トヨタ・プリウスZ・PHEV 価格:THS 460万円 Photo by Hiroya Yamagami
新型プリウスはPHEVが本命か!?新型は圧倒的にパワフルで、パフォーマンスはスポーティそのもの。モーター走行距離は87~105kmまで拡大。内外装はHEVとほぼ共通だが、中身は別、実に魅力的である。
プリウスPHEVを公道でチェックした。従来型はHEVと内外装をわかりやすく差別化していた。対して新型はほぼ共通。その代わりというわけではないだろうが、走りで、はっきりと個性を主張する。
最新PHEVは、2Lエンジンとモーターの組み合わせ。HEV比で約5割増の高出力モーターと、従来型PHEVより約5割増の大容量バッテリーを搭載した。キャラクターは“プリウスのハイパフォーマンスモデル”である。
満充電時EV走行距離は大幅に延長。従来型は約60kmだったところ、新型は19インチ車で87km、17インチ車では実に105kmまで伸びた。メーカーはPHEVを「現実的なBEV」と説明するが、確かにこれだけの航続距離があれば、日常使用はEVとして機能する。実際、EVモードを選択すると、エンジンがかかることなく延々と走り、アクセルを踏み込んでもよほどでないと高い車速域までEV状態を維持する。しかも、モーターだけの走行でもけっこう速い。
PHEVはプリウスの“ハイパフォーマンスモデル”という性格。走りはもちろん、環境性能でもHEVを凌ぐ
インパネはBEVのbZ4Xに似たシンプルな先進デザイン。各部ソフトパッド仕上げ。トヨタ初のイルミネーション通知システムを採用する。アクセルペダルは操作性に優れたオルガン形状
PHEVは質感にこだわった合成皮革シート標準。運転席は8ウェイ電動調節タイプ。写真の内装色は黒をベースにレッドをアクセントに使ったマチュアレッド。大胆なスタイリングながら室内スペースは広く実用的。前後席ともにゆったりと座れる
荷室容量は後席使用時で345L。HEV比で65L狭いが実用上は十分なレベル。後席を倒すとフラットな空間が広がる
ボディタイプは5ドアHB。リアゲートは電動開閉タイプ。開口部が大きく使いやすい設計。ボディカラーは全6色
絶対的なパフォーマンスはスポーティカーレベル。アクセルを踏み込んだときの加速フィールは爽快で気持ちいい。さすがは0→100km/h加速が6.7秒と、7秒を切っているだけのことはある。従来型のPHEVが11秒を超えていたのとは大違いだ。HEVも2Lになりなかなかだと感じていたが、0.8秒も速い(2WD比)のだ。その差は明確である。
ただし、初期の加速はHEVの2WDもけっこう鋭い。さらには、バッテリーの力を前後のモーターに配分するHEVの4WDはもっと速いと感じる。PHEVの本領は動き出しではなく、加速の伸びやかさ。アクセルの踏み込みにリニアに応え、力強く、どこまでもスピードが上昇する感覚がある。
ブレーキも好印象だ。従来の蓄圧タイプからリニアにブレーキ油圧を増圧できるオンデマンド加圧タイプに変更した効果で、自然なフィーリングになっている。それは新旧を乗り比べると明白だ。おかげでアクセルとブレーキのペダル操作感が統一され、違和感なく踏み替えることができる。
PHEVは回生ブレーキの強さが3段階から選べるのがHEVとの違いだが、設定変更にはセンターディスプレイで操作する必要がある。せっかくの機能なのだから、簡単に変更できるほうがいい。
速さだけでなくフットワークもスポーティ
新型は“ドライビングの歓び”を実感する
HEVでも感心したフットワークには、磨きがかかっていた。操縦安定性の高さは特筆レベル。車重の重いPHEVでも好印象はそのままだ。より高い剛性を得た第2世代のTNGAプラットフォームとサスペンション、エアロダイナミクスの最適化をはじめ、駆動用バッテリー搭載位置を従来のトランク下からリアシート下に移動したことなどの相乗効果に違いない。
正確なライントレース性を実現したハンドリングにもあらためて感心した。切る側だけでなく戻す側もイメージしたとおりきれいに動く。無駄な挙動が出にくく、修正舵を要するシーンは少ない。加えて電動パワーステアリングのチューニングが巧い。イナーシャやフリクションを感じず、操舵力は重くなく軽すぎずない。切り始めからリニアに動き気持ちいい。
居住性は及第点。後席で新旧PHEVを乗り比べてみたところ、車高の低い新型は、さすがにヒール段差がだいぶ小さくなるものの、ヘッドクリアランスは同等だった。前席下への足入れ性もさほど問題ない。シートもクッション厚みが適度に確保され、しばらく座っていてもお尻が痛くなることはない。いろいろ配慮されている。
PHEVのラゲッジスペース床面はHEVよりも少し高くなっている。だが、これだけスペースがあれば実用上は問題ないだろう。リアシートを前倒しするとPHEVはフロアと段差なくつながる。外部給電機能が、標準装備されている点もうれしい。
新型は“速さと洗練”という
わかりやすい魅力を身につけた
インフォテインメント系も多彩な機能を満載している。そういえば、従来型の特徴のひとつだった縦長のディスプレイは踏襲されていない。眼前のメーターパネルはちょうどステアリングホイールと重なる。これは少々気になった。
プリウスPHEVは新型で第3世代。これまでは、せっかく設定があってもHEVで十分と感じた人が多数派だった。だが新型は最新PHEVらしく、“速さと洗練”というわかりやすい魅力を身につけた。時代も変化しPHEVに関心を持つ人は増えている。価格差は大きいものの、クルマ自体が“愛車”として魅力的に進化したからこそ、新型はPHEVの販売比率が高まりそうな気がする。今まで輸入車に乗っていた人にとっても魅力的な存在である。
(CAR and DRIVER編集部 報告/岡本幸一郎 写真/山上博也)
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