 ...
Photo by Akihiko Kokubo VWの“R”はハイパフォーマンスを示す特別な称号。ゴルフRは、従来比10ps/20Nmパワフルな2Lターボ(320ps/420Nm)搭載。圧倒的な速さとフットワークが魅力のホット4WDだ。 “真打ち”ゴルフRは 2L直噴ターボ4WD搭載 VWのスポーツモデルには2本の柱がある。ひとつはGTI。ベースモデルが備える高い実用性を少しも損なうことなく、カジュアルでスポーティな感覚をアドオンしたシリーズだ。もうひとつはR。ベースモデルに対して遥かに高額な価格になるが、走りのパフォーマンス向上のために妥協のない姿勢で取り組んだモデルである。 試乗車はRの中でも“真打ち”というべきキャラクターを持つゴルフR。現行8代目をベースとしたRは、欧州では2020年末に発表されていた。それから2年近くの時間を要してようやく日本でも発売されることになった。新型は従来モデル比で10ps/20Nmパワーアップした2L直噴ターボ(320ps/420Nm)を搭載。駆動方式は4WD。“Rパフォーマンスベクタリング”と“ビークルダイナミクスマネージャー”を採用して、従来以上に最適なトルク配分とニュートラルなハンドリング性能を追求した。 ラインアップは2種類ある。従来型と同様に、ハッチバックとヴァリアント(ワゴン)の双方に設定される。乗り比べると両車の乗り味は微妙に異なることに気がついた。 カタログ上で60kgという重量差がもたらす動力性能の違いは無視できるレベル。というより、“現実には実感するのが困難”という程度にすぎない。ところが、フットワークの違いはとくに高速クルージングになると、意外なほどに明確になる。落ち着いてフラット感の高い乗り味を示すのはヴァリアント。前述したように重量差の影響もあるが、ゴルフ史上で初めて2つのボディで異なるホイールベースを採用し、ヴァリアントのほうがハッチバック比で50mm長い。これが乗り味に関係している可能性が高い。 フォルクスワーゲン・ゴルフRリアビュー VWゴルフR/価格:7DCT 639万8000円。室内は本革スポーツステアリングと大型パドルが印象的。各部の作りは上質 前席は純スポーツ形状。素材はファブリックとマイクロフリースのコンビ。乗り味はスポーツフィール満点 一方、両ボディで差は感じられないと報告した動力性能は、ともに刺激的。フルアクセルを与えたシーンでは、ターボチャージングが施されているとはいっても、とても2Lの心臓から発せられているとは思えないほど強烈なパワーが体感できる。シビック・タイプRと同等の320psという最高出力と、420Nmの最大トルクを4WDシステムが無理なく路面へ伝達する。 それでも、ピーク時にはステアリング反力が微妙に弱まるのを感じるほどだ。パフォーマンスは、まさにRを名乗るにふさわしい。 史上最強であると同時に 最も辛口の仕上げ 試乗車は、大径の19インチタイヤと電子制御式可変減衰力ダンパーかセットになったDCCパッケージが装着されていた。コンフォート・モードを選択しておけば、路面凹凸への当たりこそ硬めであるものの、サスペンションの動きは滑らか。日常ユースを快適にこなせる。 ...
新型「インプレッサ」FWDで筆者が走行する様子 写真提供:SUBARU AWD(四輪駆動)乗用車を世に広めたスバル――。その走りはSGP(スバルグローバルプラットフォーム)を採用した先代「インプレッサ」から一気に深みを増した。最新の6代目インプレッサの出来栄えをサーキットでチェックした。 動的質感の進化をじっくり体感 インプレッサとクロストレックを比較 「全然違うな」 新旧のスバル「インプレッサ」をサーキットで乗り比べて、スバルがいう「動的質感」の進化に改めて驚いた。 動的質感はスバルによる造語で、人が感じるクルマの挙動の質を高めるという設計思想だ。 スバルは2023年4月20日、6代目「インプレッサ」日本仕様を発表した。これに関連してスバルは、袖ヶ浦フォレストレースウェイ(千葉県袖ケ浦市)で「インプレッサ」(試乗時は発売前のためプロトタイプ)の報道陣向け試乗会を行った。 合わせて、「インプレッサ」と基本構造が共通のクロスオーバー「クロストレック」の公道試乗も用意されていた。 サーキット、高速道路、一般道路で、最新型スバル車を比較する良き機会となった。 あえて危険回避想定の走行をしたら クルマの素性が分かった まず、新型「インプレッサ(プロトタイプ)」から話を始めたい。 試乗は、新型FWD(前輪駆動車)、旧型AWD、そして新型AWDの順で、全車がe-BOXER(水平対向2.0リッターハイブリッド)搭載車だ。 走行のスタイルについて、スバル側から「通常のサーキットでのタイムアタックのような走り方ではなく、高速道路や一般公道での走行も十分に考慮してほしい」というアドバイスがあるものの、具体的にどのようなスタイルで走るかは試乗者の裁量任せだった。 新型「インプレッサ」の車内 Photo by Kenji ...
