BMW・XM Photo:BMW
XMはMオリジナルの純スポーツSUVである。周囲に鮮烈な印象を与える造形とシステム合計653ps/800Nmを誇るハイパワーPHEVシステムが話題。メイン市場は北米と中国。走りは印象的である。
BMW・Mとして久しぶりとなった
専用デザインモデル
このところのBMWデザインは常軌を逸している。そんな見方をするマニアは多い。キドニーグリルは大きくなる一方で、ヘッドライトはサイボーグのようだ。けれどもそれは、マーケットを考えると必然だとわかる。
XMはEVとして約90km走るPHEV。足回りは電子制御ダンパーとアクティブロールスタビライザーを備えたアダプティブMサスペンション・プロフェッショナル標準。
BMW・XM/価格:8SAT 2130万円。インパネは12.3インチのメーターパネルと14.9インチのセンターディスプレイを組み合わせたラグジュアリー仕様。ステアリングはM専用デザイン。エンジンスタートボタンはレッドカラー
M1以来のM専用モデルが
どうしてSUVなのか?
アメリカ市場と中国市場の嗜好は、実はよく似ている。世界で最も大きなマーケットの好みが“いかつい、ぎらついた顔”なのだ。最近のBMWデザインは、しっかり“売る”ための必然だったと知る。M社の幹部によると、XMの主要マーケットはアメリカと中国で、この2つで目標販売台数の半数を占める。続くのは中東や韓国だ。
とはいえM1以来のM専用モデルがどうしてSUVなの?と思う。ライバルのように高性能スポーツカーを見たかった。幹部は「SUVがセダンに代わって普通の乗用車になったから」と実にそっけない。皆がセダンに乗る中でクーペやスポーツカーに憧れた1970~80年代とは事情が異なるというのだ。それに限定車ながらM3CSLを出したではないかとも……。
もっともXMは、最初からM専用モデルだったわけではない。当初はX7ベースのSUVクーペ、要するにX8として企画された。だが大型高級SUV市場におけるクーペニーズを考えたとき、M専用として特別感を出したほうが太く長く売れると判断した。それゆえ、PHEVのみのモノグレード展開で、日本でもワンプライス設定である。
操縦感覚はまさにスポーツカー
赤いボタンをプッシュすると爆音とともにV8エンジンが目を覚ました。走り出すとそのあまりにハードな乗り心地に驚いた。試乗車には22インチのタイヤ&ホイールが装着されていたのだが、実はタイヤのチョイスも含めて試乗車は最もスポーティな仕様だった。そのため街中での乗り心地はかなり硬質。救いはスポーツタイプのシートが優秀だったこと。なにしろ強めの突き上げをしょっちゅう食らったのに4時間ものドライブに耐えることができたのだ。ちなみに標準の23インチ仕様を試した同業者は、「乗り心地がいい」といっていた!
空いたところを見計らって、Mのロードカー史上最強のパワートレーンを解放する。XMの心臓部は489ps/650NmのV8ツインターボ+197ps/280Nmの電気モーター。システム総合で653ps/800Nmを発する。
右足を思い切り踏み込むと、V8が盛大な唸りを上げた。サウンドは豪快で、回転フィールは砂浜をかき回すように心地よい。そしてもちろん、すさまじくパワフル。巨体がそのまま飛んでいきそうな恐怖感さえ覚える。
70km/hを超えたあたりで硬質な乗り心地から解放された。心地よいフラットライドになる。ワインディングロードも難なくこなす。その操縦感覚はまさにスポーツカー、実にMらしい。
(CAR and DRIVER編集部 報告/西川 淳 写真/BMW)
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