Photo by Yasushi Ohnishi スタイリッシュ&スポーティに大変身。“ハイブリッド・リボーン”をコンセプトに掲げ、目指したのはユーザーから愛される“いいクルマ”。エモーショナルなデザインと虜にさせる走りに注力した、期待が高まる新時代の5thモデル、颯爽とデビュー!! ひと目惚れする“デザイン”と 虜にさせる“走り” 1997年にエンジンとモーターを協調して駆動する世界初の量産ハイブリッドカーとして登場したプリウス。「21世紀に間に合いました」のキャッチコピーが記憶に残っている人も多いだろう。あれから25年、ハイブリッドという言葉は一般ユーザーにも深く浸透。車種もコンパクトカー、セダン、SUV、ミニバン、そして商用車までトヨタのほぼすべての車系にラインアップされ、累計販売は2000万台(2022年末)を超える。 そんな中、最新作となる5代目が登場した。開発コンセプトは「Hybrid Reborn」だが、その本質は“燃費がいいではなく、クルマとしていい”を目指した。歴代モデルを振り返ると、つねに“圧倒的な燃費”が注目されたが、新型は燃費がいいのは当たり前、それとは異なる個性のプラスだ。開発陣が盛り込んだ個性とは、ひと目惚れする“デザイン”と虜にさせる“走り”の2つ。このキーワードは歴代モデルも無視はしていないが、最後は燃費のために犠牲になっていたのも事実だろう。開発陣は自らの呪縛を解いたのだ。 “4ドアクーペ”と呼びたくなる スタイリッシュなフォルムデザインから説明していこう。エクステリアは2代目から続くワンモーションフォルムを継承するが、ワイド&ローのプロポーションやルーフ頂点を後方に下げたことに加えて、低いボンネット、スポーツカーのように寝かされたフロントウィンドウ、線ではなく面で抑揚を与えたグラマラスなサイド、薄型一文字ライトのリアなど、“4ドアクーペ”と呼びたくなるスタイリッシュなフォルムに仕上がっている。 新型プリウス・プロトタイプ。2Lエンジン搭載グレード。ワンモーションフォルムを継承しながらスポーティなデザインに仕上げた。写真のボディーカラー、シルバーメタリックはXグレード専用設定 4ドアクーペといえる流麗なシルエット採用。プレスラインを排したグラマラスな面構成と大径タ イヤで安定感をアピール。2Lモデルはスポーティなエンジン音を積極的に聞かせる設定 タイヤは1.8Lが195/60R17+ホイールカバー、2.0Lモデルが195/50R19+アルミホイールと旧型から2インチアップ。これは見た目とステアリング切れ角、そして転がり抵抗を考慮した設定だそうだ。フェンダーとの隙間やホイール・インセットもかなり攻めている。 インテリアはトヨタ車共通の水平基調のコクピットデザインをベースにプリウス用に最適化した。メーターはプリウス伝統のセンターメーターから通常タイプに変更、bZ4Xで初採用のバイザーレス式を水平展開。シンプルな表示で視認性も高いが、ポジションによってステアリングがメーターの一部を隠してしまうのは要改善……。 コックピットは圧迫感がなく広々。7インチのトップマウントメーターはステアリングの上から見るため視線移動が少ない。内装色は3種で写真は赤のアクセントが特徴のマチュアレッド インパネシフトは廃止して、シフトレバーはセンターコンソール上に移動された。シフト回りは新型クラウンと共通部品を使っている。センターコンソール周辺は、限りあるスペースの中にさまざまなアイテムを装着するが、新型は機能的なのにスマートなデザイン。このあたりは新型クラウンをはじめとする他のトヨタ車も見習ってほしい。 ...
BMW・M3コンペティション Photo by Akihiko Kokubo 最新M3コンペティションは 3L直6DOHC24Vツインターボを搭載 4→6→6→8→6→6。この数字が何を示すのか、BMWファンであればすぐにお気づきだろう。そう、歴代M3に積まれたエンジンのシリンダー数である。 E30型をベースとした初代M3(1985年)は2.3Lの自然吸気4気筒エンジンを搭載してデビュー。F1でも活躍したM10と呼ばれる鋳鉄製ブロックを土台とするこのパワーユニットは6750rpmの高回転域で200psを生み出した。また初代は、グループAレーシングカーのホモロゲーションモデルという役割も担っており、軽量化にも配慮されていた。車重はほぼ1200kg。4気筒エンジンだったから可能なライトウェイトといえる。 その後のM3は車重の増加に伴い、2代目のM36型(93年)ではストレート6に換装。4代目M3のE90型(2007年)ではついにV8が搭載された。しかし5代目F80型(2013年)はターボ化されてストレート6に復帰。この流れは、最新の6代目G80型(2021年)にも受け継がれている。ちなみに最新M3コンペティションは3L直6DOHC24Vツインターボを搭載。パワースペックは510ps/650Nmを誇る。 世代ごとにさまざまな特徴を備えたM3だが、とりわけ現行型はエポックモデルだ。FRとともにはM3として初となる4WDが設定されたこともそのひとつ。だが、個人的に注目しているのは足回りの味付けが大きく変わった点である。 BMW・M3コンペティション/価格:8SAT 1351万円 現行G80型はFRとともにM3史上初の4WDを設定。スタイリングはM4共通マスクとマッシブなフェンダー処理で凄みを演出 インパネは3シリーズと共通。Mスポーツステアリングはしっかりとした操舵フィールを約束。先進安全運転支援機能も充実 2962cc直6DOHC24Vツインターボは絶品。圧倒的なパフォーマンスと緻密なフィールが魅力 シートは本革。前席はサポート性に優れたバケット形状。乗り心地は引き締まった印象 M3はBMWのこだわりと情熱がぎっしり詰まった 最高のドライバーズカー 先代M3の足回りは全般的に突っ張るような傾向が見られた。うねった路面ではグリップレベルが断続的に変化し、ステアリングが左右にとられる印象があった。ところが新型は、まったく異なる。凸凹路面に対してもタイヤがしなやかに追従。グリップレベルが大幅に安定したうえに、ステアリングがとられる挙動はほぼなくなった。さらに先代はブレーキを残したままコーナーに進入するトレーリングブレーキを使うと、ブレーキをリリースした際に挙動が不安定になる傾向が散見された。新型ではこの弱点も解消。おかげで、コーナーの進入から出口まで、ステアリングの舵角を一定に保ったままクリアできるシーンが格段に増えた。 ...
SUBARUレヴォーグSTIスポーツEX Photo by Akihiko Kokubo スバルの心意気 新型レヴォーグは“国内専用モデル”として誕生 トヨタ、ホンダ、日産の3メーカーが世界中で生産した乗用車のうち、日本で販売されるのはわずか15%ほど。日本が“地元”であっても、ビジネス面で見れば決して重要な拠点とはいえない。日本市場にマッチしているとは思えないグローバルモデルを国内で販売するのは、こうした背景が関係している。 それはSUBARU(スバル)にとっても同じこと。いや、米国市場を販売上の明確な主軸に据えている彼らは、“日本市場に向けたクルマ作り”の優先度がさらに低くなるのは致し方ない。ちなみに、スバルの国内販売比率は前出の3メーカーよりさらに低く、14%弱となっている(2021年のデータ)。 ところが、新型レヴォーグは“国内専用モデル”として誕生した。それは、米国主体のレガシィが大きくなりすぎた“埋め合わせ”という側面もあったけれど、それにしても、たった14%にも満たない国内市場(2021年の国内年間販売台数は10万台強)のために専用モデルを作り上げたのだ。スバルの心意気をまずは称賛したい。 SUBARUレヴォーグSTIスポーツEX/価格:8CVT 409万2000円。レヴォーグはスバル伝統のスポーツワゴンの美点を継承。日本市場を主眼に開発された。現行2代目は2021年10月に登場。ドライバーを多角的にサポートするアイサイトXを搭載する インパネはスポーティな立体造形。EXはナビ機能を搭載した大型センターディスプレイ標準 上級版のSTIスポーツはボルドーレッド&ブラックの本革シート標準。室内はゆったり感覚 荷室スペースは後席使用時492L。サブトランクも広い 多くのパーツを新開発した点も注目に値する。たとえば、レヴォーグにはスバルグローバルプラットフォームをベースとしつつ、フルインナーフレーム構造を初採用。これはボディ全体の骨格構造を連続的な形状とすることで高剛性化と軽量化を実現する技術。構造用接着剤と組み合わせた結果、正確なハンドリングの実現とともに振動や騒音の低減に役立つという。 高度運転支援システムのアイサイトXを搭載したのも、レヴォーグが最初だった。位置情報の検出には、日本独自の衛星測位システム“みちびき”を活用。ここでも日本市場を重視する姿勢を鮮明にしたのである。 滑らかな乗り味 レヴォーグの進化を味わえる 1.8Lボクサーターボ(177ps/300Nm)を搭載したレヴォーグSTIスポーツに乗ると、静粛性の高さと乗り心地の快適性がまず印象に残る。いずれもフルインナーフレーム構造が貢献しているのは間違いない。とりわけ印象的なのが乗り心地のよさだ。この点ではダンパーのスムーズなストローク感が大きく役立っているはず。デビュー当初に“ネコ足”で有名なフランス車と比較試乗した経験があるが、足回りのしなやかさではレヴォーグが断然勝っていた。これは日本車の歴史を考えると、常識を覆すような出来事だった。 ...
メルセデスAMG・SL43 Photo by Akihiko Kokubo メルセデス・ベンツのSLクラスは、世界を代表するラグジュアリースポーツである。1954年に登場した初代の300SLガルウィングという名車を持ち出すまでもなく、歴代SLはつねにクルマ好きの憧れであり続けてきた。 押しも押されもしないメルセデスのフラッグシップスポーツ。そんなSLの立ち位置が変わり始めたのは2000年代の半ば、先々代モデルのビッグマイナーチェンジ以降だった。ちょうどそのころAMGが悲願のオリジナルモデル、SLSを完成させた。SLSは専用開発のアルミシャシーにガルウィングドアを持つ、いわば300SLの再来。まさにその時、SLクラスは最高峰のスポーツモデルという地位から陥落してしまったのだ。 SLSの生産終了以降もAMGからGTという上級スポーツカーが登場したため、SLはラインアップの2番手にとどまった。もちろんAMG・GTとはキャラクターがまるで異なっていたが、SLそのものが目立たなくなってしまったことは事実だった。 メルセデスAMG・SL43/価格:9SAT 1648万円。7代目はメルセデスAMG独自開発モデル。2+2レイアウトのソフトトップオープンに大変身。日本仕様は2L直4ターボを搭載した43モデルのみ。欧州ではV8を積む63/55を設定 新型は軽量&高剛性なスペースフレーム構造のアルミ複合シャシーを採用。日本仕様は電子制御LSD/ダイナミックエンジンマウント/RACEドライビングモードをセットしたダイナミック+パッケージ標準。走りはスポーティ コクピットは機能的な造形。ドライバー正面に12.3インチ/中央に11.9インチディスプレイをレイアウト。センターディスプレイはオープン時の見やすさを考慮して12~32度の範囲で角度調節できる シートはナッパレザー仕様。前席はスポーツ 形状。後席は荷物スペースに最適。前席にはヘッドレストから温風が吹き出すエアスカーフをビルトイン。乗車定員は4名 メルセデスAMG・SL43リアシート 1991cc直4DOHC16Vターボ(381ps/480Nm)+モーター(10kW/58Nm)の48VマイルドHV。電動ターボ採用 十分なトランクスペースはソフトトップの利点。容量はオープン時213L/クローズド時240L 第7世代となった新型SLはもはやメルセデス・ベンツのSLですらない。他の乗用車ラインアップとの共通点も少ない。メルセデスAMGによる独自開発モデルとなったからだ。そしてなんと2+2の4シーターモデルとなり、ソフトトップオープンへと先祖帰りも果たした。要するにSLは全面刷新を遂げたのである。新型は、AMGブランドの一員となっただけでなく、乗用車ラインナップの2番手として、従来以上に広範囲のユーザーを狙ってモデルチェンジしたように感じられる。 ちなみにSLは歴代すべてが純2シーターと思われがちだが、2代目の“パゴダ”には3シーター仕様があったし、3代目のR107にはクローズドルーフの4シーターモデル、SLCが設定されていた。さらには4代目のR129にも欧州仕様に+2モデルが用意されたことがある。 新型は高効率2L直4ターボを搭載 ...
PHOTO:TOYOTA GAZOO Racing 限定モデルとしてスタートした GRカローラ GRカローラは12代目カローラ・シリーズのフラッグシップであるとともに、“GR”のオリジナルカー第4弾。当初は一般販売モデルとアナウンスされたが、生産体制を考慮してまずは限定モデルとしてスタートした。販売台数は通常モデルのRZが500台、スペシャル版のモリゾウエディションは50台(ともに抽選申し込みは終了)。2023年春スタートのデリバリーを前に千葉県の袖ヶ浦フォレストレースウェイで試乗した。魅力をレポートしよう。 エクステリアは専用ワイドボディの採用により精悍だ。全幅はノーマル+60mmの1850mm。明らかに“ただ者ではない”雰囲気がプラスされている。ただし後付け感の強いリアのフェンダー周囲は賛否が分かれるところだ。 インテリアはカローラ・スポーツをベースにメーターやステアリング、加飾などが専用品になる。シートはGRヤリスと共通。だが着座姿勢の違いかフィット感はより高く感じた。後席はカローラ・スポーツ同等のスペースで実用性は高い。 トヨタGRカローラ・モリゾウエディション/価格:6MT 715万円(限定70台/抽選予約終了)。GRカローラは“モータースポーツを起点にした、いいクルマづくり”の結実。開発には豊田章男社長自らも積極的に参画した モリゾウエディションは“ユーザーを魅了する野性味”を追求したスペシャルバージョン。エンジンをトルクアップ(370Nm→400Nm)するととも にモノチューブダンパーを採用した足回り/ハイパフォーマンスタイヤを採用。車重もRZ比で30㎏軽量 化された。キャラクター的にはサーキット志向 インパネはカローラ・スポーツと共通形状。専用TFTメーターと小径スポーツステアリングが走りをアピール。トランスミッションは6速MT。現在8速DAT(ダイレクトオートマチック)を開発中といウワサもある シートはGRヤリスと同形状のスポーツバケット。フィット感/サポート性ともに最高水準。サーキット走行でもしっかりと身体を支える。モリゾウエディションのステアリングはバックスキン仕上げ GRカローラRZ/価格:6MT 525万円(限定500台/抽選予約終了)。RZは今後正式カタログモデルに発展する可能性が濃厚。開発にはスーパー耐久レースに参戦する“水素エンジン・カローラ”の知見を投入。徹底的に鍛え上げた キャンビンは実用性の高い5シーター仕様。日常ユースにも対応 GRカローラRZ スイートスポットが広い走り味! ...
写真はイメージ(PIXTA) NIKKEIリスキリング読者の皆さん、こんにちは。45歳からの実践型キャリアスクール「ライフシフトラボ」の都築辰弥と申します。 本連載「40代からのリスキリング道場」は、40代・50代ビジネスパーソンに向けた、脱・学びっぱなしのためのリスキリング実践マニュアルです。 初回の「40代以降は今のスキルを磨け 学んで終わりからの卒業」では、とかく40代・50代のリスキリングは「学んで終わり」になりがちであること、そうならないためには、新しいスキルを学ぶより、まずは今持っているスキルに注目しアップデートすること、そしてスキルを生かす場として副業などの「他流試合」を行うことの重要性をお伝えしました。 2回目の今回から数回にわけて、自分のスキルを生かせる他流試合の場として、40代・50代が複業を始める方法を順序立てて扱います。今月も「やってみよう!」のコーナーで具体的なトレーニングメニューを用意しています。先月の「やってみよう!」に取り組んでいただけた方は、その内容を使いますのでご準備ください。では、始めましょう! ■副業ならぬ “複業” とは? 2017年、厚生労働省の働き方改革実行計画で「副業・兼業は第2の人生の準備として有効」と言及されて以降、副業を単なるお小遣い稼ぎではなく、人生後半のキャリア形成手段のひとつとして捉える見方が定着した感があります。 「今の会社でこのままキャリアを終えるのは物足りない。とはいえ家族もいるし、転職や起業はリスクが高すぎる……」そんなミドルシニア世代特有の事情から、本業で得られない働きがいや新たな挑戦機会を得る手段として、複業が注目されているのです。 複業を始める環境も整ってきています。新型コロナの感染拡大をきっかけとするリモートワークの定着により、複業の敷居はますます低くなりました。従業員の複業を容認する企業は増え続けており、セカンドキャリア支援施策として中高年社員に複業を積極的に促す企業も現れているほどです。 すでにお気づきかもしれませんが、私は「副業」と「複業」という表現を区別して用いています。一口に副業といっても、フードデリバリーの配達員からポイントをためるポイ活、不動産投資、ブログ運営、ECサイトでのせどり、スタートアップ企業へのプロジェクト参画までさまざまです。本記事では、「本業の収入を補うサブの仕事」ではなく「本業以外にも “複数” の仕事を同時に持つ」というコンセプトのもと「キャリア形成手段としての副業」を指す言葉として「複業」を使っています。 ■複業のメリット さて、ここでもう少し細かく、40代・50代ビジネスパーソンにとっての複業のメリットを整理します。私が経営するライフシフトラボでは、以下3つのメリットを特に強調しています。 定年後のセカンドキャリアに備えられる 豊かな老後を過ごすためには80歳まで働き続ける必要があるとも言われる人生100年時代、自分のペースで年金にプラスして10万円を稼ぎ出すことができれば、真の悠々自適につながります。生涯現役として社会との接点を持ち続けることは、金銭報酬以上の生きがいにもなるでしょう。 今は選択できない思い切った挑戦ができる 複業による副収入があることは経済的メリットはもちろんのこと、新たな挑戦の原動力にもなるのです。たとえば複業で一定の収入があれば、その分年収を落としてでも、現職よりも働きがいのあるベンチャー企業の幹部ポジションに転職することが現実的になるかもしれません。複業というカードが手札に加わることで、今まで切れなかったカードを切れるようになるというわけです。 ...
ポルシェ・ケイマンGTS4.0 Photo by Akihiko Kokubo 6気筒の水平対向エンジンを積む スペシャルグレード 脱炭素化に向けて、欧州メーカーは“電動化一択”という姿勢を明確にしている。それはポルシェも例外ではない。ブランドの“魂”たる911シリーズにできるだけ長い期間エンジンを与え続けるために、他モデルの電動化を積極的に推進している。ブランド全体の燃費を向上させることで、ポルシェのアイデンティティを守る戦略を展開中だ。 現在のポルシェ最量販モデルとなったマカンは、次期モデルではPPEと呼ぶ新電動プラットフォームを採用。ピュアEVに大変身する。そのデビューまでは、秒読み段階にある。さらにミッドシップモデルのケイマン/ボクスター・シリーズも、“次期型はピュアEVになる”と宣言済みだ。“次はない”といわれると、気になってしまうのが人情。現行ケイマン/ボクスター、中でも自然吸気式の大排気量6気筒エンジンという、時代に逆行するかのような心臓を搭載する“GTS4.0”が大いに魅力的に映る。 GTS4.0は、ターボチャージャーを付加する一方で排気量ダウンと4気筒へのレスシリンダー化が図られたことで姿を消していた6気筒の水平対向エンジンを積むスペシャルグレード。 そのフラット6は「911カレラ系に搭載されるユニットを自然吸気化したうえで、排気量を4Lに拡大した」と紹介できる内容である。 スペックは400ps/7000rpm、420Nm/5000~6500rpm。420Nmの最大トルク値はターボ付き2.5L4気筒のSグレードと奇しくも同一だが、発生回転数がはるかに高いという点に、このユニットの性格をうかがい知ることが出来る。 ポルシェ・ケイマンGTS4.0/価格:6MT 1152万円/7DCT 1207万2000円 GTS4.0はモータースポーツ部門が開発した自然吸気の4Lフラット6(400ps)を搭載。 トップスピードはMT仕様が293km/h/DCT仕様は288km/h。すべてに官能的なドライブフィールでドライバーを魅了する。普段使いからサーキットまで対応するオールラウンダー 室内は機能的。ステアリングは360mm径のアルカンターラ巻き。ギア比は15.02~12.25のバリアブルレシオ。適度に重い操舵フィールは絶品。ハンドリングはシャープ。写真はGTSインテリアパッケージ仕様(49万4000円) シートはサポート性に優れたスポーツ形状。 リクライニングは電動/前後スライドは手動式 ...
ホンダZR-V・e:HEV・Z(FWD)/価格:389万9500円 フロントマスクは個性的な造形。グリルは縦桟形状。HR-Vを名乗る北米仕様とは別デザイン。ライトはアクティブコーナリングライト付きフルLED Photo by Akihiko Kokubo ZR-VはCR-Vの弟分でヴェゼルの兄貴。追い求めたのは行動の自由。思い立ったときに遊びに出かけられ、運転そのものが楽しいSUV、マルチユースのドライバーズカーを指向している。 CR-V、ヴェゼルに続くSUV第3弾 若くてアクティブな層をターゲット ホンダZR-Vは、CR-V、ヴェゼルに続くSUV第3弾、群雄ひしめく市場に投入される意欲作だ。ボディサイズは全長×全幅×全高4570×1840×1620mm。比較してみると、CR-V(同4605×1855×1690mm)よりやや小さいけれど、2台に明確な違いがあるとはいえない。パワートレーンも同様。ZR-Vのハイブリッド(e:HEV)は1世代新しいものの、2Lハイブリッドと1.5Lターボと変わらない。価格だって似たり寄ったりだ。 なぜ、ホンダはひとつのセグメントに新たなSUVを投入したのだろうか?開発責任者、小野修一氏は次のように答えてくれた。「CR-Vは比較的、年齢が高い層に向けたモデルであるのに対し、ZR-Vはもう少し若くてアクティブな層をターゲットにしました」 つまり、CR-VとZR-Vは価格やサイズの上下関係として見るべきではなく、対象となる顧客層が異なるというのだ。 ボディサイズはマツダCX-5と同等。視覚的には小柄に見える印象 ホンダZR-V・e:HEV・Zインパネ Zグレードはサポート性と座り心地に優れた本革シート。前席は電動調節&ヒーター機能付き。後席にはダイブダウン機構を内蔵。シートカラーはブラックとマルーンを設定 ホンダZR-V・e:HEV・Zリアシート ラゲッジスペースは使い勝手に優れた空間。9.5インチゴルフバッグが横積みできMTBも2台積載できる ホンダZR-V・e:HEV・Z荷室 ZR-V・X(FWD)/価格:CVT 294万9100円。ZR-Vのパワーユニットはe:HEVと1.5L直噴ターボ(178ps/240Nm)の2種。1.5Lターボのパフォーマンスは十分。WLTCモード燃費は14.6kn/L(X)。Xはグレーカラーの18インチアルミ装着。装備は充実しておりフルLEDライト/パワーテールゲート/左右独立温度調節式オートAC/静電タッチ式LEDルームランプ標準 ...
就任8年目の片山正則社長は、これまで提携戦略を巧みに使い分ける“したたかな”戦略でいすゞの経営体制を盤石にしてきた Photo:JIJI いすゞが旗艦車をフルモデルチェンジ 満を持してEVを投入 久しぶりの新車発表の大イベントだった。自動車業界は従来、新車発表イベントには力を入れてホテルやイベント会場で華やかに開催するのが常だったが、コロナ禍に見舞われたここ3年でその新車発表会は大きく変化した。つまり、ホテルやイベント会場を借り切った発表会ではなく、リモート発表会のようなケースが多くなったのだ。 久々に大型の新車発表会を行ったのは、商用車メーカーのいすゞ自動車だった。いすゞは7日、パシフィコ横浜で「いすゞワールドプレミア2023」と銘打って、新小型トラック「エルフ」と新中型トラック「フォワード」を発表した。 いすゞは会見で、この大変革期における生き残りを懸けて、いすゞとしての新企業理念とともに、カーボンニュートラル実現への積極施策を進めることを前面に打ち出した。 その象徴が「満を持してのエルフのBEV(バッテリーEV)の発表」(片山正則社長)だった。いすゞのエルフは「小型トラックの代名詞」とも言われるほど小型トラック市場をリードしている。いすゞの「ドル箱」的存在だ。 今回、エルフは17年ぶり、フォワードは16年ぶりのフルモデルチェンジとなる。いすゞの新企業メッセージである「選べる自由、それが『運ぶ』の未来」のコンセプトの下、開発を進めた。 新型エルフは、「デザイン・ホスピタリティ・エコノミー・セーフティ・コネクテッド・ラインナップ」の六つのポイントを中心に進化したほか、いすゞとして初の量産型のエルフEVを市場投入した。また、新型フォワードは、中型トラック分野において、高度化・複雑化する物流業界の課題に対応するため、内外装の全面刷新に加え、各種快適装備・安全支援機能の大幅拡充を行い、23年夏頃の発売開始を予定している。 注目を集めたのがエルフEVだ。 いすゞの片山社長は「エルフEVは、3年間のモニター実走を経て今回の発売に至った」と、力の入れようを明かす。また、今回のBEVトラックの市場導入に合わせ、カーボンニュートラル実現に向けたトータルソリューションプログラムである「EVision」サービスも開始した。 一方で、「社会インフラであるトラックの脱炭素化には、世界各地のエネルギー事情や社会インフラ、資源問題などの課題があり(BEVなどに)収れんするには時間がかかる。BEVの性能・コストも含めて、FCEVやCNG(天然ガス自動車)、ディーゼルにも対応していく必要がある」と、多様なパワートレインの選択肢を用意することの重要性を示した。 いすゞの片山社長は2015年6月に就任し、まもなく8年が経過するが、この間、積極的なアライアンス(提携)路線を進めてきた。まずは、20年にスウェーデンのボルボグループと戦略提携を締結、さらに19年には米エンジン大手のカミンズと包括的パートナーシップを締結した。また、20年にホンダと燃料電池を用いたFCVの大型商用車の共同研究で提携。21年には、一度資本提携を解消(06年~18年)していたトヨタ自動車と、資本・業務提携を復活した。 ボルボとの提携に基づき、いすゞはUDトラックスを傘下に収め(21年)完全子会社化した。トヨタとの資本提携後には、トヨタが主導して設立したCASE対応のための商用車連合CJPTに加わっている。 このように、片山いすゞ体制は多様なアライアンスパートナーの活用という、したたかな経営戦略を進めてきたと言える。かつては「自動車御三家」に数えられた名門いすゞだが、長期にわたり資本提携をしてきた米GMが経営破綻したことで、同社との提携を解消してからここ数年、商用車メーカーとして生き残るために積極施策を打ち出してきたのが特徴的だ。 その中で、いすゞにとって“追い風”となったのが、ライバルでありながら企業としての設立が同根で、バス事業で連携(ジェイ・バス)している日野自動車が、排ガス・燃費不正で国内出荷停止という事態に陥ったことだ。 いすゞは昨年、国内普通トラック市場で首位に立った。また、業績面でも好調であり、22年4~12月期に売上高と全ての利益項目で過去最高を更新、売上高・営業利益ともに前年同期を3割以上上回った。特にタイのピックアップトラックの販売は4割増を示している。一方の日野が今通期550億円の赤字見通しで4~12月期で特別損失284億円を計上する厳しい状況なのと対照的だ。 片山社長は日野に触れて「日野さんは大変だろうが、いすゞとしてはこの大変革期に生き残りを懸けて、いすゞグループとして新企業理念の下でしっかりやっていく」と語った。 トヨタのトップ交代発表に続き、スバルも中村知美社長から6月に大崎篤次期社長への交代が発表されるなど、自動車業界でトップ交代が相次ぐ。いすゞとしても、多様なアライアンスで強固な“いすゞグループ”を形成しつつある中で、8年が経過する片山いすゞ体制は総仕上げの段階に差し掛かったといえよう。 ...
ジープ・コマンダーリミテッド 価格:9SAT 597万円 Photo by Akihiko Kokubo 新型は便利で経済的なアメリカンSUV。7シーターのユーティリティと燃費に優れた直4ディーゼルを組み合わせ。サイズはミディアムクラス。本革シートをはじめ装備も充実している。 チェロキーの後継モデル 日本で使うのに最適な7シーター・ジープ 気持ちのいいクルマに乗った。ジープの最新モデル、コマンダーである。ひと昔前までコマンダーは大型ボディとV8エンジンを組み合わせたフラッグシップというキャラクターだった。憧れの対象ではあったものの、日本で乗り回すには、相応の覚悟を必要とした。 だが、新型はミディアムサイズに大変身。堂々としたアピアランスと、7シーターパッケージングをそのままに、ぐっとフレンドリーになっている。ボディサイズは全長×全幅×全高4770×1860×1730mm。エンジンはジープ初の環境と燃費性能に優れた2L直4ディーゼル(170ps/350Nm)。全長は同じ3列シートSUVのマツダCX-8(4925mm)と比較して155mmも短く、エンジン排気量も小ぶり。まさに日本で使うのに最適な7シーター・ジープといえる。新型は、実質的には昨年末に生産を終了したチェロキーの後継モデルとなる。 ジープらしくオフロードの備えは万全。走行状態に応じて自動的に駆動力を最適制御するテレインセレクトを標準装備。ボディサイズは日本でも持て余さない設定 室内は快適装備が充実。ナビ機能内蔵の10.1インチセンターディスプレイは見やすい 乗り心地はゆったり快適志向。シートは本革仕様の大型サイズ。前席はヒーター標準。3列目もしっかりとした作りだが、足もと空間はミニマム。室内色はブラウンとブラックを設定 ジープ・コマンダーリミテッドシート ジープ・コマンダーリミテッドリアシート スタイリングは、フラッグシップのグランドチェロキーと同様の印象。ハンサムで端正、素直にカッコいいと感じる。伝統の7スロットグリルと十分なグランドクリアランスがジープならではの逞しさを演出し、各部のクリーンなデザイン処理でモダンな印象にまとめた。 ライバル車にはない 独自の味わいは大きな魅力 ...
BYD・ATTO 3 価格:440万円~ Photo by Akihiko Kokubo BYDは今年上半期に64万台の電動車を販売。テスラを抜いて世界トップのBEVセールスを記録した中国ブランド。日本でも2023年1月から発売された。主力車の実力を探った。 日本市場に3モデルのBEVを導入 その中核となるATTO 3 バッテリーメーカーとしてスタートした中国のBYDは、2003年に自動車業界に参入。いまや世界を席巻するまでに急成長した。日本ではあまり知られていないが、2022年1月~6月のBEVとPHEVの合計販売台数は世界一、という規模を誇る。 BYDは2022年7月に日本市場に3モデルのBEVを導入することを発表した。その中核となるATTO 3(アットスリー)は、2月に中国で発売されたばかりのミドルサイズSUVだ。 対面するとスタイリッシュな容姿が印象的。インテリアもユニークなデザインと色使いが印象深い。曲面構成のインパネ中央には、縦向きか横向きかを任意に選べる大画面タブレット状ディスプレイを装備。そこに必要な諸機能が集約されている。 スタイリングは伸びやかな印象。元アウディのデザイナーが担当したという。全長×全幅×全高4455×1875×1615 mmのボディサイズは日本でも使いやすい インテリアの造形はラウンディッシュ。センターディスプレイは横向き/縦向きが選択できる。室内は機能的なだけでなくカラーリングも含めお洒落な印象 シートは合成皮革仕様。クッションに十分な厚味があり快適性は高水準 ラゲッジ容量は後席使用時で440L。実用的な広さを確保する ...
ダイハツ・タントファンクロス 価格:CVT 180万9500円(FF) Photo by Akihiko Kokubo タントの新個性“ファンクロス”は、アクティブな気持ちになるフリースタイルKカー。アウトドア志向の内外装と大開口ドアが光る。気軽にドライブに連れ出したくなるキャラクターだ。 タントの新たな個性“ファンクロス” アウトドアテイストを高めたアクティブモデル Kスーパーハイトワゴンの先駆であり定番であるダイハツ・タントに、新たな個性“ファンクロス”が登場した。ファンクロスは、アウトドアテイストを高めたアクティブモデル。外観は、専用フロントグリルと前後バンパー、ルーフレールで力強い印象を強調。内装は撥水加工シートやラゲッジルームランプ/USBソケットで利便性を高めた。 試乗車はターボのFFモデルだ。スタイリングは“適度にワイルド”。遊びグルマらしいイメージを発散する。魅力は圧倒的な開放感。タントの個性であるミラクルオープンドアを開口すると、室内とフィールドがシームレスにつながる。タントは、“便利なファミリーユースワゴン”の印象が強いが、ファンクロスは“自由空間ワゴン”と呼ぶのがピッタリ。ドライブ先でドアを開ければ、そこはパーソナルスペースになる。広々とした後席に座ってのコーヒーブレイクは、なかなか楽しそうだ。 ファンクロスは専用デザインのマスクと前後バンパーで力強いイメージを演出。バンパー下部にはシルバーのプロテクター風ガーニッシュを装着する ファンクロスの室内はクロスオーバー SUVのタフトと同様にオレンジのアクセント入り。撥水加工済みシートは汚れが目立 ちにくい迷彩柄。メーターは見やすいデジタル液晶式。速度を大きく表示 後席は左右独立のスライドとリクライニング機構付き。出かけた先でくつろぐ際にも最適な快適性 後席は荷室側からスライド位置とシートバックが操作できる設計。ラゲッジボードの工夫でフラット空間が生まれる。 とはいえ、ファンクロスのメカニズムは標準タントと共通。最低地上高は150mm(FF)。アウトドア志向とはいえ、本格的なフィールドに出かけるのは適さない。トレッキング感覚で、いつもの公園や、ちょっとしたお出かけを楽しく演出するキャラクターと考えておいたほうが無難だろう。ターボの走りは、静かでスムーズ、そしてなかなか速い。64ps/100Nmのパワー/トルクを発揮する直3ターボは、ボクシーなボディをキビキビと走らせる。ベルト+ギア駆動のD-CVTの採用で、加速時にラバーバンド感が少ないのも大きなメリットだ。 個性が光る ...
メルセデス・ベンツ「EQS 450+」 Photo by Kenji Momota 2022~23年は、日系自動車メーカーはもとより、輸入車メーカーからもさまざまな新型EVが登場してきた。新車価格はかなり高めのEVが多いが、輸入車メーカーEVを乗り比べるとどんなふうに感じるのか、注目の5モデル(テスラ、BYD、メルセデス・ベンツ、アウディ、フォルクスワーゲン)に一気に乗ってみた感想を述べたいと思う。(ジャーナリスト 桃田健史) テスラ「モデル3」「モデルY」は、乗り心地が改善 日系各社のEVモデルとは違うEVらしさを表現 毎年恒例、日本自動車輸入組合(JAIA)が主催する、輸入車ブランド合同でのメディア向け試乗会が大磯ロングビーチ(神奈川県大磯市)を起点に開催された。 筆者はジャーナリスト個人として参加し、1日で試乗可能な最大5枠で、メルセデス・ベンツ「EQS 450+」、BYD「ATTO 3」、アウディ「Q4 e-tron S line」、フォルクスワーゲン「ID.4」、そしてテスラ「モデルY」という欧米中の最新EVモデルを選択した。 EVについてのユーザーの関心事は、「満充電での航続距離」や「急速充電で何%まで充電できるのか?」といったことだ。後者の関心は、一般的には30分間が一区切りで、次に充電を待っている人がいたら場所を譲らなければならないルールがあるために生じる。 今回は、1枠当たりの走行時間が70~80分間と比較的短いため、試乗中に充電は行わず、5台それぞれで市街地、山間部、有料道路の同じルートを巡り、走り味を軸足として各ブランドにおけるEVの「世界観」を比較することを念頭に置いた試乗とした。 次ページ以降では、各EVの感想を紹介していこう。 メルセデス・ベンツ「EQS ...
レクサスIS500Fスポーツパフォーマンス 価格:8SAT 850万円 ISに大排気量V8モデルが新登場。500Fスポーツパフォーマンスは珠玉の5L自然吸気(481ps/535Nm)を搭載。キャラクターはストリート志向。上質なアスリートセダンだ。 注目のパワートレーンは 5L・V8自然吸気と8速SPDS レクサスISに500Fスポーツパフォーマンスが追加された。ひと足早くアメリカ・サンタバーバラで北米仕様に試乗した。 エクステリアはV8搭載に伴い全長が50mm伸ばされ、併せてエンジンフードを変更。リアは4本出しマフラーが高性能を主張する。タイヤは19インチでエンケイ製アルミを装着する。インテリアはステアリングやドアスカッフプレート、メーターなど細部が専用仕様になる。 注目のパワートレーンはRC・Fと共通。481ps/535Nmを誇る5L・V8自然吸気(2GRGSE)と8速SPDS(スポーツダイレクトシフト)と呼ばれるATの組み合わせだ。 IS500Fスポーツパフォーマンスをアメリカ・サンタバーバラで試乗。スペックは基本的に日本仕様と共通。リアは4本出しマフラーが印象的 Fスポーツパフォーマンス専用8インチTFTメーターを装備。安全装備はレクサス・セーフティシステム+を搭載。ナビはGリンク対応。ディスプレイは10.3インチワイドタイプ(タッチ式) シートは特別仕様車Fスポーツ・モデル・ブラックIII専用ウルトラスエード(ブラック)/Lテックススポーツシート 5L・V8DOHC32V(481ps/535Nm)。パワーもサウンドも刺激的な名品。味わい最高 8速SPDSがいい仕事 ハイレベルな走りが楽しめる 走りは最高に気持ちいい。実用域では穏やかな特性。トルクで走る感覚は、最近のダウンサイジングターボとは明確に違う。ひとたびアクセルを踏むと性格は豹変。レスポンスの鋭さ、回転が上がるにつれて炸裂するパワー感がドライバーを圧倒する。この直感的な心地よさは、いまとなっては貴重だ。8速SPDSもいい仕事をする。ノーマルモードでは滑らかだが、スポーツ/スポーツ+を選ぶとDSG並みのシフトスピードを実現。変速を直感的に感じる制御に化ける。 シャシー系も専用バージョンだ。パフォーマンスダンパーをフロントに加えてリアにも追加。専用のEPS制御とサスペンションを組み込んだ。その完成度は超一級品だ。 ハンドリングは、フロントに大きく重いエンジンを搭載しているとは信じられないほど上手に調教している。軽快で前後バランスが整った一体感の高い動き、良好なトラクションによって、ハイレベルな走りが楽しめた。まさにアンバランスをバランスさせた味付けといえるだろう。乗り心地は、わずかに引き締められているが、路面状況によっては標準車以上に快適に感じたほどである。 通常モデルも用意 詳細を要チェック ...